世の中の食べ物にはウマいものとマズいものの他に「ビミョーなもの」も存在する。ウマいマズいの範疇の外に位置する独特なモノのことだ。
もちろん、味覚なんて個人的な好みだから滋賀の鮒ずしや変な匂いのするチーズが大好物だという人もいるだろう。でもああいう特殊な食べ物は万人が揃って「ウマいなあ」と頷く味ではない。
そういう文化遺産的なビミョーな味はさておき、バカみたいに辛くしたカレーやらアホみたいに脂ギトギトにしたラーメンなんかも実に「ビミョー」だと思う。ウマいなあと頷くよりも一種の征服感を味わうために食べているだけだと思う。
若い頃は「強い味」をウマいと感じる。俗にいうガッツリってやつだ。加齢とともにキツくなってきて背を向けるようになるが、私だって若者時代はわざわざ辛さがウリのエスニック料理を得意になって食べていた。今では見向きもしなくなった。
それでもやはり「男の子DNA」は我が身に残っていて、今でもトンチンカン?なジャンクフードに食らいつきたくなる時がある。先日もよせばいいのにヘンテコな一品を食べてみた。
吉野家の牛玉スナミナまぜそばである。だいたいスタミナと呼称する食べ物は滋味深い優しい味とは無縁だ。ヤケッパチみたいに塩やニンニクが前面に押し出されている。ウマいマズいの外の世界である。
牛丼の具が乗っかった混ぜ麺なら美味しいはずだという私の安易な考えが甘かった。おまけに味をマイルドにする効果があるタマゴを混ぜ合わせるのを忘れた。なんだか拷問みたいな味だった。すみません、個人的な感想です。
40年、いや30年前ならウマいなあと喜んだのだろうか。天下の吉野家がメニューに採用するぐらいだからきっと私が言うほどヘンテコではないのかもしれない。謎だ。
ヘンテコな食べ物といえば回転寿司で出てくる「謎のエンガワ」も捨てがたい。ヒラメやカレイのエンガワの部分があんなに日本全国どこでも毎日品切れにならずに提供されるはずもない。謎の深海魚みたいな魚がエンガワに似ている風味だったから一斉に普及したシロモノだ。
独特の脂っぽさが若い人をトリコにする。実は私もあれが好きだ。正統派のお寿司屋さんで食べる本物のエンガワのほうが好きだが、そもそも比べるべきものではない。謎のエンガワはあれはあれで独自の世界だ。
チマタでは「えんがわの押し寿司」が人気だという。東京駅などでは売り切れ続出だと聞いたことがある。以前、たまたま羽田空港で売っているのを見つけて勇んで買ってみた。ワクワクしながら食べたのだが、これが思ったより口に合わずに落胆した。
あまりにも脂がギトギトで尋常な状態ではなかった。ラーメンの世界では「脂マシマシ」なる危険な?注文の仕方があるそうだが、きっとそれを上回るベトベトぶりだった。容器や附属のおしぼり小袋までベトついていた印象だ。
やはり、謎のエンガワは謎の存在であって、マトモなエンガワには遠く及ばない怪しい食べ物だと痛感した。ナゼそんなものが大人気なのか不思議で仕方なかった。
その後も羽田空港に行くたびに謎の押し寿司を目にしていたのだが、さすがに怖くて買えずに時は過ぎた。しかし、人間の記憶力と学習能力なんて頼りないもので、最初の体験からほんの2~3か月しか経っていない某日、ナゼかまた購入してしまった。
箱のデザインが以前と違っていたから買いたくなった。違う業者さんの商品だろう。前に食べたやつとの違いを確かめたい気持ちに負けて再挑戦である。
で、恐る恐るラウンジの隅っこで食べてみた。ふむふむ、これならイケる。私のジャンク魂が頷いていた。前に食べた押し寿司よりもギトギト感が強くない。回転寿司屋のエンガワに近い感覚だった。
ウマいなあとしみじみする味ではないのだが、こういうモノを食べたい気分の時ならちゃんと美味しく感じる。えんがわの押し寿司をいくつの業者さんが販売しているか知らないが私のおススメはこれ。この箱のデザインが目印だ。
他にもウマいのがあるかもしれないが、たった2種類を食べた私の感想はそんな感じだ。それにしても最初に紹介したほうはなぜあんなにギトギトだったのか今も謎だ。ひょっとしたら保管状態ひとつで状態が大きく変化するのかもしれない。一応、そっちの業者さんの名誉のために付け加えておく。
四の五の書いたが、結局はホンモノのエンガワを正統派のお寿司屋さんで食べるのが一番幸せである。もともと数に限りがあるネタだから「エンガワ、まだありますか?」と尋ねながら注文する姿勢が望ましい。「エンガワください!」などとネタがあるのが当然みたいな頼み方はオトナのたしなみとしてはスマートではない。
大きなお世話かもしれないが…。
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