2016年11月18日金曜日

日本橋の風情 「割烹とよだ」


東京は1200万都市だから場所によって様々な顔がある。最先端のエリアからディープな下町、お屋敷街からささくれだった?ドヤ街まで何でもアリだ。

地方出身のミュージシャンの多くが東京をテーマにした怨めしいような歌を作り、倉本聰が脚本を書くようなドラマでは「オレ、もう東京は卒業するよ」などと言われる。

なんだか東京というだけでヒール役を演じさせられている感じだ。魑魅魍魎が住む場所みたいに扱われている。根っからの東京人にとってはシャクにさわる。

そうはいっても東京人でも掴み所がないのが東京の魅力だろう。

私自身、東京のそれぞれの場所にそれぞれ勝手な印象を持っている。正しい認識かどうかは怪しいが、ある程度の年齢の東京人には共通する部分も多いと思う。

「四ッ谷、赤坂、麹町、ちゃらちゃら流れるお茶の水、イキなねえちゃん立ちションベン」。映画「男はつらいよ」で寅さんが口にするフレーズだ。

四ッ谷、赤坂、麹町あたりの風情にどこか艶っぽさを感じる東京人にとって、あの啖呵売の口上は印象的だ。

やはり寅さんがテキトーな商品を露天で紹介する際に「花の都、東京は神田の六方堂という老舗が泣きの涙で手放した・・・」云々という決まり文句がある。

お決まりのでっち上げ話だが「花の都」で「老舗」となれば確かに「神田」がしっくりくる。ありそうな話だ。

老舗といえば「日本橋」だが、そこは寅さんが語る作り話である。さすがに「日本橋」だと本格的?過ぎて話がわざとらしくなるから「神田」が丁度いい。

このあたりの東京の面白さだ。街ごとにビミョーな肌合いの違いがある。

ということで前振りが長くなったが「日本橋」の話を書く。

時々、日本橋界隈をウロウロしたくなる。近くに構える銀座とは違った独特の落ち着きを感じる東京の座敷?みたいな場所だ。

近年、三菱グループが「丸の内」をグイグイ演出?しているのに対し、「日本橋」は三井系がバリバリ推している。

いつのまにか数多くのショップ、レストランを擁する「コレド」というビルがいくつも出来て、それぞれが「お江戸日本橋的イメージ」に沿った展開をしている。

銀座ほどごったがえすこともなくウロウロするには悪くない。上等な和物を扱う店も多くオトナの散策にはオススメだ。

昔からのウマい店が点在しているのも日本橋の魅力である。ウナギ、天ぷら、寿司といった「江戸っぽいラインナップ」には事欠かない。

ハイカラ時代?の花形だった洋食屋さんやシュールな喫茶店なんかも揃っている。どこも老舗の矜持みたいな雰囲気があってチャラチャラした繁華街とは街の香りが違う。


うろうろついでに目にした気になる店にふらっと入ってみるのもプチ冒険みたいで楽しい。

そんな流れで時々出かけるようになったのが日本料理の「割烹とよだ」という店。相当古い歴史を持つらしい。

とはいえ、店自体は綺麗で古めかしい雰囲気はない。張り詰めすぎた緊張感が漂う店は苦手だが、こちらの店はその一歩手前ぐらいの上質な感じ。オジサマにとっては居心地が良い。

座敷席の客が中心のようで、ゆったりしたカウンター席は比較的空いていることも多い。

こうした正統派の老舗日本料理店にしては珍しく、カウンターではアラカルトでちゃんとしたウマいものが食べられる。

刺身もその日のオススメを教えてくれるし、お通しのような感じで用意される前菜盛り合わせはチョットずつ盛られた料理すべてが酒の肴にバッチリ。


一年中置いてあるというカラスミは目ん玉が飛び出るぐらいウマい。濃厚な胡麻豆腐も抜群だし、繊細な懐石の一品のような料理とともに鶏の唐揚げなんかも用意してある。

安い店ではないが、高級路線のお寿司屋さんでガンガン飲み食いするよりはお手軽だ。

正統派の老舗料理さんで好きなものを好きなペースで注文してユッタリしたカウンターでのんびり一献。これって出来そうで出来ない贅沢である。オジサマならではの喜びである。

つくづくオジサマに生まれて良かったと思う秋である。

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