2007年12月11日火曜日

いちいち肯定してみる


たまに顔を出す銀座の鮨店。店名は写真に撮ったコースターの文字をご解読いただきたい。このお店は今年、近くから移転して寿司激戦区の雑居ビルに新装オープンした。

店主の姿勢がいい。客を客としてもてなす。当たり前のようでこれが出来ない職人さんは多い。押しつけがましくされるのが嫌いな私にとって、これは好きな店を決める大きなポイント。

銀座の寿司店は場所柄、総じて柔らかい接客をする。一部には無礼な店もあるが、やはり同伴客も多い土地ゆえに、主客をたてることは当然で、食べ方や順序、うるさいウンチクの押し売りをエラそうにされることは少ない。

こちらのお店も、しっかりスジの通った仕事ぶりに加え、客の意向を完全に汲んでくれるし、かといって極端に客におもねることもなく気持ちがいい。

店主は、都内の私立一貫校からそのまま大学に上がった好漢で、同じく私立一貫校上がりの私にとって共鳴できる「臭い」がある。

ちなみに路面店ではなく雑居ビルの地下とか階上に店を構える寿司店には妙な落着きがある。この店以外にも、たまに顔を出す店がいくつかあるが、不思議と同じような環境の店ばかりに行っている気がする。

こうした店は隠れ家的な雰囲気が気分を盛り上げてくれる。それ以上に、クラブ的、いや倶楽部と書いた方がニュアンスが伝わるだろうか、「お互いよくこんな所までたどり着けましたね」的な物好き同士の一体感が心地よい。

目的の大半はアルコール摂取なわけで、気分で呑むタイプの私としては、この手の店にいると「通っぽい気分」を満喫してしまい、ちょっとしたことやつまらない物にも感動する。刺身のつまの大根をやたらとおいしく感じたり、刺身の下敷き役の大葉まで喜んで食べてしまう。

先日もただのワカメに用意された酢醤油の美味しさに感動し、箸休めのカイワレにかかっていたドレッシングに感激した。我ながら実に安直だと思う。自分がいかに楽しい時間を過ごせるか、いかにその時間を無駄にしないようにするかを突き詰めていたら、いちいち肯定して、いちいち有り難がる習性が身に付いてしまったようだ。

文句や不満をあげつらってばかりだと結局自分が楽しくない。酒もまずくなってしまう。飲食店でも文句ばっかり言ってるオヤジをよく見かけるが、あの手の連中はきっと幸せではないのだろう。お気の毒だ。

肝心の寿司の話。この店の特徴は赤酢を使ったほんのりと黒みがかったシャリの色。このシャリを食べると他の店の普通のシャリが少し物足りなく感じる。握りは小ぶり。いろいろ食べられるので有り難い。

いつも酒肴ばかり嘗めているので、今度こそは握りを腹一杯食べようと画策しているが、いまだに実現していない。先日も店主が「ちょっと早い」と言うのも聞かずに自家製のからすみを出してもらい、ネットリ濃厚な味を楽しんだ。実にエロティックな味がした。

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