2012年9月21日金曜日

最強のふたり

先日、時間があったのでふらっと映画を見に行った。さほど期待もせずに選んだのだが、最高に面白かった。大げさに言えば今まで見た映画の中でもトップレベルだと思う。

その映画は「最強のふたり」。フランス映画なのだが、アンニュイな?感じではなく、単純明快に楽しくホロリとさせる作品だった。

フランスでは国民の3人に1人が見た程の大ヒットを記録したそうで、ハリウッドもリメイクを決めたとか。

簡単にあらすじを紹介する。何かのサイトからパクってきた文章です。


●事故で全身麻痺となり車いす生活を送る富豪フィリップは、介護士面接にやってきて、開口一番「不採用のサインをくれ」と切りだした場違いな黒人青年ドリス(オマール・シー)に興味を持った。

他人の同情にウンザリしていたフィリップは、不採用の証明書でもらえる失業手当が目当てというフザケた態度のドリスを採用する。そこから始まった異文化ふたりのセット生活。

クラシックとソウル、高級スーツとスウェット、文学的な会話と下ネタ――。全てにわたりふたりの世界は衝突し続けるが、やがて互いを受け入れ、とんでもなくユーモアに富んだ友情が生まれ始める。その友情は周りの人々、さらには彼ら自身の運命をも変えていく。

背負った障害はブラックジョークで笑いとばし、それまでは思いつきもしなかった、新しい挑戦に満ちた日々に繰り出して行くふたり・・・・。


というストーリーだ。



フランス映画だし、出てくる俳優の顔も誰も知らない。主演の二人はもちろん、脇役陣も実にいい味を出していた。階級差が厳然と存在するフランス社会の風刺もたっぷりで見応え抜群だった。

実話をもとにしたストーリーだとか。なかなか考えさせられる。

人との関わり、人との相性、ちょっとした接点が、凝り固まっていた思い込みや感性をも大きく変えることがあるのだなあと感心した。

物凄く気分が良くなる映画なので、わざわざ見る価値はあると思う。

最近、CG全盛でドンパチピカドンガッチャガチャみたいな映画が多いが、個人的にはあまり騒々しい映画は好みではない。

じっくり、かつ、さほど重くない範囲で人間模様を描いたような映画が好きだ。漫画でいえば「黄昏流星群」とか「人間交差点」とか、その手の余韻系?に惹かれる。例えが変でスイマセン。

昨年公開された岸谷吾郎主演の「夜明けの街で」という作品も、そんな感じだろうと思って見たのだが、とんでもなく恐ろしい人間の葛藤を描いていた。今だにふと思い出しちゃうぐらい怖さのインパクトが強かった。

話がそれた。

映画の話を書いては見たが、映画鑑賞が趣味ですと言えるほどのレベルではない。もっと無理して時間を作ってでも見に行くべきだが、駄作にあたるとその後しばらくは映画熱が冷めてしまう。

読書と同じで良質な映画をたくさん見れば、何気なく自分の糧になるはずだから、もっと意識して映画館通いをしたいと思う。

私の場合、映画といえば「寅さん」である。ここでドン引きしてはいけない。1作1作を見れば、お気楽大衆娯楽作品ではあるが、あれだけ長期間にわたって醸成された独自の世界観は、単なる娯楽作品を超えた「宇宙」を持っている。

大げさでスイマセン。

48作すべて見ることで、登場人物の歴史も刻まれていく。小さな子どもだった寅の甥っ子の「満男」も思春期、青年期を迎え社会の厄介さを身をもって知ることになるし、「さくら」のダンナである「博」にしても、血気盛んな職人から経営に悩む管理職になる過程では独立騒動も起したり、いろいろ大変だ。

変わらないのは「寅次郎」だけである。ここがミソだ。あっちフラフラこっちフラフラ、悩み多きふりもしてはいるものの、結局はフーテン暮らし。

観客はそれぞれの立場で映画に感情移入する。オイちゃんだったり、おばちゃんだったり、さくらやタコ社長だったり、それぞれの役柄に自分を当てはめながら笑ったり泣いたりする。

もちろん、戦後の社会を真面目に生きてきた日本人だから「寅」に自分を置き換えて感情移入する人はいない。みんなが「寅」を困った身内だと思っている。でも愛している。

さすがに勝手気ままな生き方を誉めるわけにも行かないし、叱責する側という立ち位置は変えられない。でも青臭い「満男」は純粋に寅オジサンに憧れを抱いたりする。

結局、誰もが本音の部分では、寅みたいに勝手気ままに生きて、出来るものならフーテン生活だってしてみたいわけだ。

私が寅さんシリーズにはまったのは30歳を過ぎてからだ。きっと、フーテン暮らしへの漠たる憧れが芽生え始めた頃なのだろう。

柴又の寅さん記念館に行った時は、出題された寅さんクイズは全問正解だったし、渥美清さんが亡くなった頃に発行された関連出版物も山ほど購入した。

これを書いているだけでまた初期寅さんあたりが見たくなってきた。

ちなみに、渥美清さんが亡くなった時に政府から国民栄誉賞が贈られた。至極当然である。でもその裏には隠れたエピソードもあった。

まだ渥美さんが元気だった頃、いつだかの政権が国民の人気取りのために国民栄誉賞の贈呈を検討したことがあったそうだ。

その時は結局見送られたのだが、その理由は「国民にフーテン暮らしを奨励することになる」というものだったらしい。

政治家とか役人の頭の固さというか、幼稚さ、おバカぶりには心底あきれる話だ。

国民の息抜きに大いに貢献した寅さんをそういう見方で評価していたとは情けない話である。

なんか話がとっちらかってしまった。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

富豪記者様

ずっと気になっていた映画なので、是非観てみようと思います!!

富豪記者 さんのコメント...

玉さま

この手の映画にありがちな、あざとさやわざとらしさが無いので、見ていて心地よくなる作品でした。