2025年1月27日月曜日

新しい復讐のカタチ


フジテレビをめぐる一連の騒動は収まる気配を見せない。12月に一部メディアが報じて以来わずか1ヶ月でここまでの事態になることを誰が予想しただろう。





被害者のことをAさんと呼ぶ。もはやネット界隈では誰だか特定されているが、一応Aさんとしておく。戦略なのか偶然なのかはもちろん断定できないが、Aさんの復讐戦としてはこれ以上ないほどの完璧さである。


ちなみにAさんはフリーでタレント活動をしていくようだ。ただ、最近の彼女の活動を記事にするメディアの多くが「さん付け」で呼称している。メディアによる「おっかなビックリ感」が敬称付きタレントを生み出したのか。ちょっと不思議だ。


話がそれた。軌道修正。


報道されているような金額の示談金を受け取ってもそれはそれで復讐心は消えるものではない。示談に応じたくなかったのに職場や仕事環境に伴う無言の圧力で仕方なく示談に応じただけだった可能性もある。

 

示談の際に守秘義務という口外禁止を約束させられたものの、週刊誌の取材に詳細や個人名を明かさずに応じたことで結果的に加害者の悪行を世の中に知らせることになった。

 

事件の後には自身のSNSで体調不良や入院の事実、PTSDの状況や、職場を退職する経緯の他、再出発の告知を発信している。こうした内容によってネットの世界では報道直後から被害者として特定されていたわけだ。

 

最初の報道の直後やフジテレビ社長のお粗末会見のタイミングに合わせるように、AさんのSNSは更新された。内容は騒動とは無関係なものだが必然的にその発信は大いに注目を集める。


とはいえ、Aさんの個人名が事件に絡めた形で報道されることはない。SNSの更新がたまたま(!)絶妙なタイミングというわけだ。そしてAさんの活動が発信されるにつれ加害者や元職場への批判の勢いは加速していった。

 

結果、示談での守秘義務という契約を破ることなく加害者の悪がオモテに出て、ついでに自分を守らなかった元職場を崩壊させることになった。

 

戦略的に練られた復讐劇だとしたら実に見事だ。表現が適切かわからないが快挙としかいいようがない。

 

性加害事件は本人のプライバシーというデリケートな問題があるだけに被害者は声を上げにくいのが一般的だ。勇気を出して告発したくてもいわゆるセカンドレイプ的な状況に追い込まれる恐れもあり、渋々泣き寝入りやそれに近い示談で終わるケースが多い。

 

法律家から聞いたところによると性加害案件の示談金の相場は100万~300万円程度だという。被害状況によってはその後の人生を台無しにされることもあるわけだからどう考えても安すぎる。

 

そんな程度の金額なら刑事裁判を起こしたほうがマシという考えもあるが、思い出したくもない被害の詳細を何度も事細かく語らさられる厳しい現実などもありブレーキがかかってしまう。

 

今回のAさんの件は、ネット上では本人が特定されてはいるもののあくまで世間の「推測」であり表向きには名前は出ないままだ。名乗り出ていない状態は維持されている。いわば示談契約に反しないまま、裁判も起こさずに“トドメの攻撃”を完遂したような格好だ。

 

あくまで偶然の結果かもしれないとしつこく書いておくが、もし狙い通りの戦略だったとしたら凄い話だ。今に至るこの展開を見越したシナリオを描いたのはAさんなのか、それとも優秀なブレーンがバックについているのか大いに気になる。

 

性加害に代表される泣き寝入り案件の復讐劇の方法としては実に画期的だ。今回の手法?が一種のエポックメーキングになることは間違いない。

 

芸能関係に限らず、どんなジャンルにおいても性的上納みたいなウサン臭い話は存在する。それ以外にも立場に付け込まれた数限りない性加害被害者が存在する。

 

上司と部下、元請けと下請け、教師と生徒、師匠と弟子など「力関係」を背景にした性暴力の被害者が今回の件をきっかけに動き出す可能性も大いに考えられる。

 

示談という形で事実上泣き寝入りさせられても、その後、示談契約の内容に反しない範囲で「外圧」を利用して改めて復讐するようなパターンが増えていくかもしれない。上記したようなチンケな金額で手打ちさせれるのが一般的なら、そういう考え方や方法で対抗するのも当然と言えよう。

 

最近は不同意性交罪という新たな法律もできた。それこそ力関係を武器に意に沿わない性被害を受けたら刑事告発しやすい環境が整備された。


まだまだ周知されていないようだが、普通に想像する力任せのレイプのようなパターンではなくても意に沿わない性行為に追い込まれれば幅広く成立する重い罪である。


暴力や脅迫のような分かりやすいパターンはもちろん、それ以外にも力関係などのせいで同意したくないという意思を表明できない状況にあった場合でも対象になる。


いわば渋々とか、仕方なく応じさせただけで簡単に犯罪者である。法定刑が重く設定されているため初犯でも実刑になりやすいようだ。これまでの強姦罪や強制わいせつ罪よりも格段に裾野は広いわけで、優越的地位が絡めば簡単に有罪になる仕組みだ。


時効は15年だ。加害者側としては泣き寝入りさせたつもりでも15年は刑法犯になりかねないわけだから安易に逃げられなくなったとも言える。

 

従わざるを得ないような力関係を利用した性暴力は男の私から見ても許しがたい行為だと感じる。卑劣極まりない。被害者の人生を狂わせるまでの悪行は些細な金銭的賠償で済まされるような話ではない。


フジテレビのガバナンス問題に世間の関心が集まっているが、一連の騒動の根っこは性被害の酷さとその罪をしっかり追及することの大事さだと思う。





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