2007年12月20日木曜日

タコ社長が怒る税制

昨日、役員給与に関する変な税金の話を書いた。今日も続きを書きたい。

役員に支給する給与は損金にできないというおかしな原則をクリアする方法のひとつが「定期同額給与」。これは1か月以下の一定期間ごとの支給で、その都度支給額が同額であれば、その役員給与は損金にできますよという制度。

大半の企業は、この規定によって役員給与を当然のように損金にできる。月給100万で年間1200万といった綺麗に収まるケースであれば、経費性に問題ない。一見、なんてことなさそうな決まりだが、実際の中小企業経営においてコトはそう簡単に運ばない。

寅さんに出てくるタコ社長を考えればよく分かる。いつも資金繰りでピーピーの朝日印刷のタコ社長。安定した資金繰りとはほど遠い状況だ。タコ社長も経営者のはしくれ、さくらの旦那・博さんをはじめとする従業員の生活維持に腐心する。映画でそんなシーンはなかったが、博さん達の給料を遅配したりカットすることになれば、当然、それより先に社長である自分の給料をなんとかするだろう。遅配や減額。中小企業のオーナー社長にとって身近な話だ。

タコ社長が、ある時期、自分の給与を2割でも3割でもカットしたり、ある1か月分だけ返上したとする。この場合、税務上は「定期同額給与」に該当しなくなり、その他の月の分も含めた1年間の社長給与が朝日印刷にとって損金にならないという仕組み。これって変じゃない?

実際の世界では、減額分や遅配分を経理上「未払金」で処理し、事業年度内で辻褄を合わせようという動きが盛んらしい。そうでもしないとレッキとした役員給与という純粋な費用が税務上の経費にならないという状況は不自然極まりない。歪んだ制度といえる。

一応、例外規定もあり「経営の状況が著しく悪化」すれば、減額改定しても役員給与を損金にして良いとされている。ただ、「著しい悪化」という定義が不明であり、タコ社長の場合を考えても分かるが、慢性的に資金繰りに躍起になっている会社にとっては救済策にはならない。

この定期同額給与という規定、そもそも昨日のブログで書いた事前確定届出給与とセットで登場した。昨日も書いたが、事前確定届出給与は、「役員賞与も損金にできますよ」という鳴り物入りで導入された制度。
この2つの制度の関連をうがった見方で解説すれば次のようになる。

「役員賞与を損金にできるようにしてあげたのだから、月々の給与に関する取扱いは、これまでよりカチっと整備しますよ」といったところか。アメとムチのような論法だが、フタをあけたら、役員賞与を損金にすることなど普通の中小企業には至難のワザ。結局はムチとムチの構図が完成したという薄ら寒い話。

「一度決めた給料は変わらないのが普通」。役人の発想として本当にそう信じているのなら結構驚く。

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