2010年7月23日金曜日

5千円のやきそば

5千円のステーキ、5千円のフカヒレ姿煮。そんなに珍しい話ではない。そこが高級レストランだったらメニューを見てもギョッとはしない。場合によっては、平気な顔して注文する。

同じ5千円でも「ヤキソバ」となると事情が変わる。「5千円のヤキソバ」。ペヤングなら百数十円で買える。縁日の手作りだって500円ぐらいだ。その10倍もの値付けだ。

そんな強気なヤキソバを食べてきた。一応、富豪を名乗る以上、そんなことをわざわざテーマに取り上げること自体ちょっとダメだ。本当は「そんなもん毎週食べてます」と言いたいところだ。

まあ、5千円ヤキソバが初体験ではないという点で、かろうじて富豪っぽい(はずだ)。一応、人様に「ここのヤキソバはオススメだよ」とか語れるのだから大したものだ。



場所は、ホテルニューオータニの「トレーダーヴィックス」。トロピカル系飲食店?の元祖だ。南国っぽい造りを30年以上前から取り入れている老舗。

初めて訪れたのは中学生時代。友人の父親に連れてきてもらった。スペアリブを初めて食べたのもこの店だった。今だに私にとってワクワクする店のひとつ。

昔の日本人が喜んで食べたオーソドックスな西洋料理がメニューの中心。うなるような料理はないものの、何を頼んでも無難に美味しい。

酒を呑むことが食事の最大目的になってしまった私にとって、メニューのメインディッシュ欄が厄介な存在。前菜だけ頼んでグビグビ呑んでいたいのだが、バーコーナーではなく、レストランスペースにいる以上そうもいかない。

ドカンとステーキが来ても胸焼けしそうだし、羊だ鴨だといわれても、フォークとナイフで両手がふさがることを想像するだけで気分が乗らない。

そんなスマートではない私にとって有難い存在が「皇帝風やきそば」だ。5千円といえば大金だが、メニューのメイン料理の欄には5千円前後の料理ばかり並んでいる。だからヤキソバのアホみたいな?値段も、たまにだったら許してしまう。お箸で食べる点がまたいい。

要は、プリプリの大ぶりな海老や上等な牛ヒレ肉、ホタテ貝なんかがどさっと載っているスペシャルヤキソバだ。

量がまた多い。2人前という表現でもおかしくない。中途半端な中華料理屋で中途半端な量のヤキソバを注文することを思えば、あながち「皇帝風」は高すぎないのかもしれない。くどくなく、あっさりすぎず適度な味わい。

味がどうだとか、具材がどうしたというより、「5千円のヤキソバを食べた」という珍事がネタとして楽しい。だからつい注文してしまう。

飲み屋のママさんからお礼状をもらってもネタにはならないが、見知らぬ女性からラブレターをもらったら、私の場合、その話題で1週間は生きていける。ネタとしての有り難さはそういうことだ。

5千円のフカヒレを食べたところで、日常会話のネタにはならないが、ヤキソバだったら結構ウケる気がする。

意表を突いた高いものというジャンルで有名なのは資生堂パーラーの「1万円カレー」とか、伊勢志摩のどこかのホテルの伊勢エビカレー、アワビカレーあたりだ。1万数千円の値付けをするカレーライスだ。

まあ、率直に言って、注文する人の頭の中は、味がどうこうではなく「話のネタ」として割り切っているのではないか。そういうジャンルはもっとあってもいい。

1万円のカツ丼とかがあったらゼヒ食べてみたい。どう逆立ちしたってマズいはずはないし、おまけに話題性抜群。変な話、向こう10年はその話を大げさに自慢できる。

1個3千円の鯛焼きとか、1本3千円のソーセージとかも楽しそうだ。

インチキな寿司屋でちょろっとボラれるのは許せないくせに、ネタ的にアリなら突拍子もない値段も許してしまう。こういう感覚っておかしいのだろうか。

考えてみれば銀座のクラブでコーラだけ飲んで、いつもと変わらぬお勘定だったことがある。スーパースペシャルコーラだ。充分おかしい。結局、普段からバカみたいな私だ。

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