2018年4月23日月曜日

オトナ食いは復讐か


疲労回復、滋養強壮、免疫力アップ、美肌効果、冷え性予防、目の疲労対策、血液さらさら効果、、、。こんな素晴らしい効能を持つ食べ物がある。

ウニである。ウニ、恐るべしである。


子どもの頃はウニをそんなに美味しいとは思わなかった。近所の安いお寿司屋さんからの出前ぐらいしか経験がなかったから品質はイマイチだったのだろう。

なんとなく生臭いような苦いような印象だった。ウニが苦手という人がいるが、多くが子どもの頃に食べたイマイチシリーズのせいだと思う。

大人になるにつれ、食べられるウニがランクアップして、気付けば大好物になった。時には“オトナ買い”ならぬ“オトナ食い”に励む。


先日もお寿司屋さんでウニが4種類あったから、ムホムホした顔で食べ比べした。エゾバフン、キタムラサキの2種類がムホムホ気分になれるウニだが、生モノだから食べるたびに風味が異なるのも魅力だ。

塩で食べたら大したことなかったのに醬油で味わったら抜群というパターンもある。

握りで食べる際も、海苔ナシか海苔アリかで大きく味の印象が変わる。

掴み所がない感じが“魔性の女”みたいで堪らない。つい追いかけたくなる。


寿司飯にウニを混ぜ混ぜして焼きおにぎりを作ってもらうこともある。表面は少しカリっと香ばしく、ほぐした中味はウニ特有のネットリ感が残って、これまた魔性の味がする。

冒頭でウニの効能を紹介したが、一般的には「不健康なもの」とイメージされることが多い。尿酸値が上がっちゃう性質が原因だ。

まあ、そんなことに神経質になっても、毎日毎日大量にウニを頬張る人なんかいないから、良い部分を意識した方が建設的だ。

抗酸化作用がある、免疫力を高めるなどと聞けば、罪悪感なしに楽しめる。ちなみにプリン体はイクラの10倍らしい。そういうことは聞き流せばよい。


ちなみに縄文時代の遺跡からもウニの殻やトゲが出土しているんだとか。日本人は古くからウニを愛している証拠だ。平安貴族の間でも高級嗜好品として人気だったそうで、尿酸値ウンヌンなんて話はヤボなだけだ。

先日書いたウナギの話もそうだが、どうも私が得意になって“オトナ食い”するものは、若い時代への復讐みたいな感覚が影響しているのかもしれない。

お坊ちゃん育ちだから、有難いことに食べ物に困ったことはなかったが、ウナギやウニを口にする機会はあまり無かった。

やたらと肉食好きな家庭だったから、すき焼き、しゃぶしゃぶ、ステーキなどには恵まれたが、魚っぽいものが主役を張ることはなかった。

お寿司屋さんやウナギ屋さんに連れていってもらった記憶もあまりない。出前の安物ウニしかしらなかったのも当然だ。

大学生の頃、北海道を旅して回ったときにバカみたいにウマいウニに遭遇した。まさに「知ってしまった哀しみ」である。一気にウニの大ファンになった。

とはいえ、上モノのウニは高い。学生の身分ではムホムホ食べられなかった。その後、安い居酒屋なんかで板のままドカンとウニを出してくれるような店にも行った。

ドッサリとウニが目の前に出てくるとニッコニコになるのだが、北の大地で口にした上モノとはやはり違う。憧れは募り続けた。


社会人になっても、若い頃はお寿司屋さんのカウンターは緊張の場所だ。値段が恐怖だったし、ウニよりイカだった。

連れていった女子が平然と「ウニください」などとのたまったら殺意を覚えていた。そんなものである。

それから10年、20年が過ぎ、いつのまにかお寿司屋さんで緊張感も無くホゲホゲする中年になった。同時にウニウニモードが爆発するようになったわけだ。

イタイケな若者だった私が憧れたウマいウニである。ドッサリ食べたかったウニである。もっと感激して正座でもしながら味わうべきなのに、塩が合うだの醬油じゃなきゃダメなのウザいことを言うようになってしまった。

初心に返らないといけない。昔を思い出してもっとウヤウヤしく味わうように心がけよう。

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