2011年6月24日金曜日

赤身

自分の身体がカルビとか大トロ状態のクセに私の好物は「赤身」だ。無いものねだりみたいだ。


男は赤身、大人は赤身だ。お寿司屋さんに行くとそんな一方的なフレーズを叫んでいる。デブが言うとヤセ我慢みたいに思われるのだが、上等な赤身はやはり極上の味わいだ。

香り、食感、後味ともに寿司ネタの王道だ。ちょっと大袈裟だが、あの鉄分の香りと舌触り、味わいは他の魚とは一線を画す。

そうは言っても、なかなか上等な赤身に出会わないのが現実だ。トロ人気のせいで赤身に力を入れない店があまりに多い。

一見するとウマそうに見えてもビチャっとして味がない赤身ばかり。あれを頻繁に食べさせられていたら、赤身ファンが絶滅危惧種になるのも仕方ない。

考えてみれば、日本人は世界第一のマグロ食い人種である。どんな山の中の温泉宿にいてもマグロの刺身が出てくる。これは凄い話だと思う。

世界中からあらゆる種類のマグロが日本を目指してやってくるわけだし、テキトーな値段で流通させないとあれほどポピュラーな存在にはならない。

当然、マズいものも大量に出回る。上等な赤身を食べたければ、然るべき店でそこそこの値段を覚悟しないとならないのがつらいところだ。

詳しくは知らないが、同じ極上本マグロの赤身でも、少し部位が違うだけでも味は変わるらしい。熟成度合いや包丁の入れ方にも左右されるだろうから、絶品赤身に出会うのは意外に難しい。

画像は高田馬場の鮨源にて。ここはたいてい上物の赤身があるので、ほぼ欠かさず注文する。握りではなく刺身で食べたくなる。ゆっくりじわじわ味わうと陶然とする。

若い時はトロ一辺倒だったのだが、年々苦手になってきた。たくあんと一緒に巻物にしてムシャムシャ食べることもあるが、トロ単体だとクドい。

トロに限らず、脂の乗りまくった白身も敬遠する機会が増えた。別に気取って正統派を目指すつもりはないのだが、選ぶネタがオーソドックスな路線に偏ってきた。こんなことでは枯れていきそうだ。もっとアブラギッシュでいたほうが良いのだろうか。

この店では白身もあれこれ用意されているのだが、常時2種類は昆布締めがある。昆布と抱き合わせたのがいつの時点だったかによって、昆布風味の染み具合が大きく異なる。


個人的には、その日の朝に昆布締めにしたような浅めの状態が好みなので、タイミングが合えばこちらもたいてい注文する。

味の善し悪しを理論的に語るほど執着があるわけではないが、最近は「淡い」感じに惹かれる。だから必然的に和食が多くなる。

お寿司屋さんなら、当然だが醤油のつけ加減も自分の好みで済む。塩辛や珍味系で充分しょっぱいモードになった後は、あっさりと淡い旨味を噛みしめたい。

焼肉屋に行く機会もめっきり減ったが、たまに行ってもロースとかタン塩とかを頼んで、あとは珍味でチビチビだ。下手をすると海老あたりを焼いて喜んでいる。すいぶん軟弱になってしまった。


こちらの鮨源で、すっかり定番人気商品になったのが馬刺し。クセのない上物がロース、霜降り、赤身と三種類揃っている。私の場合、馬に関しても赤身が好きだ。赤身だと酒の種類を選ばないというか、他の食べ物の邪魔をしない感じがある。

精力も落ちてきた今、上物の馬刺しが常備してあるお寿司屋さんは私にとってはオアシスみたいなものだ。意外に貴重なメニューだと思う。

ちなみに、トロから赤身、カルビから馬刺しの赤身へと好みが変化してきたわけだが、性格も昔とは大分変わってきたように感じる。

単に加齢のせいなのだろうが、肉食獣のような攻撃的な面がすっかりしぼんだ感じがする。

良い面もあるが、いっぱしの社会人として闘っている以上、あまりポワワンとしているのは間抜けみたいで困る。

「いいひと」とか「おだやかなひと」がエネルギッシュで向上心バリバリだった例はあるのだろうか。なんかピンとこない。

そうは言っても、いい年をした大人がいつでもブリブリ怒りまくって攻撃一辺倒というのもバカみたいだ。やはりバランス感覚が大事なんだと思う。

「冷静で穏やかでありながら、必要な時にはメラメラと熱く燃えたぎる」。

上等なマグロの赤身みたいだ(全然違うか)。

そんな人間に私はなりたい。

2 件のコメント:

悶々 さんのコメント...

もうその様な殿方におなりだと思いますがー。
私も赤身すきです!必ず頼む。
前元フジテレビの露木さんが赤身の旨さは酸味だと言っていて、素晴らしい!と思いました。
ろくに美味しいお寿司食べてませんが、春の平貝が好きですね~

富豪記者 さんのコメント...

悶々さま

貝のうま味も格別ですねえ。
淡泊系の良さあっての珍味なんだろうと思います。これからシンコや新イカが登場する季節ですね。

四季折々にうまいものがあるこの国は幸せです。。。