2019年3月22日金曜日

世襲天国


安倍さん、麻生さん、石破さんに岸田さん。首相をやった人、狙う人はもちろん、河野外相、野田聖子議員、小渕優子議員、小泉進次郎議員。古い名前では、小沢一郎、田中真紀子両センセイなどなど。


共通するのは世襲議員ということ。政治の中枢で活躍するには、いまや世襲が登竜門みたいになっている。

ふた昔ぐらい前までは「二世議員」と呼ばれていたが、いつのまにか3代目、4代目も出てきたから世襲議員という呼び名が一般化した。

前回の総選挙で当選した自民党議員の3人に1人が世襲だ。もはや家業みたいな感覚の人も多い。

世襲が悪いことだと短絡的に決めつける気はない。子どもの頃から高い志を育み、政治感覚をしっかり養ってきたような人物なら、即戦力としての期待もできる。

問題は経済用語でいうところの「経済的利益」だ。政治家としての地盤、看板の強みは圧倒的だ。

ウィッシュ!で人気者になったタレントのDAIGOが竹下首相の孫であることは有名だが、“竹下王国”である島根の選挙区で後継に名前があがっているとか。

ただ、彼の場合、竹下元首相の娘の子、すなわち苗字が「竹下」ではないことで難色を示す関係者もいるそうだ。

苗字、すなわち看板がいかにモノを言うかを象徴する話だろう。

限られたエリアで1人だけの当選者を選ぶ小選挙区制が定着したことで、世襲候補者の有利さはますます顕著になった。

世襲ではない立候補者と比べれば、この点はまさに「利益」である。非世襲の候補者が名前を売るために必要な時間やコストを考えれば、経済的な利益も計り知れない。

利益があるところには税金がかかるのが世間の常識。これが通用しないのが政治の世界だ。

相続の場合には、より具体的にメリットがある。これを享受するために政治家の道に進む人もいるのも現実だ。

政治家はいくつもの政治団体を持つ。議席を得ていなくても届け出をするだけで設立可能である。

政治団体を親から引き継いでも、そこに課税関係は生じない。民間会社との決定的な違いだ。

会社経営を承継する場合には、会社の所有資産が税務上の評価を受けて、それに応じた相続税が課税される。

会社承継の際に多額の相続税で苦労した経営者の中には「経営権を国から買わされたような感覚」と語る人もいる。

後を継ぐことを“利益”とみなしている国のルールが、そういう現実を生み出しているわけだ。

政治団体の場合、後を継ぐことが利益であるという基本が無視されている。同じ国のルールとは思えないヌルさである。

親が個人資産を政治団体に移したとしても、子はあくまで政治団体を引き継ぐわけだから相続税はかからない仕組みになっているわけだ。

安倍首相が10年以上前に第一次政権を投げ出した際、健康問題が理由とされた一方で、相続問題を追及されたことも影響したという見方もあった。

相続税の大幅改正から3年が過ぎた。基礎控除引き下げで課税対象は大幅に広がり、お金持ちイメージとは無縁の人まで相続税を心配する時代になった。

いまや大衆向け週刊誌などでも相続税ネタが特集されるほど、一般家庭にとっても相続税は頭痛のタネになってきた。

そんな現実をよそに世襲議員だけに許された逃税術が存在することはケッタイな話である。

都心に持ち家がある程度の人を資産家と称して、容赦なく相続税をかけるよりも、世襲議員の経済的利益に課税するほうがよほどマトモな考え方だろう。

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