外食する機会は多いが、顔なじみの店ばかりに行くのも面白くない。たまには新規開拓したくなる。
付き合いでの会食なら初めて訪ねる店に行くことも多いが、仕事の話が絡めばノンビリ過ごす気分にならない。
居心地の良さそうな店でも、連れて行ってくれた人がその店の常連だと何となく再訪する気にはならない。
で、おそるおそる一人フラフラと新規開拓に挑むのだが、ハズしちゃった時のショックが大きいので、昔ほどマメに探検できなくなった。
積極的に新規開拓しなくなったのは、億劫になったからだけでなく、居心地の良い店がいくつかあることも影響している。
月に2度3度通うような店もある一方で、数ヶ月に一度ぐらいの頻度でふらっと訪ねる店もいくつかある。今日はそんな「プチ常連」みたいな店の話。
その手の店に行くときはたいてい一人だ。止まり木感覚である。口数少なくノンビリしたい時が多い。
初訪問の店だと落ち着かないし、ヘビーローテーション?で通っている店だと何となく無駄話に花を咲かせてしまう。
プチ常連の店はしっぽり飲みたい時に最適である。しっぽりなどと言うと聞こえがいいが、要するにグデ~と放心状態でいたい時に使い勝手が良い。
この写真は銀座のおでん屋「おぐ羅」。抜群にうまいサンマの塩焼きで一献という至福の時間である。
もう随分前の話だが、こういう店でシッポリ飲むような中年男になりたいと思って割とマメに通った。今では店主から愛想のひとつも言われるが、はじめの頃はどことなく気張って座っていたような気がする。
実は子どもの頃からおでんが好きではない。でもそれでは正しい中年男?にはなれないと思ってせっせと通った。おでんが目的というより店の風情、雰囲気に惹かれたのだと思う。
中年紳士ともなれば鳥貴族やワタミでガハハハ飲むよりも、パッと見、敷居が高そうな小料理屋なんかで悠然と杯を傾けるほうが正しい気がする。いや、それが正しい。
そういう意味では、「分かったような顔をした中高年の巣窟」?みたいなこういう店は貴重な存在である。わが社がある池袋にはまず存在しないタイプの店だ。私がわざわざ銀座村に出没してしまうのも、こうしたオトナ向けの店が多いからである。
決して7丁目8丁目界隈の麗しい女性陣に引き寄せられているのではない。「正しい食、正しい止まり木」を求めているだけだ。
一応そういうことである。
こちらは同じく銀座にある日本料理の「三亀」。真っ当な日本料理を肩肘張らずに楽しめる。
居酒屋とは次元の違う揚げ出し豆腐などをツマミにカウンターでカピカピ飲んでいると心まで弛緩してくる。
こちらの店も頻繁に出向くわけではないので顔を覚えられている程度である。さきほどの「おぐ羅」もそうだが、そうした「プチ常連」ぐらいのポジションが居心地が良い場合もある。
私は極めてお人好しだから、ヘタに常連扱いされると申し訳ない気分になって大量に料理や酒を注文して勝手に苦しむことがある。
ちょっとばかり顔馴染み程度だと、こっちとしてもそんなに必死にならずに済む。まあ、一種の自意識過剰みたいな話だが、私にはそういうバカなところがあるので仕方がない。
某下町の某寿司屋にも思い出したように出かけるのだが、ウマいツマミでホゲホゲ飲んでいると握りが4貫ぐらいしか食べられない。
そういう時にいつも私の脳裏をよぎるのが「ケッ、こいつはビンボーなんだな」と店の人に思われないかという不安である。
バカみたいだ。いやバカだ。
そういう店に限って現金しか受付けないから、ブラックカードを出して見栄を張るというアホみたいな作戦も通用しない。「つりは要らないよ」などと気どるのも年配の大将に対してちょっと失礼だ。
結局、余計な弁明など出来ずに「プチ貧乏オーラ」をまとってスゴスゴ店をあとにすることになるわけだ。Mな私はそんなやるせない感じも嫌いではない。
最近出没するようになった湯島界隈で出色の存在が日本料理の「いづ政」だ。安い店ではないが非常にウマい料理を味わえる。高級路線といえども敷居が高いわけでもなく窮屈な感じはない。
一応、顔馴染み程度にはなっているので個人的に居心地は抜群だ。極端に混雑することも少ないのでゆったり飲み食いできる。
特製カツオのたたきと松茸の卵とじである。財布を無くしたり失恋した直後だろうと笑顔になれそうなウマさである。
この店は濃厚な鳥味噌が載ったふろふき大根が抜群なのだが、毎度あれこれウマいものを試しているので、なかなかそこまで辿りつけない。ご飯モノも注文したことがない。
さすがに誰かと一緒に行かないと注文できる量には限りがある。いろんなものを食べたいのなら二人以上の時にシェアするのが手っ取り早いのは当然である。
やはり「一人しっぽり」を気取りたいなら、珍味と刺身ぐらいで酒を2合ほど飲んで小一時間で引き上げるぐらいの割り切りが必要なんだろうか。
あさましくアレコレ食べたがっているようでは「渋いオジサマ」への道は遠い。
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