2023年9月15日金曜日

浅草今昔、そしてメヒコ


この10年で大きく変わった街はどこか。渋谷もずいぶん変わったが、浅草の変貌ぶりにも目を見張るものがある。スカイツリーが出来たのが2012年。その頃から浅草が一気に息を吹き返した感じだ。

 

スカイツリー以前の浅草といえば薄汚い路地があちこちにあってサビれた感じが強かった。アマノジャクな私はそんなうらぶれた空気の中に身を置きたくてちょくちょく出かけた。

 

モダンにオシャレに発展する都内各地の繁華街を横目に我関せず的に独自路線?を歩むそんな浅草の雰囲気は東京生まれの人間が好むノスタルジックそのものだった。

 

進化する都心に比べて置き去りにされているような印象があったが、この10年の変わりようはかなりのもの。コロナ前のインバウンド激増効果もあって、気付けば急激に美化が進みすっかりモダンな観光都市に変貌した。

 

どこで買えるのか聞いてみたくなるようなヘンテコなジャンパーを着て謎めいたキャップをかぶった怪しいオッサン達の姿も昔に比べると激減した。

 

以前はすれ違いざまに「おー、タバコ一本くれ」などと声をかけてくる見ず知らずのオッサンに遭遇することもあったが、あの人達はどこに追いやられたのだろう。

 

うらぶれ感が浅草から失われたことを私が残念がったところで仕方がない。地元の人にとって活気が甦るのは単純に喜ばしいことだ。大昔には東京一の繁華街であり流行発信源だったのが浅草である。昭和レトロ路線をモダンにアレンジして独自の進化を続けて欲しいものだ。

 

私が学生時代、すなわち昭和の後半ぐらいまでは東京の繁華街にはそれぞれカラーや匂いがあった。今はどの街も画一化してしまった印象がある。せめて浅草は独自の匂いを醸し出す街であって欲しい。

 

天ぷらやすき焼き、鰻や釜飯といった古典的ジャンルに名店が多いのも浅草の特徴だ。洋食屋さんにもウマい店がいくつもある。歳を重ねるに連れそっち方面のウマいものにしか興味がなくなった私にとっては魅力的だ。死ぬまでに一度は住みたいと思っている。

 

先日、あてもなく浅草散歩に出かけた。杉並区、新宿区、豊島区と暮らしてきた当時にはやたらと遠く感じた浅草も中央区に住むようになったら電車で10分程度で行けるようになった。もっと頻繁に散策しに行かないともったいない。

 

この日は何となく“浅草的ジャンクめし”を食べたい気分だったので久しぶりに「シーフード・メヒコ」を選ぶ。茨城県で人気のレストランみたいだが、浅草店は街の空気に妙にマッチした雰囲気が漂う。

 

オシャレだとか高揚感だとかは無縁のヌルい感じで昔ながらのレストランといった風情が良い。ヤケクソみたいなカニピラフが名物でだいぶ前にこのブログでも紹介した。

http://fugoh-kisya.blogspot.com/2016/01/blog-post_6.html

 

今はウニキャンペーンの時期だったようで、怪しげなウニメニューが並んでいた。ウニを乗せたステーキ、ウニを塗ったロブスター、ウニピラフなどである。

 

こういう使われ方のウニが美味しいはずはないと頭では分かっているのだが、ここは浅草である、ここはメヒコである、という一種投げやりな?な思い込みによってそれらを注文することにした。

 



つぶ貝の刺し身と海老カクテルという謎の組み合わせを手始めに生ビールをグビグビ。このユルい感じが浅草でありメヒコである。

 



海老カクテルの実に素っ気ない無造作な感じが妙に嬉しい。味もごく普通だ。でも「浅草のメヒコでメシ食ってるぜ」という現実が私にとっては魔法のようで妙に楽しい気分になる。

 

で、ウニステーキとオマール海老のウニ焼きがやってきた。実にベタで実に無造作でそのまんまな感じが潔い。。こういうウニをお寿司屋さんで食べるウニと比較してはいけない。とりあえずウニっぽい風味を感じられれば十分満足である。

 




ステーキはともかく海老のほうはメニューの画像とずいぶん違う。ウニを乗せ忘れたのか調理中に落っこちてしまったのだろう。まあいいか。

 

肝心の味のほうは極めて普通である。でもそれでいい。それでいいんだメヒコ!って感じである。意味不明ですいません。

 

名物のカニピラフを頼むつもりだったのだが、「煮込み牛タンドリア」というメニューが私を呼んでいたのでそっちに心変わり。「バターライスの上にホワイトソース、その上にデミグラスソースがのった満足コンビネーション」というメニューの説明文を見たら頼まずにはいられない。

 


で、出てきたのがコレである。真っ黒くろすけである。さすがだメヒコ!と快哉を叫ぶ。イマドキこんな見た目の冴えない一品を出してくる無造作な感じが私のM心を刺激する。インスタグラマーなら撮影を断念する見た目だ。

 

一口食べる。ウマい。普通にウマい。見た目より遥かにマトモだ。余計なコマ切れ野菜など全く入っていない素っ気なさも良い。凝りまくった料理にはない達観した世界観である。

 

ちょっとほぐしたら多少は見栄えが良くなった。そうでもないか。端っこの方はソースとバターライスが焦げ付いちゃってそれはそれで美味しい。感激しないけど遠からずまた食べたくなる味とでも言っておこう。

 


 

浅草で洋食といえば人気店のヨシカミや名店グリルグランドなどいくつも行くべき店がある。そんな中でメヒコを選んだわけだからこういうドリアに出会えたことはある意味で「いとをかし」である。

https://fugoh-kisya.blogspot.com/2020/02/blog-post_12.html

 

聞くところによると浅草に遊びに行く若者たちは増殖したカフェっぽい店の“バエる”スイーツなどを買って歩き食いや立ち食いをするばかりで昔ながらのレストランに入らずに帰ってしまうことが珍しくないらしい。

 

実にもったいない。せめてレトロな喫茶店でナポリタンを食べたりクリームソーダを飲むべきだと思う。

 

 

 

 

 

 

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