2018年10月19日金曜日

80歳の母親


80歳は傘寿だ。傘の見た目が末広がりで縁起が良いという由来もあるらしい。母親が先日80歳になった。めでたいことである。

母親が80歳ということは、私もかなりのオジサマだという現実に打ちのめされているが、早いうちに親御さんを亡くしている人に比べれば幸せなことだ。

80歳の誕生日を迎える本人はもちろんだが、それを祝える側こそ実はめでたいのかもしれない。祝える相手が元気でいてくれることは喜ばしい。



六本木のイタリアンで私の兄家族らとともに祝宴。さすがに昔より少食になった母親もワシワシ食べていた。

自分が子どもを持つ身になって、親の有り難さを痛感するようになった。と同時に、いくつになっても親は親のままだ。すなわち、わが子のことを些細なことまで気にかける。

きっと私も娘が嫁に行こうがオバサンになろうが今と同じように心配するのだろう。社会ってそんな連鎖で回っている。

次男として甘やかされて育った私は、そんなに不良ではないが、間違っても優等生ではなかった。母親は何百、何千、何万もの心配をしてきたことだろう。

小さい頃から勉強はしない、家の手伝いもしない、早くから酒やタバコは覚える。学校ではいつも立たされるようなバカだった。母親としては気が休まらなかったはずだ。

中学3年の時、悪友の家に泊まりに行くといって夜遊びに励んでいたら、深夜の六本木交差点で“拿捕”されたこともあった。長い時間、わが子が通りかかるのを見張っていたようだ。

母親としては日々メンドーだったと思う。ある時は深夜にこっそり帰ったら、鬼の形相で包丁を突きつけられたこともある。

1年生の一学期で重めの停学処分を食らったせいで、“退学リーチ”の状態だった高校時代。ただでさえヒヤヒヤものなのに、悪い輩から自宅に襲撃予告を受けたり、なんとなくワサワサしながら過ごしていたから、きっと卒業するまで心配が絶えなかっただろう。

大学生になったら旅ばかりしていたから、それはそれで心配された。今の私は娘が学校の合宿に行くだけでやたらと心配する。

それを思うと、しょっちゅうパプアニューギニアみたいな南方の島々に出かけていた息子のことを母親はどれほど心配したのだろう。

そういえば、変な女性に引っかかって、自宅にかかってきた脅迫めいた電話を母親が負けずに撃退したこともあった。どんな気持ちだったのだろう。

社会人になってからも、やれクルマの運転に注意しろ、深酒するな、タバコを吸い過ぎだ、真面目に貯金しろ等々、小言は続く。

無事に私が結婚しても結局は離婚しちゃって、これまた母親の心痛を招く。こう書いてみると、「親の心、子知らず」を体現してきたような半世紀だったかもしれない。

今はただ恥ずかしき日々の数々を反省している。なんだか寅さんの言いぐさみたいである。さすがにこれからは敬老精神を旨に接しないといけない。

殊勝な気持ちでいろいろ書いてはみたが、敬老精神の実践はなかなか難しい。今でもエラそうな態度を取ったり、憎まれ口もたたいてしまう。

人として成熟していない証だ。ちょっと恥ずかしい。子としての甘えではあるが、50歳を過ぎた男が80歳の親に対してすることではない。

相手が元気だとこっちもついつい図に乗る。時々、ハッと気付いて心の中で反省をする。そんな繰り返しである。

敬老精神に反した態度を取ってしまうことは、子どもはいつまでも子どもという意味でもあるが、一抹の寂しさのような感情も一因だと思う。

つまり、幼い頃は自分を守り育て絶対的な存在だった親が衰えていくことへのやるせない気持ちが、つい自分をイラつかせてしまう。

親が老いていくことへのジレンマみたいなものだ。まだまだ老け込んで欲しくないという気持ちが空回りして少しキツい物言いにつながる。それもまた子の身勝手さであり甘えなんだろう。

母親とは時々、二人で食事に出かける。楽しくニコヤカに過ごしていても、時にトンチンカンなことを言われてイラっとしたりムカつく。

そういう時に自分の気持ちを収めるのに有効なのが、母親があの世に行っちゃうことを想像することだ。

不謹慎だと一蹴されそうだが、親に対して私と似たような感覚を持っている人なら試してみる価値はある。

当然の順番として親は先に死ぬ。分かっていても親が元気なうちは、そんなことはリアルに想像したくないものだ。そこをあえて想像してみる。

「死んじゃったら話も出来ない、死んじゃったら小言も懐かしくなる。もっと優しくすれば良かったと後悔するはずだ」。

縁起でもない想像だが、ひとときでもそう思うことで自分の心が温和になるなら悪い手ではない。ヘンテコな思考法かも知れないが、そうでもしないと、子としての甘えが消えない。

母親は時々、このブログを読んでいるようなので、あまりグダグダ書いているとぶっ飛ばされそうだから適当にしておく。

ちなみに、先日、同級生十数名の飲み会があった。ほぼ全員の父親が既に亡くなっているのに対し、母親は皆さん揃いも揃って元気だとか。

男としてビミョーな気分だが、実にめでたいことである。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

富豪様
いつも楽しく、かつ勉強させていただいております。
今回は私自身の現状に対し
とてもタイムリーでためになりました。
特に
親に対してキツクあたるのは甘えである、
もっと優しくすればよかったと後悔する、
は、刺さりました。
ありがとうございました。
これからも楽しい回や考えさせる回等々
バリエーション豊なブログを
楽しみにしております。
ライブも楽しみにしております。
楽しみながら頑張ってください。

富豪記者 さんのコメント...

コメントありがとうございます!
親が元気なうちはつい甘えてしまいがちですよね。
なかなか難しいですが、ゆとりを持って接したいものです!