飛行機で移動しても文字通りアッという間である。でも不思議なもので、パリから1時間ちょっと飛んでイタリアに着いた途端、漂う空気が一気にイタリア~ンになるから面白い。
人々の顔付き、身振り手振りで話す大げさな声の出し方、まるで違う。足立区と北区では何も変わらないのにヨーロッパだとちょっと移動するだけで随分変わる。
パリで靴ばかり漁っていてもバカっぽいので、旅の後半はコメと麺の国・イタリアを訪ねることにした。
パリに1週間滞在して「ボンジュール」の発音が上達したのに、イタリアでは「ボンジョルノ」である。
パリにいると「ちゃんとしないといけない」的な空気が漂うが、イタリアに行くと妙にアッケラカンと楽しい気分になる。
普段、カタブツで哲学的で冗談も言わずに寡黙に人の道を追及している私としては、フランスやドイツとかの「ちゃんとした感じ」が合うはずである。
でも、なぜだか、イタリアとかスペインといったユル~い雰囲気の場所に行くと妙に落ち着く。途端にフニャフニャした顔になって鼻歌が出てくる。
ナゾである。
当初はヴェローナに行く計画を立てていた。1千年前の円形競技場を舞台にした野外オペラが夏の名物だという。
ガラにもなく「アイーダ」でも楽しんでこようと思っていたが、のろのろ手配しているうちに、ヴェローナの主なホテルはほぼ満室になってしまった。
空いているホテルも普段の倍ぐらいの価格設定である。パリに比べて経済的なイタリアなのにそんなのゴメンだ。
で、旅行に出発する数日前に急きょ行先変更を決意した。パリからイタリアに入る飛行機は変更可能なチケットを手配していた。そのおかげで少しの追加料金を払えば、国際空港のあるイタリアの都市ならどこにでも行ける。
パリが大都会だから少し鄙びた場所に行こうとジェノバを選んだ。予備知識はあまりない。サッカー業界のオッサンの星であるカズが、イタリアのプロリーグに移籍したのがジェノバのチームだったぐらいで、他は何も知らなかった。
この画像はブリストルパレスという老舗ホテル。なかなかカッチョよく、かつ快適だったにもかかわらず、パリのホテルに比べれば遙かに安かった。
さて、ジェノバ。行ってみたら思った以上の大都会だった。地下鉄まで走っている規模だ。重厚な建物がたくさん並ぶ落ち着いた面と港町特有の怪しげな空気が混在した興味深い場所だった。
でも、結果的にここを選んで大正解だった。ジェノバから程近い海沿いの街や村をぶらぶらして命の洗濯が出来た。
昨年、イタリアのボローニャで本場のボロネーゼパスタをたらふく食べたから、ジェノバではジェノベーゼ攻めである。これも大事な旅の課題である。
ジェノバといえばジェノベーゼ。緑のヤツである。これをしこたま食べることも今回の目的だ。
本当はシーフード系のパスタをアレコレ食べたいのだが、求道者としてはジェノベーゼを毎度毎度食べないと気が済まない。
このあたりのヘンテコなこだわりが時に私の人生を面倒くさい状況に追い込む。困ったものだ。
着いた日の夜、さっそくベイエリアの洒落た場所の洒落たカフェレストランに行く。
食べてみた。マズい。味が無い。仕方なく粉チースをふりかけまくって食べてみた。
マズい。粉チーズぐらいでは修正は効かなかった。大ショックな一夜だった。
その後、絶品ジェノベーゼにありつけたから良かったものの、こんなヘンテコな料理を出していては絶対にダメである。
その翌日、別な店でジェノベーゼを注文。ここはマトモだった。前日がヒドかったので判定は甘めだが、まず何よりも色合いが真っ当である。
ボローニャのボロネーゼが幅広麺のタリアテッレだけで食べられているのと同様、パスタの種類とソースの組み合わせには結構イタリア人の頑固さが垣間見える。
日本人のように何でもかんでも好きなパスタと合わせちゃう柔軟性のほうが私としては有り難い。
それはさておき、ジェノベーゼに粉チーズをしっかり振り掛けて白ワインと一緒に楽しむと至福の極みである。わざわざ訪ねてきて良かったとつくづく感じる瞬間である。
この翌日、もっとウマい絶品ジェノベーゼに遭遇した話は、また改めて書きます。
ジェノバの市街をあてもなく散策する。華やかなベイエリアゾーンの他、中世貴族の宮殿ストリートなどもあって飽きない。旧港付近は薄暗い路地も多く、いい感じにビビったりできる。
夕方、このあたりをブラついていると映画・ゴッドファーザーのテーマ曲が流れてきそうな感じだった。
実際にはメロディを思い出せなくて、結局「仁義なき戦い」のテーマ曲が頭の中で響いていた。意味不明である。
大都会とはいえ、世界的にメジャーな大観光地とは違うので外貨両替の業者が見つからないなど不便な点もある。
しかし、その分、駅が大混雑していないせいで近郊への電車移動にストレスを感じないメリットもあった。
いままで何度かイタリアに出かけたが、電車の切符を買った経験は無かった。その昔、特急の切符を買いに行った連れがバスのチケットを手に戻ってきたことがある。そのせいで、イタリアの切符は簡単に買えないと思い込んでいた。
今では英語にも対応する自動券売機が普及しているため、思った以上に簡単に切符は購入可能だ
地元客や観光客でごった返している巨大都市の駅だと、後ろに並んでいる人が気になって機械を前にしてもオタオタしそうだが、マイナーな都市ではそんな心配はない。
おまけに不思議なことに地元の人や西洋人旅行者の皆様は、なぜか自動券売機を使わずにわざわざ駅の有人窓口に長蛇の列を作っている。
自動券売機は常にガラガラ。私のような語学がダメな人間でもじっくりガイドブック片手に使い方をチェックしているうちに、いつのまにか縦横無尽に切符を買うことが出来るようになった。
この画像はジェノバのメイン駅の様子。連日私が出没した場所だ。立派な駅舎だが、どこかのどかで必要以上に緊張を強いられることもない。
ここを足場にサンタ・マルゲリータ・リグレやポルトフィーノといったイタリア有数のリゾートに出かけた。別な日は険しい海岸に色とりどりの家屋が並ぶ景観で世界遺産になったチンクエ・テッレにも気軽に足を運んだ。
実は、ジェノバ行きを決めた際には、それらリヴィエラ海岸と呼ばれるエリアまで出かけるつもりはなかった。ホゲホゲとジェノバを歩いていようと思っていた。
でも、ジェノバがボーっと休息するような雰囲気の場所ではなかったので考えを改めた。
思った以上に切符は簡単に買えるし、スマホで情報は入手できるし、テキパキと動き回ってみた。結果オーライである。池袋から銀座に行くようなノリで世界的なリゾートや世界遺産を散策できた。
そのあたりの顛末は次回に書きます。
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