2020年5月8日金曜日

歩いたり読んだり


もともと運動不足だから、自粛生活は私をどんどん肥大化させる。さすがにマズいからマメに散歩に励むようにしている。

散歩にはもってこいの季節だ。新緑の美しさ、花の奇麗さといった当たり前の光景も今の時期は凄く有難く感じる。

東日本大震災のあと、しばらくは「当たり前の暮らし」の有難さを痛感した。気づけばそんな感覚も薄らぎ、いままた何気ないことの大事さを改めて噛みしめている。

引っ越してから間もなく1年。中央区界隈は江戸時代のあれやこれやを示す標識や碑があちこちにあるから、当時に思いを馳せながら歩くのも楽しい。



ふと見つけたのが浅野内匠頭の上屋敷跡の碑だ。いわずと知れた忠臣蔵のバカ殿、いや仇討のきっかけとなったお殿様だ。

聖路加病院の近くにポツンと地味な碑が立っていた。忠臣蔵には小学生時代から入れ込んでいる私にとっては萌えスポットである。

討ち入りを果たした義士達は、吉良さんの首をもって泉岳寺まで行進する途中で、この地を通過したそうだ。

いま自分が立っている場所に47人の義士がいたのかと思うとワクワクする。

子供のころ、赤穂まで行って大石邸後や城跡を見て、その後は泉岳寺にも行き、大人になってからは大石が隠遁生活を送った京都山科あたりを散策し、両国の吉良邸跡にも足を運んだ。

浅野家の江戸屋敷も確認できたから、あとはいよいよ松の廊下だが、さすがに皇居の中は散歩できないから無念である。

名所旧跡探訪も楽しいが、私にとって散歩の魅力は妄想に尽きるかもしれない。

立派な住居を見れば、住んでいる人の暮らしぶりを勝手に考える。オンボロアパートも同じ。今にも崩れそうなアパートには妙な趣がある。ボケっと眺めながら昭和の青春ドラマのような暮らしを妄想する。

ヨレヨレ歩いているお年寄りを見れば若い頃はどんな仕事に励んだのか、どんな恋愛をしたのかなどと想像する。

文字にすると実にくだらないのだが、これが結構楽しい。

何も考えずに歩くとすぐに飽きちゃうのだが、妄想していると長々と歩ける。

買い物袋をさげたオバチャンの後姿を見ながら、この人の家の夕飯は何だろう、誰と食べるのだろうと考え、小さい子供の手を引くお父さんを見れば、ウチに帰ったら怖い奥さんにガミガミ文句言われるだろう、本当はヨソに愛人がいるんじゃないか等々、アホみたいに妄想している。

まあ端的に言ってバカなんだろう。いや、自粛続きで頭がおかしくなっているのかもしれない。



連休中は、散歩以外に読書にも励んでみた。いつもは短編専門だが、夜のヒマさに耐えかねて長編にも手を出してみた。

浅田次郎の「流人道中記」がそれ。江戸から津軽までの紀行小説的な要素もあり、例えるならロードムービーを観ているような面白さに満ちていた。

人間の矜持や規範というものとの向き合い方など、今のご時世に読むにはもってこいかもしれない。掛け値なしに面白いので自粛生活のお供にオススメだ。






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