2025年9月22日月曜日

飯茶碗のこだわり

 

誰もが日頃の暮らしの中で「こだわりグッズ」を使っている。私も凝り性だから生活のいろんな場面でどうでもいいこだわりに縛られている。

 

縛られていると書いたが、自分ではこだわっていることに快感を感じている。トイレットぺーパーはドコソ製のナンチャラじゃなきゃイヤという感覚だってこだわりだ。それを徹底することは一種の快感になる。

 

私の愛用品といえば器関係が多い。30代のころに窯場巡りにハマって日本中の焼き物を見て歩いた。見るだけではなく随分買った。立派なベンツ1台ぐらい買えるほど器にお金をかけた。

 

現代陶芸作家モノが中心で骨董品にはほぼ手を出さなかったので破産しないで済んだ。いまは当時ほどの情熱はないが、それでも飯茶碗、湯飲み、ぐい飲み、豆皿あたりにはこだわりがある。

 

もっとも、家庭人を卒業してからはレンジでチンできる安っぽい皿を使う頻度が激増した。家庭人時代はすべての器が日本中の窯場で仕入れてきた一点モノだったわけだから随分と豊かだった。何だか懐かしい。一時期でもそんな文化的?な暮らしをしていたわけだから私もなかなかの粋人だったわけだ。

 

日常遣いの器の基本が飯茶碗である。個人的にはお気に入りを見つけるのに最も苦労するシロモノだ。世の中に出回っている飯茶碗って小さすぎると思う。私に言わせればたいていが女性向け、子供向けにしか見えない。

 

コメを茶碗によそう際に料亭みたいに上品にしたいのなら小ぶりの茶碗でもいいだろうが、私としてはウマいコメを炊いたらしっかり盛りたい。それには相応のサイズの茶碗が必要だ。

 

長年愛用しているのが唐津の作家モノだ。飯茶碗ではなく小ぶりの抹茶椀である。抹茶椀は焼き物の世界ではドッヒャー!と値段が高くなるので気軽に使えないのが普通だ。

 



 その点、我が愛玩品はお抹茶の練習用として造られたらしく抹茶椀としては格安だったのでガンガン使っている。絵唐津という様式に分類されるのだが、色柄よりもサイズ感に惹かれて長年使い続けている。

 

とはいえ、最近ちょっと浮気をしてしまった。半年ほど前からの節制生活のせいで自宅でコメを食べる機会が減った。食べるにしても小盛り程度にしている。そうなると愛しの絵唐津の飯茶碗が甚だしくオーバーサイズなのが気になっていた。

 

料理を盛る器には「余白の美」が必要だが、飯茶碗だとそんな風流な気分にはならない、大きめの茶碗にちょこんと白米がある風情はちょっと寂しい。これっぽっちしか食えないのかという飢餓感さえ覚える。

 

というわけで、小ぶりの飯茶碗の意義を改めて痛感している。ウチにはなかなか素敵な美濃焼の飯茶碗があるのだが、同居する娘用に使わせているから今さら奪い取るわけにもいかない。

 



美濃焼探訪のために岐阜の多治見に行った際に購入した茶碗だ。織部様式の中でも全体が緑色の総織部である。織部の緑は発色がすべてだ。安っぽい観光土産みたいなシロモノと真っ当に作られた本気モノとでは色の深み、渋みがまるで違う。

 

白米が映えるのもこういう茶碗の良さだろう。画像だと分かりにくいが先の絵唐津椀に比べれば随分と小さい。今の私はこっちを使いたい。

 

で、先日の沖縄旅行の際に新しい飯茶碗を買ってきた。私にしては小ぶり、一般的にはまあまあしっかりしたサイズだ。見込み、すなわち覗き込む内側は無地のキレイな乳白色だ。外側の絵柄は沖縄・壺屋焼ならではの風情だが、いわゆる民芸路線のスタイルとして益子焼などにも似た雰囲気だ。

 



単なる白ではなく実に雰囲気のある乳白色だった点が気に入った。作家モノとはいえ、大御所でもない限り数千円で買える。こういうものは出会いである。さっそく自宅でこの器でタマゴかけご飯を食べた。なかなか良い。

 

窯場めぐりではなくとも旅先で出会った器を使い込むのは楽しい。いちいちその器を買った時の旅を思い出す。大げさに言えばそんな器たちには何かしらの物語があるわけだ。使うたびにそこに思いを馳せるのもオツだ。

 



こちらは大きめの茶碗だ。正当な抹茶椀だが、私にとってはお茶漬け専用飯碗である。唐津焼の中の斑唐津というジャンルの器だ。有名人気作家の一品だが、窯場めぐりをマメにしていた頃に親交を深めたおかげで格安で譲ってもらった。

 

抹茶椀といえば陶芸家がとくに気合を入れて造るものだ。ましてや唐津の茶碗は茶人の世界でも人気が高い。そんな作品をお茶漬け専用にしているのは贅沢だが、それもまた楽しみである。


単純な私はお茶漬けを食べるたびにこの器のおかげでとても豊かな気分に浸れる。たかがお茶漬け、されどお茶漬けである。15年以上使っているが傷も欠けも無い。愛着があれば長持ちするものである。


日常使いの器の話をもっと書こうと思っていたのだが、長くなったので今日はこの辺でおしまいにします。

 

 

 

 

 

 

 

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