2008年11月26日水曜日

ジェロと小雪

この前の3連休、妻子が実家に帰ってしまった(トラブルではない。単なる帰省だ)ので、急に暇になった。せっかくの休日、デートをする相手もいないので、思いきって函館に行くことにした。

金曜の晩、深酒したツケで気持ち悪かったのだが、土曜の朝にだるい頭で確認したところ、飛行機もOK、泊まりたい宿もOKと実にスムーズにコトが運んだ。

不況のせいなのか、中途半端な季節のせいなのか、よく分からないが、連休の割には何の苦労もなく旅計画が整った。

突然行くからには、勝手知ったる場所がいいので、函館にした。やはり函館は近い。午前11時に家を出て、午後2時半には湯の川温泉でマッタリしていた。この日、都内から伊豆あたりに出かけた知人は、朝出発したのに到着は夕方だったらしい。やはり函館は穴場だ。

滞在は「湯の川プリンスホテル渚亭」。何度も泊まっている温泉大浴場が素晴らしい宿だ。通されたのはツインの洋室。ひとり旅なので不便はない。

露天風呂付きの部屋も空きがあったそうだが、一人旅サウニストの私としては、いちゃつく相手もいないのに部屋に露天風呂は不要だ。ツインの部屋でOK。

サウナで熱くなって、火照った身体を水風呂ではなく、露天風呂脇のスペースで寒風にさらしながら冷ましたい私としては、この宿では大浴場が一番魅力的なスペース。

連休中とはいえ、大浴場もガランとしている。ここの露天風呂は、まさに海っぺりの浜辺の上に設置されている。抜群の立地。

目の前には冬の海が広がる。浜辺には無数のカモメ。羽を休めていたり、あの旅愁を誘う鳴き声を聴かせながら飛び立っていったり、実に雰囲気がある。ときたま波のバサーンという音も加わって、演歌を唸りたくなるロケーションだ。

温泉宿とはいえ、夕食無しの設定で泊まれたので、サウナと温泉で生き返ったあとは、恒例の珍味系魚介攻めに街に出かける。

数え切れないくらい函館で寿司屋めぐりをしている私だが、毎回、知らない店を探検したくなる。間違いなく美味しい店もいくつか知っているのに、余計な探検をして失敗することもある。今回は失敗パターンにはまった。

湯の川から五稜郭方面に行く途中に、以前からいくつか目についていたお鮨屋さんがあった。そのうちの一件に突入してみる。店の名誉のために店名はあえて避けよう。

がらっと扉を開けると、まだ早い時間だっただけに大将が座って新聞を読んでいる。客は誰もいない。ちょっとヤバいか・・?バッくれるか・・?。瞬時に脳裏にいろんなことがよぎったが、大将がいい感じに歓待モードに入ってしまった。とりあえず、席に着く。

ネタケースに魚がまばらだ。ヤバイと思ったものの、すでにビールを頼んでしまった。手遅れだ。ボタンエビとサーモンをつまみで頼んだ。さすがに函館、モノ自体は悪くないが、いきなりニセワサビだ。完全に失敗を自覚する。ここからは、いかに手っ取り早く撤退するかを考える。

ところが、この店の大将がいい人で、ついつい世間話に花が咲く。私もいい人なのだろう。ちょっと楽しい。つい半月ほど前に今話題の黒人演歌歌手ジェロが来店したらしく、そんな話題で時間が過ぎる。

ホッキ貝をつまみで頼む。大ぶりな貝をさばいて丸ごと一個分出された。ボリュームがある。まだ撤収不能だ。

焼酎の水割りでも呑んで、つないでおこうとしたものの、日本酒しか置いていない。仕方なく生酒を頼む。結構な量の冷酒が来てしまった。飲み干すまでは撤収不能だ。

スジコをつまみで頼む。なんかフツーに呑み助モードに入ってしまった。でもさすがに、この店でせっかくの夜を過ごすのも辛い。握りはほとんど食べずに、「ようやく夜も本番の時間なので、名残惜しいけど、繁華街に行ってみます」と可愛い言い訳を残して、ようやく撤収。タクシーで五稜郭方面に向かう。

ちなみに次の日は間違いのない寿司屋に行くため、抜群の安定感を誇る湯の川にある「雷門鮨」に行った。そちらに最近訪ねてきたのは女優の小雪だったそうだ。

ジェロが来た店と小雪が来た店。なんともお店の雰囲気と食材の違いを端的に表わしているみたいでおかしかった。

五稜郭エリアでは、前回来たときに旨かった「鮨かわむら」を覗く。なんと満席で入れず。さっきの店に寄らずに最初からこっちに来ていれば今頃、カニの内子あたりを肴に上機嫌のはずが、寒風に吹かれながら途方に暮れる。

さすがに寒い。他にも心当たりの寿司屋はあるが、ちょっと距離がある。考えた末に近場の居酒屋「開陽亭」に落ち着くことにする。

観光客にもお馴染みの店だが、メニューが豊富で生け簀で泳ぐカニやイカを常備しているため、使い勝手はいい。茹でたての毛ガニを食べることにする。

水槽から取り出され、茹でられるのを待つ間、ウニとイカの沖漬けを頼む。しみじみ旨い。せっかく寿司屋じゃない店に来たのだから変なものも頼もうとエゾジカのタタキを注文する。

結構旨い。ポン酢で味わうと臭みもまったくなく、魚介攻めの合間のいいアクセントになる。こういう変なものも旅の楽しみのひとつだ。

毛ガニがやってきた。あまり大きいサイズではないが、一人でホジホジするには小ぶりなほうが有難い。ひとりじめ出来るんだから小さくても満足感は充分。肝心のカニミソもあって、実に幸せな時間。芋焼酎のお湯割りがぐいぐい進む。

シメにいくら丼とかウニ丼でも食べようかと考えていたが、路線変更。温かい塩ラーメンに決定。開陽亭を出て、ぶらぶら。でもすぐに寒さで酔いも覚めて冷えてしまった。おまけに雨も降ってきた。運良く近くに「あじさい」というラーメン屋を発見。

ラーメンに四の五の言うこだわりはない私は、清潔で鬼混みしていなければどこでもOK。チャーシュー塩ラーメンを頼む。あっさりしていて普通に美味しい。満足。
結局3件かけて晩酌が終了する。富豪みたいだ。

宿に帰って、再び温泉へ。相変わらず人が少ない。身を切るような寒さのせいで露天風呂は貸切状態。ここの露天風呂は夜になると浜辺を強い明かりで照らすので、夜の闇の中でも海を間近に感じられて快適。遠く水平線には、イカ釣り漁船の漁火が海を照らしている。なんともいい雰囲気だ。酔いにまかせてジェロの歌を口ずさもうとしたが、どんな歌を歌っているのか知らない。

結局、「津軽海峡冬景色」をうなる。貸切状態の露天風呂で調子に乗っていたのだが、上階にある女性用露天風呂に聞こえたらしく、まばらな拍手をもらった。かなり恥ずかしい。

続きは明日。

0 件のコメント: