2017年11月24日金曜日

ふるさと納税 ヘンテコだけど


もう今年も最終コーナーである。あと1ヵ月もすれば年末だ。ビックリだ。

というわけで、例の「ふるさと納税」も今年分は締め切りが近づいている。いまいち分からん、メンドーだという理由で未体験の人も多いが、実にもったいない話だ。

次の税制改正では、またぞろ中堅高所得者層への増税が行われる見込みだ。一定収入を超える人の給与所得控除が締め付けられるからホワイトカラーにとっては痛手だ。

ふるさと納税を増税の「意趣返し」ために利用する人が増えることは確かだろう。収入が多ければ、ふるさと納税の「枠」も大きい。税金でイジメられた分を税金で取り戻すような感覚だろうか。

ふるさと納税は、ごく平たく言えば、その人の収入に応じた枠内であれば、わずか2千円の“手数料”だけで寄付した金額がそのまま本来自分が納めるべき税額から差し引かれる仕組み。

寄付する以上、先に出費はするものの、最終的に自分が納める税金と相殺されるわけだから「損」になるのは2千円だけ。

家族の人数によっても変わるが、年収2千万円で50万円、3千万の収入なら100万円程度が「枠の上限」になる。

寄付する自治体の数に制限はない。年収3千万の人が一つの自治体に100万の寄付をしてもいいし、1万円ずつ100カ所に寄付してもOK。

寄付された自治体による返礼品競争が過熱しているが、一般的には寄付額の3~4割相当の価値の品物が送られてくる。

総務省が今年の春に「返礼品の価格は寄付額の3割程度にすべし」と実にお節介かつ地方自治を無視した通知を出したせいで、一時期は各地で返礼品の見直しが行われた。

その後、内閣改造で新しく就任した総務大臣が、お上による規制に否定的な姿勢を見せたことで、自治体の中には高額返礼品を復活させたところもある。

年収3千万の人が寄付額に対して3~4割の価値の返礼品をもらったら30~40万円の経済的利益を得ることになるわけだ。増税された意趣返しとして考える人が増えるのは当然だろう。


私自身、今年はすでに30を超える自治体に寄付を行った。ちょろちょろした金額の寄付ばかりだから総額は大した金額ではない。

ふるさとでもないし、縁もゆかりも思い入れも無い自治体相手だから「ふるさと納税をした」という感覚はない。あくまで返礼品目的の寄付だ。

まあ、こんなヘンテコな話が罷り通ること自体が制度の問題点でもあるのだろう。私の場合も、寄付金受領書を見直してみても、町村名が読めない自治体すらある。

おまけに返礼品として何をもらったのかも覚えていない。いわば、ネット上の物産店で欲しいものを選んで、料金(寄付額)をクレジットカード決済したという感覚だ。

わが家にあるコメ、酒、魚介類、冷凍牛丼からレトルトカレーに至るまで、日本中の自治体から届いた返礼品だ。昨年はスーツのお仕立て券をもらって夏物のスーツを事実上タダで作ったりもした。

税という制度そのもの理念や哲学とは程遠い、実に俗っぽい思惑ばかりで人気を集めているのが実情だ。

税金を扱う媒体に携わる仕事を始めて30年になるが、ジャーナリズム的視点で見れば、つくづくヘンテコな制度だと思う。

まあ、悪法も法なりである。それが自分の利益につながるから安易に活用させてもらっている。

ちなみに、東京都文京区がふるさと納税の在り方に一石を投じようと始めた取り組みを紹介したい。

区内の貧困家庭の子どもに食事を宅配する「こども宅食」という仕組みがそれ。

ふるさと納税で得た寄付は自治体が自由に使い道を決められる点に着目したものだ。

返礼品は無し。あくまでも「こども宅食」に対する協賛者の思いを全額サービスに回すという話だ。どことなくクラウドファンディングにも似ている。

自治体独自の特定の政策に絞って純粋に浄財を募るわけだから、本来の制度の趣旨に叶った取組みとも言える。

ただ、ふるさと納税の事実上の窓口になっているいくつかの民間運営サイトでは、どうしても特色のあるさまざまな返礼品を前面に押し出すため、返礼品なしで浄財を求める自治体の取組みは目立たないのが現状だ。

自治体の独自性とそれをアピールする発信力が無いと、百花繚乱の返礼品競争の中では埋没する。ちょっと残念だ。

蛇足ながら文京区の区長を務める男と私は幼稚園から高校まで一緒の学校に通った仲だ。今も時々顔を合わせる友人だからヨイショしているわけではない。

いや、それもちょっとある。

「こども宅食」は設定されていた寄付目標を早々にクリアして、締め切りまで1ヶ月以上ある中で合計1500人以上の人から目標の2倍ほどの浄財を集めている。

私のようなガメつい人間とは違う真っ当な人々が世の中には結構いるわけだ。

少しは見習おうと思う。

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