2024年9月27日金曜日

人類の教科書?

 

それにしても翔平さんは凄いの一言である。もはや賛辞も出尽くした感がある。いわゆる5050の達成の仕方も常軌を逸していた。プレッシャーという言葉も彼にとっては一種の栄養剤みたいな効果を発揮するみたいだ。

 



国民栄誉賞の話もまたぞろ出てきた。かつて「まだ早いので」で辞退した経緯があるものの政府としても放って置くわけにはいかないのだろう。政治利用だとの批判もあるが、そんなことを超越した実績と存在だから、今となっては政府も「お願いだからもらってくださいませ」といった感覚だと思う。

 

アメリカ有数の部数と影響力を持つワシントンポスト紙は翔平さんを賛辞するコラムでノーベル平和賞にまで言及したそうだ。成績だけでなく、試合中でも誰にでも挨拶してゴミまで拾う人間性が全米規模で浸透してきた証だ。

 

野球界、スポーツ界を超越した存在になりつつあるのは確かだ。人種差別が根強いアメリカで誰もが翔平さんを称えている現実は、彼が日本人のイメージだけでなくアジア人全体のイメージを大きく変えた。これって凄いことだと思う。

 

風刺画に描かれる日本人といえば、ごく最近までメガネに出っ歯で首からカメラをぶら下げている情けない姿が定番だった。何十年も染み付いたそんなイメージを翔平さんが一人で塗り替えたといっても大げさではない。

 

個人的に野球を好きになって半世紀近くが経った。リアルタイムで翔平さんの傑物ぶりを見られることはこの上なく幸せだ。早死にしちゃってたら今の異次元の活躍は見られなかったわけだから、本気で「生きていてよかった」と思う。

 

私が小学生の頃、数年に一度来日して観光気分で親善試合をこなすメジャリーガーのパワーとスピードに日米のレベルの違いを痛感させられたことを今も思い出す。別次元に思えたほどだった。

 

いまその世界で疑いようもなくNo.1の選手になった翔平さん。こんな日が来るとは想像もできなかった。かつて野茂投手が海をわたって風穴を開けて以来、日本人のピッチャーは結構通用することを知った。

 

しかし、野手に関してはイチローの傑出ぶりはあったものの、パワーの点では小粒なイメージは拭えず、あの松井秀喜でさえ中距離打者に路線変更せざるを得なかった。

 

その点、大谷選手は渡米後も進化を続け、マウンドに立てばメジャーのトップ級の速い球を投げ、打席では比類なき長距離弾をかっとばす。おまけにあの盗塁の稼ぎっぷりである。

 



「ダメな漫画家が描くストーリー」とさえ言われるほどありえない活躍を平然とやってのける。多くの人がいまや「大谷慣れ」に陥っているが、冷静になって見れば見るほどあの活躍ぶりは異常だ。歴史的傑物だということは論を待たないし、何気なくテレビ観戦している時は皆が歴史の目撃者になっているわけだ。

 

例の5050を達成した際の母校・花巻東高校の佐々木監督の言葉が翔平さんの凄さを端的に表していた。今シーズンは投手が出来ない状態の中でホームランと盗塁を量産したことに対する感想だ。

 

いわく「『これしかできない』ではなく『他に何ができるか』という思考力に驚かされる」。この表現が進化を続ける翔平さんの凄さを端的に表している。絶え間ない向上心の大事さを思い知らされた気がした。

 

我々凡人が偉人たちと決定的に違う点は、自分の限界を低い次元に設定してしまうことだろう。自己啓発書などでもさんざん言われている話ではあるが、自分の限界や天井を高く設定することの大事さは言うまでもない。

 

言うは易し…ではあるが、それを実践し続けている翔平さんの姿勢は、いかなるジャンルにおいても、また老若男女を問わず教訓に満ちていると思う。

 

翔平さんは今年で30歳だ。アスリートの世界ではベテランの域にある。十分な実績もある。にも関わらず現状を維持するような素振りは見せない。今の地位を築いた中にあっても少年時代と同じように進化しようとする姿勢はどんな称賛の言葉をもってしても追いつかない。

 

思えば、今シーズンは新天地への移籍に加えて開幕早々にイッペーの事件に巻き込まれた波乱のスタートだった。そう考えると彼の超人的な精神力や集中力、進化を求めるブレない姿勢にはただただ頭が下がる。

 

もはや偉人や歴史的傑物といった次元をも超えた「人類の教科書」みたいな存在になっているのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

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