2018年9月21日金曜日

「ふるさと納税」狂騒曲


ふるさと納税について、いわゆる豪華返礼品が規制されることになりそうだ。バカげた話だ。


自分が選んだ自治体に寄付した金額が、住んでいる自治体に納める税金から差し引かれるという画期的な制度が誕生して10年。返礼品をめぐる国と自治体のスッタモンダは続いてきた。

ごく簡単に言えば、総務省という“お上”が各自治体を“下々”と見下して、意に沿わないヤツはけしからんと騒いでいる話。

法律のどこをどう読んだって、豪華な返礼品はダメだとは書いていない。寄付額に応じた返礼品の還元率なども決められていない。

あくまで各自治体の裁量に委ねられているわけだが、現実にはほとんどの自治体が地方交付税のサジ加減を握っている総務省に従わざるを得ない状況になっている。

現在でも総務省による「要請」という形で返礼品には一定の基準みたいなものが存在する。

1, 寄付金額の3割以下の価値
2, 換金性の高い商品券などは不可
3, 地場産品に限る

これが金科玉条のようになっているが、あくまで「要請」に過ぎないから守っていない自治体も珍しくない。地方自治というからには当たり前だ。

今年7月、総務省は豪華返礼品が目に余るという理由で全国12自治体の名前を公表した。いわば懲罰的意味合いだが、皮肉なことに「けしからん自治体」が公表されたことで、逆にその自治体への寄付が増えたという。

結果的に自治体にとっては良い宣伝になったわけだ。

ちなみに、9月1日時点の総務省の調査結果では、返礼品の還元率が3割を超える自治体は246。総務省のホームページに掲載された調査結果の中で具体的に知ることが可能だ。

この“けしからん自治体”は、納税者から見れば良心的な自治体。これから年末にかけてふるさと納税を考える人は、大いに参考にすればいいと思う。

そもそも、ふるさと納税は、出身地への寄付だけでなく、地方活性化に貢献するための選択型の寄付税制だ。

地方へのカネの配分を官僚任せではなく、国民の選択に委ねるという趣旨も盛り込まれていた。

そんな経緯を忘れたかのように、想像以上に利用者が増えて困惑した“お上”が横やりを入れてきたという構図だ。

還元率3割という何の根拠もない数字を突然持ち出してきて、それを守らない自治体を意に沿わないからと言って叩く。

ウサン臭いのが、空気作りだ。お上の指針を守っていないことを、さも重罪のように印象付ける。ルールを守らない悪者のような風潮につなげようとしている。

厳密にいえばルールはない。各自治体が還元率8割、9割の御礼を用意してでも寄付を集めたいと思えば、その通りにさせればいい話。

寄付された額の1~2割しか残らなくても、集まれば凄い金額になる。何より1円も集められないことに比べれば物凄い成果だろう。そこが肝心だ。

還元率を3割にしたって、御礼の品が市販価格なのか卸値なのかでも変わるわけだし、一律に“お上”が決める必要はない。

換金性がダメだという理屈も意味不明だ。その地域限定のものなら大いに利用されるべきだし、そもそも今どきは何でもかんでもネットで売買されていることを思えば、余計な規制でしかない。

地場産品に限るという規制も、実に定義が曖昧。ゆかりがあるものなら何だっていいと思う。それこそ、ホントに地場産品が何もない自治体なら商品券などの「換金性のあるもの」を使わせてあげたほうがその自治体のためになる。

ちなみに、ふるさと納税が始まったことで、それ以前より災害被災地などへの寄付が着実に増えているそうだ。そうした寄付には返礼品は無い。他にも返礼品無しで特定のプロジェクトへの寄付をふるさと納税で募るケースもいくつもある。

要はいまでも充分きちんと機能しているということ。

一部の返礼品競争をことさら騒ぎ立て、制度自体の人気にブレーキをかけたいのが総務省の思惑だ。

自治体にカネを配る裁量こそが彼らの力の源泉だから、自治体が勝手に金を稼いで、それを勝手に使える仕組みが許せないわけだ。

制度が出来た時の原点は、純粋に地方を豊かにすることだった。あくまでそれを目指して各自治体が奮闘しているわけだから、グチャグチャ文句をつけるのはどうかと思う。

来年度税制改正で一定の見直しが行われるようだが、法案の最後にでも「総務省は口を挟まないこと」という文言を入れてみてはどうだろう。それが一番の地方活性化策かも知れない。

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