2020年12月18日金曜日

ご馳走洋食 資生堂パーラー

洋食といえば喫茶店のナポリタンやオムライス、定食屋のハンバーグとコロッケの盛り合わせなど、何となく「身近」なイメージだ。“ご馳走”としてクロースアップされることは少ない。

 

洋食のルーツは文明開化の頃に遡る。西洋料理を日本人の口に合うようにアレンジしていったことが原点だ。その昔はハイカラな食べ物であり庶民にはご馳走、高嶺の花だった。

 

かつて放送されていたドラマ「天皇の料理番」のウケウリみたいな書き方だが、ご馳走としての洋食には奥深い魅力がある。

 

クリームコロッケが2千円、3千円だと聞くとちょっとビビる。たじろぎたくなる。とはいえ、高級レストランで得体の知れないソースをかけた聞き覚えのないカタカナ名前が付いただけの料理なら同じ値段でも気にならない。

 

そんな島国根性的心理が洋食の立場をビミョーにしている。上等な素材を作って腕の良い料理人が丁寧に仕上げて、上質な空間の中で味わうのなら、コロッケやオムライスだって高価になる。

 

もちろん、高いだけあって素直にウマい。定食屋のAランチやB定食と同じものだろうと、味わいはまるで違う。そんなギャップを楽しむのも「ご馳走洋食」の醍醐味だろう。

 

前振りが長くなったが、ご馳走洋食の代表格ともいえる存在が銀座の資生堂パーラーだろう。名前からして喫茶店なのかレストランなのか分かりにくい。謎めいている。

 

言うまでもなく正統派の高級レストランである。知らない人が「オムライス食いに行こうぜ」と誘われてこの店に入ったらきっとたじろぐ。

 

昭和の頃の「高級レストラン」のイメージがそのまま続いている感じだ。外食がハレの日の特別な時間だったことを思い出すような場所だ。

 

高いけど、サービスも器も盛り付けも、そして肝心の味もすべてが丁寧。時にはこういう場所でオムライスやコロッケを食べたいものだ。

 




 

ドリアのベシャメル味も実に優しい。ギトギトしたクドさはない。デミグラスソースで味わうポークカツも丁寧に作られたことが分かる逸品だった。

 

オムライスも上品の一言である。ふわトロオムライスも大好きな私だが、こちらは昔ながらのオムライス。

 

とはいえ薄焼き卵ではなく、火加減が絶妙なオムレツが優しくチキンライスをくるんでいる魅惑の一皿である。

 




 

上の画像のように福神漬けなどの付け合わせが盛られた銀の容器も何ともオシャレだ。気分がアガる。こういう細かい部分がさすがと思う。

 

さてさて、最近やたらとピラフの呪縛に取り憑かれている私としては、天下の資生堂パーラーでも一番のお目当てはピラフである。

 

この日は「ビーフと季節のキノコの和風ピラフ」をオーダーした。シーフードピラフにするか悩んだが、よりアッサリしたほうを選んだ。これも加齢のせいである

 




 

うやうやしくボーイさんがサーブしてくれる。ご馳走洋食ならではである。ピラフの地位?が低くないことがピラファーである私には嬉しい。

 

ビックリするようなウマさではなく、ジンワリとウマいなあとつぶやきたくなる味だった。

 

あえて表現するなら普通に美味しいと言ったところか。もちろん、この場合の「普通」はそこらへんの普通ではない。極めて上質な「普通」である。

 

何とも分かりにくい表現でスイマセン。

 

半世紀以上も生きてきて、あれこれとウマいものを食べてきたが、自分が好きな食べ物を突き詰めて考えると洋食に行き着く。

 

もしかすると、子どもの頃にデパートの食堂で食べたお子様ランチが原点なのかも知れない。

 

ちょこっとずつ盛られたおかずに、ちょこっとサイズのチキンライス。あれはご馳走だった。でも、旗は無くてもいいからもっとドカンと盛ってきて欲しいという欲求不満も感じていた。

 

そんな願望が大人になってからの洋食ドカ食いにつながったのだろう。

 

書いているだけでデパートのお子様ランチが食べたくなってきた。4人前ぐらいを一度に食べてみたいものである。

 

 

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