2007年12月18日火曜日

税制改正考 「変な制度」


平成20年度の税制改正の方向が決まった(12月14日のブログ参照)。同族中小企業の非上場株、いわゆる自社株評価の引下げは画期的な内容だが、その一方で中小企業蔑視の制度が依然としてまかり通っている現実はなんとも気味が悪い。

「特殊支配同族会社」。仰々しい用語だが、中小企業の多くが該当する会社形態だ。オーナー経営者およびその同族関係者が株の9割以上を所有しているケースで、その会社の役員の過半数を同族関係者で占めているような会社を指す。

中小零細企業や創業間もないベンチャー系の企業ならこうした条件に当てはまることは珍しくない。

この条件に当てはまる会社は、経費の計上に制限が設けられている。オーナー経営者の給与所得控除相当額が、その会社の損金にできないという規定だ(例外規定もある)。そもそも企業の経費判定と社長個人の所得税における控除相当額をごっちゃにしている点が変な制度。学者、税理士をはじめ専門家も首をかしげる内容だ。

たとえば、給与総額が3000万円の社長であれば、給与所得控除は320万円。これは社長個人の所得税を計算する際に基本的な控除額として差し引くための金額だ。この320万円を社長が経営する会社の法人税の計算上、経費に認めないという制度。

導入されてわずか1年で適用対象企業の条件が見直され、ターゲットが狭くなったが、各界からの廃止要望が相次ぐなか、いまだに存続中。

ただ、今回の与党税制改正大綱では、中小企業税制に関する基本的考え方のなかで「適用状況を引き続き注視する」という文言が盛り込まれた点に注目したい。

導入してわずか1年で内容が見直され、そしてまた1年後にわざわざこんな文言が盛り込まれること自体、変な制度ということが公的に認められたようなものだろう。

規制的要素の強い新制度が税制改正で誕生することは過去に幾度もあったが、誕生してすぐにドタバタするなんて事は、かつては無かった気がする。言い換えれば、この「特殊支配同族会社」の規制制度がいかに強引に導入されたかを物語っている。

2年ほど前だったか、自民党国会議員から同制度について「役人が上手に税制改正案に盛り込んでしまった」という趣旨の話を聞いた。「なんだかなー」な話ではあるが、さもありなんという印象を受けた記憶がある。

税制や関連する実務上の規定整備の世界は、民間の実態など世情に通じたノンキャリア組の主(ヌシ)のようなベテランが、絶妙なバランス感覚を発揮して作業していた。時代は流れ、倫理問題などによって民間との接触も減った役人は以前より孤立感を強め必然的に独善的な感覚を強めていった印象がある。

税務職員出身の、いわゆるOB税理士の間でも、現在の税制関連法案や税務行政運営は、昔より強権的と指摘されることが多い。時代が変わったと言えばそれまでだが、首をかしげたくなる制度が誕生する背景には、そうした役所の事情が関係していることは確かだろう。

明日も「変な制度」の続きを書きたいと思う。

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