2017年9月27日水曜日

豪華じゃないけど


インスタ映え現象のような「見栄えが良くて豪華なもの」をアピールする風潮の向こうを張って、今日は「豪華じゃないけどウマいもの」を語ろうと思う。


ハムライスである。名前も見た目もそのまんまである。実に潔い。

ご飯モノの主力級メニューと言えば、チキンライスにエビピラフ、カニチャーハン等々、具材の存在感がその一皿の“権威”を決定する。

フカヒレチャーハンなどと言われると、ハハァ~とひれ伏すような印象がある。具材は大きなポイントだ。

そんな世界観の中で燦然と輝く孤高の存在が「ハムライス」である。

特別なハムでも何でもなく、ただのハムである。“具材ヒエラルキー”へのアンチテーゼのようだ。

銀座の洋食の老舗「煉瓦亭」の一品。いつもオムライスやエビライス、ハヤシライスなどを選んでしまい、私にとって優先順位上位になることのないメニューである。

でもこれがウマい。ハムの他には大きめのザク切りタマネギが味のアクセント。塩味というかコンソメ味というか、ハムを引き立たせる優しい味わいだ。

クリームコロッケやカツレツあたりをおかずにハムライスを主食にするのが正しい食べ方だと思う。

何の変哲もないのにウマい。今風の表現で言うならば「じわじわ来る」感じである。


お次は上海焼きそばである。それなりの中華レストランに行くと焼きそばメニューもいろいろだ。五目に海鮮などやはり具材の豪華さが目を引く。

それに比べて上海焼きそばはシンプルである。どうだっ!とばかりに具材を乗せて麺が見えないような焼きそばとは一線を画す。

麺中心の潔さが素敵だ。この写真は都内各地に展開する「維新號」の上海焼きそばだ。本場中国のものは麺がもっと太めらしいが、こちらは細麺。

少し甘味のある中華醬油が味のベースだろう。麺そのものの美味しさがストレートに伝わる。炭水化物バンザイと叫びたくなる。

恵比寿のウェスティンホテルにある中華の名店「龍天門」でも似たような焼きそばに感激したことがある。何を食べてウマい店だが、一番印象に残ったのがシンプルな焼きそばだった。

ゴテゴテと具材がエバっている焼きそばが中華料理店では定番だ。それはそれで美味しいし、見た目も楽しい。そういうラインナップを揃えている店であえてシンプルな上海焼きそばを頼むと、お店の底力を感じられる気がする。



続いては「おぼろ」である。日本料理の世界における脇役だ。白身魚や海老をすりつぶして煮て作るアレだ。

市販のおぼろは甘ったるくて人工的な味がするが、ちゃんとしたお寿司屋さんが手作りするおぼろは一味も二味も三味も違う。

これは目白にある「鮨おざき」で食べた“おぼろ巻き”である。私が得意とする?邪道系の注文である。

普通は茹でエビやカスゴ、コハダなどの握りにまぶす役割だが、おぼろ単体を味見させてもらったら美味しかったので、おぼろだけで巻きものを作ってもらった。

ほんのり甘いからデザートみたいなものである。お寿司屋さんでの最後のシメに甘い卵焼きをシャリ付きで食べることが多い私としては、「シャリ+甘味」には目がない。

正直に言えば、子供っぽい味かもしれない。カンピョウと一緒に巻いてもらった方が間違いない。でも、デザート代わりにもコメが食べたい私にとってはウマウマである。

いずれにせよ、派手さはなく地味だけど凄くウマいものはたくさんある。

ごく普通の見た目なのに妙に美味しいシュウマイとか、ただの缶詰なのに妙にウマいツナ、平凡な見た目なのに妙にウマいゴマせんべいなど例をあげたらキリがない。

ちなみに、究極の「地味ウマ」は誰にとっても母親に握ってもらったおにぎりかもしれない。

私も時々、子供時代に母親が作ってくれたおにぎりを思い出す。タラコや昆布の他に、挽き肉と塩コショウで作った炒めご飯のおにぎりが抜群に美味しかった。

まさに「おふくろの味」である。お盆の季節や墓参りに行くといつも懐かしく思い出す。

いかんいかん、こんなことを書くとまだバリバリ元気な母親にぶっ飛ばされそうだから、この辺にしておく。

2 件のコメント:

てていふ さんのコメント...

いつも楽しく拝見しております。
母親のおにぎり、なんであんなにウマイんですかね。
ひさしぶりに食べたくなりました。

富豪記者 さんのコメント...

てていふ様

コメント有り難うございます!
母親のおにぎりはグルメだなんだという世界とは異次元のモノですよね!
料理の神髄は結局、愛情に尽きるんでしょうね。