2011年9月9日金曜日

ノックアウト





最近、くだらない画像を見て夜中に一人で笑っている。すっかり変な人みたいだ。精神状態が不安定なのだろうか。

それにしても、この手の画像を大真面目に作成している人は心底エラいと思う。私が書いているブログよりも間違いなく世のため人のためになっている。

という話は今日のテーマと一切関係がない。強いて言えば、「ノックアウト」つながりだろうか。

これらの変な画像は私を日々ノックアウトしてくれるのだが、先日食べた「日本の洋食」に久しぶりにノックアウトされた。

われながら強引な話の運び方だ・・・。

日本の洋食といえば、オムライス、ハヤシライス、クリームコロッケなどのデブ垂涎・ヨダレもののウマいものが揃っているので、時に無性に食べたくなる。

バツグンにウマい割には、気のせいか、世間一般における地位はビミョーなポジションといえる。

大事な商談とか接待場所にその手の店が選ばれることはない。さあ今夜は一発決めるぜ!って息巻いているカップルがデート場所に選ぶことも無さそうだ。

良く分からない味の窮屈なフレンチとか、とんがったイタリアンとかのほうが、エロ系前夜祭的晩餐の場所として選ばれがちだ。

ガハハハ言いながら、「ひとつよしなに」とか「おぬしもワルやのう」という会話も、畳の上でふすまに囲まれて展開される。

男女のラブラブミーティング、オッサン達のワルワルミーティングのいずれも「カニクリームコロッケ」とか、「トロトロオムライス」だと収まりが悪いのだろう。

もったいない話だ。

先日、根岸にある「香味屋」に行った。いわずと知れた日本の洋食の老舗だ。死んだ祖父がこの店のファンだったらしいが、私自身は初訪問。

根岸に行く用事もないし、食事のためにわざわざ縁のない場所に出向くような食通でもない。祖父の好物だった「ビフカツ」の存在は気になっていたが、未体験ゾーンだった。

ニッポンの洋食的な気分の場合、麻布の「グリル満天星」とか、日本橋の「たいめいけん」あたりに行くことは何度もあった。それなりにウマい。他にも浅草あたりでも何軒も洋食屋さんに出かけ、それなりに満足していた。

とはいえ、昔、味わったような「ノックアウトされるような感動」が無かったのも事実だ。変な話、自分の舌が肥えてきちゃったのかと図々しく解釈していたのだが、今回、香味屋に出かけて久しぶりに「ノックアウト」された。

いやあ、ウマかった。あくまで個人的な主観だが、官能的、感動的だった。私が認識していた「ニッポンの洋食」という概念が根っこからひっくり返るぐらいだった。

どんなシチュエーションのどんな客の舌だって満足させそうな感じ。でも、さっき書いた「ラブラブミーティング」とか「ワルワルミーティング」には、やっぱり使って欲しくない。

邪念とともに味わうにはもったいない。ジンワリじっくり味わいたい。黙ってニンマリしながら食べ続けたい感じ。

ラブラブな男女の場合には、何度も肉体関係を交わした段階のカップルなら良いが、ハラハラドキドキしてる段階の奴らは、行っちゃダメだと思う。凄い暴論だ・・・。




上から順にエスカルゴ、カニコロッケ(小サイズ)、タンシチューだ。デミグラスソース万歳だ。コロッケに付いてきたタルタルソーズもマンセー!!

得体の知れない料理だったはずの西洋料理を日本人がウットリする作品にアレンジしちゃうわが国近代黎明期のコックさんの感性につくづく感心する。

絶品だったのはビーフカツレツ。ビフカツだ。ステーキを蔑視するつもりはないが、単なるステーキとは味の複雑さ加減が段違いだ。

料理なんてものは、良い素材になるべく手を加えずに調理するのが最高だと信じて疑わない私だが、こればかりは白旗をあげたい。


ステーキ肉に衣を軽く付けたうえで、焼き加減を自由自在に操り、特製デミソースで食べる。活字にすると、まどろっこしい感じだが、まさに絶品。バンザイ三唱だ。

80歳で亡くなるまで肉好きだった祖父が愛したのも当然だろう。浅草生まれのモボだったわけだから、この味にはノックアウトされたはずだ。

まさに文明開化、近代化の味がした。

食べ物ひとつでいろんなことを感じた。ウマいものを食べることは、やはり人間の心を豊かにする崇高な行為だ。ちょっと大袈裟か。

ひょんなことで祖父の思い出も甦ったから実に有意義な食事だった。いつか、このビフカツを墓前に供えてみたいと本気で思った。どうせなら出来たてアツアツを持っていけたら素敵だ。

そういう突飛なことを考えてばかりいる日々だ。

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