たかだか50歳程度で語る話ではないが、「人生最後の〇〇〇」がちょっとだけ気になるようになってきた。
最近、やたらと娘とデートする機会が増えた。幸せである。そのせいで「こんなに可愛い子どもを持ててオレの人生はかなりラッキーだったな」と痛感する。
しょっちゅうそんなことを感じているおかげで「オレの人生は」の部分に意識が行き過ぎるのだろう。
あんなにたくましかった千代の富士ですら61で亡くなった。彼が50歳の頃、残り10年だとは誰も考えなかったはずだ。
私の年齢だとまだまだ一悶着も波乱も起きるのだろうが、とっくに人生の折り返し地点は通過している。
未来より過去の時間の方が長いから、懐古的な話も多くなる。
さてさて、「人生最後の」シリーズはいろいろある。たとえば、あんなに好きだった野球だ。当然ながら今や観戦専門である。
草野球から離れて10年以上が過ぎた。もし、このままプレーしないのなら、我が栄光?の「ベースボーズ」(チーム名です)で投げたいつだったかのマウンドが「人生最後の登板」である。
「人生最後の奪三振」「人生最後の被本塁打」等々キリがない。
一度だけ草野球の記念大会か何かで東京ドームで投げたことがある。少なくともあの日は、私にとって「人生最後の東京ドームのマウンド」だった。
これから先、犯罪以外で「時の人」にでもなれば始球式に呼ばれるチャンスもあるかもれないが、時の人になる予定もなければ才覚もない。
まあ、そんなこと言ったら小学校の聖歌隊メンバーとして渋谷公会堂で歌ったことだって「人生最後の渋谷公会堂出演」だし、大学生の頃、ファッション雑誌に登場したのも「人生最後のモデル経験」であり、10年ぐらい前にテレビで消費税問題を語ったのも「人生最後のコメンテーター体験」である。
おそらく「人生最後の変態プレイ」とか「人生最後の猥褻行為」も既に終了したはずである。
まだまだ現役とはいえ、さすがに30代40代の頃のゲス・エネルギーには遠く及ばない。一応、これから先も相手によってはスペクタルな体験もあるかもしれないが、いまさら新しい世界を覗くのも怖い。
「人生最後の桜」「人生最後の花火」。そんなのは最低でも20年は先のことであって欲しい。「人生最後の変態プレイ」なんてちっとも惜しくないから、ぜひぜひ桜や梅は今後も数え切れないほど観賞したいものだ。
こんな話を書き始めたのは、おそらく最近読んだ本に影響されているのだろう。著者は多くの人を看取ってきたホスピス医である。
死亡率が100%なのに死ぬことをあまり考えずに生きているのが人間である。死を意識しすぎたら怖くて仕方がないから脳が防衛本能を発揮しているのだろう。
身近な人の死に接したり、こういう本を読んだ後は自分の生き方を反省するのだが、なかなか続かない。続いた方がいいのか,続かない方がいいのか、それ自体よく分からない。
今日が人生最後の日だったら・・・。考えるだけで切ない。煩悩の塊である私は、最後に食べるものぐらいしか頭に浮かばないから救いようがない。凡人の極致である。
少し話は変わるが、対人関係で腹が立ったり鬱陶しい気分の時に、自分の心をいさめる目的で「この人が明日死んじゃったら」と考えることがある。
少しばかり乱暴な発想だが、案外これが悪くない。縁起でもない考え方だが、真面目にそんなことを思うと少し自分の気持ちが抑えられる。
もちろん、どうでもいい相手にはそんなことは思わない。身近な人だったり自分にとって重要な人だったりすると、「この人が明日死んじゃったら、きっと自分は後悔する」という意識になる。
死んでしまったら二度と会えない。イヤな感情のまま別れたら切ないし淋しい。極論ではあるが、そう思うことで少し自分が穏やかになれる気がする。
いい歳して親と折り合いが悪い人は多い。夫や妻、子供との関係がシックリ来ていない人も多い。おじいちゃん、おばあちゃんと疎遠になっている人も多い。
その人のことを冷静に「明日死んじゃったら」と考えてみることで少しは気持ちが変わるかもしれない。
もちろん「死んでくれた方がいい」という残念な結論が頭に浮かぶこともあるだろう。それはそれで現実だ。冷静に考えてそうならば仕方がない。
でも、二度と会えないという現実を想像することが色んな意味でブレーキの役割を果たすことは少なくないはずだ。
なんだか説教くさいことを書いてしまった。
エラそうなことを書いたが、私自身は「今日を人生最後の日として生きる」ことがなかなか出来ないくせに、自分の身近な人には私のことを「明日死んじゃったら」と思って接して欲しいと願っている。実にワガママである。
あんまりシンミリしたことばかり考えていても仕方がない。天下無敵の独身男なのだから「人生最後の恋愛」をあと10回ぐらい繰り広げることを考えた方が健康的だ。
8月。お盆の頃になると不思議と生き死にをめぐってあれこれ考えたくなる。まあ、それも日本の正しい夏の過ごし方だろう。
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