2014年3月28日金曜日

カラオケの格差


結構長々と生きてきた中で、大きく変わった「文化」といえばカラオケだろう。

どの街を歩いていても「カラオケ」の看板が溢れている。何気なく見ているが20年、30年前には無かった光景だ。

カラオケボックスという業態が普及したのは1980年半ばだとか。私の学生時代には今のようにカラオケが遊びの中心になることはなかった。

高校生、大学生ぐらいの頃、カラオケと言えば、オッサン達がスナックで演歌やムード歌謡をがなりたてるイメージだった。

大げさサイズの機械に変なサイズのカセットテープを差し込んで、1曲いくらみたいなスタイルだった。

通信カラオケなんて当然無かったから、選曲できる歌は限られていて、若者とは無縁の世界が繰り広げられていた。

ここ20年ぐらいの間にカラオケボックスが一気に普及したことで、日本人が「歌う環境」は劇的に変化したと思う。

「歌がうまい人」は、その昔だったら貴重な存在だったが、いまや「ヘタな人」に遭遇するのが珍しいぐらい、誰もが上手に熱唱している。

音楽業界でカラオケを意識した楽曲作りが一般化したことも影響しているのだろう。美空ひばりに代表される昔の大物歌手の歌などは、カラオケで簡単に歌えるほどヤワくない。

そんなことはともかく、カラオケボックスという世界にも格差がしっかり確立されていることが興味深い。

安さだけで勝負する店がある一方で、おったまげるほど高い料金のボックスもある。

以前、金曜深夜には料金がバカ高くなることで知られる銀座のカラオケボックスに友人数名と出かけた。当然ワリカンのつもりで騒いでいたのに、ある友人が気前良く会計を済ませに行った。

戻ってきたヤツの顔は明らかにひきつっていた。多分、4~5人で2時間ぐらい過ごしただけで、軽く5万円以上かかったのだろう。

恐るべしである。

私も「富豪」を目指す以上、そうした高級カラオケボックスには仕方なく?出かける。

最初から覚悟を決めているから卒倒しないが、アノ値段には少したじろぐ。

でも、満室になっていることは少ないし、ツマミや料理はそこらの安い飲み屋より遙かにマトモだし、それなりに高級感のある空間でゆったり過ごせるのも確かだ。

条例とか法律でダメなはずなのにそうしたボックスはドアに窓もなく、外から中の様子が見えない作りになっていることが多い。

非常にエロである。間違いなくエロ目的でこもる人も大勢いるのだろう。事実、深夜にトンデモない展開になって、トンデモない経験をした綺麗ドコロの体験談を何度か聞いたことがある。

私自身、顔なじみの店員から「入るなと言われれば入りませんから」と余計なことをコッソリ囁かれて焦ったことがある。

もっと正直に言えば、その手のカラオケボックスでオネエサンから色仕掛け営業を仕掛けられてギンギンに?困ったこともある。あれにはビビった。

ああいう場所で女性が握っていいのはマイクだけである・・・。肉弾攻勢で余計なことをされると歌声が吐息に変わりそうで迷惑である。

おっと、脱線してしまった。

話を戻す。

こう見えて私はバンドのボーカルが本業?である。ライブ直前には練習のために「一人カラオケ」も経験した。最初は勇気が必要だったが、入ってしまえば熱唱モードである。

酒も飲めるし、気兼ねもいらないし、練習にはもってこいである。でも、調子に乗って、ライブとは関係のない演歌とかをうなり始めてしまったのは御愛敬である。

その時使ったのは、価格競争が激しい大型チェーン店のボックス。当然値段も安い。それこそ、銀座あたりの高級店に比べれば10分の1ぐらいの値段である。

考えてみれば凄い価格差だ。歌を歌うだけだと割り切れば高級店の価格は理解不能である。でも、雰囲気やユッタリ感、食べ物の質、そのほかのエロ、いやイロイロを考えれば高級路線の存在は大いに意味があるのだろう。

高い安いは総体的なものだから、何と比べるかによって納得の度合いも変わる。カラオケボックスの大衆店と比べるから頭が混乱するわけで、気取ったバーのカウンターで肩こりながら過ごす時の値段と比べれば、高級ボックスの値段も仕方ないのだろう。

先日、魔都・新宿にいた時、そこそこ高級路線のカラオケボックスに行こうと、六本木や銀座にも店舗があるゴージャス系の店に行ってみた。

ところが満席。景気が回復してきたのか、私が新宿という街を見くびっていたのか、予約がなきゃまるでダメみたいな空気だった。

あきらめて、程近い場所の「少しだけ高級っぽい路線」の店に向かう。そこも満杯だった。新宿恐るべし、いや、日本経済恐るべしの状況になりつつあるのだろうか。

途方に暮れていた時、ふと異次元?のカラオケボックスがあったことを思い出した。

その正体は京王プラザホテルの最上階にある店。47階からの夜景がウリで、一応ホテル直営なので、いわばゴージャス系である。

実際はそんなに高級感バリバリではなく、そこそこ落ち着いている程度の店だ。それでも、あんな景色を眺められるカラオケボックスは珍しいだろう。

4部屋か5部屋しかないのだが、お客さんが入っていたのは1部屋だけ。余裕で広めの部屋に案内された。

楽しく騒いだ。お会計にもたじろいだ。さすがホテル価格である。ガラガラだったのも納得である。きっと社用族、接待目的以外で利用する人はいないのだろう。

でも、穴場であることは確かだ。心地良いひとときを過ごせた。

日本経済が本当に上昇局面にあるのなら、今後は高級志向のカラオケボックスがどんどん進化していくように思う。

そうなれば楽しいことだが、それに伴ってこっちの財布もますます危機的状況になるのだろう。

痛し痒しである。

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