2007年10月23日火曜日

備前


新米記者当時つかっていた3Bの鉛筆が、モンブランのボールペンからウォーターマンのボールペンへと変遷するうち、年齢も重なって、いろいろなものが見えてきた。堅い話では税務調査という権限をバックにした国税庁という武器を持つ大蔵省(財務省)の権力構造の緻密さや、そこに渦巻く国会議員の思惑、税制改正の構造的な体質など。

活字に出来ない話が知識として蓄積され始めるとともに、自分なりの視野は広がった。と同時にライフスタイル上の視野も広がって、記者的探究心はプライベートにそのウェイトが移ってしまったりした。

30代を迎え、それも半ばを過ぎたころから、趣味嗜好はどんどん親父道を目指し、あんなに得意だったイタリアンやエスニック系のレストランより和の道まっしぐら。

出汁という魔法の奥深さに魅了され、職人技的な技量にことさら感心するのが楽しくなり、一時期は寿司屋通いばかりの生活で、あまりの食生活の変化に身内から病気を疑われるほどに。

そのうち、和の器に妙な執着が生まれ、窯場の旅ばかりするようになる。備前、唐津、信楽、丹波、常滑、美濃にはじまり沖縄や北陸方面にも器の物色を大義に、地域地域のうまいものも求めてふらりふらり。

窯場がある場所の多くが、寅さんが歩いていそうなのどかなエリアで、マドンナこそ絶対にいないものの、探してみると土地それぞれにうまいものが揃っている。

今でも一年に一度は通う備前などは、その昔は全国を相手に海上輸送で焼物を出荷していた関係上、瀬戸内海に近い立地に窯場が設けられている経緯があり、器巡りとともに近隣ではおいしい魚介類にありつける。

寿司屋も見かけやしつらいは別にして、出される食材は極上。白身魚は東京の一級店のそれに劣らず、シャコの刺身なんかにありつけた日は、向こう1週間ぐらい顔がほころぶ。

旬のアナゴもべらぼうにうまみたっぷりで、脂の乗った素材で名物のあなすき(アナゴのすき焼き)を食せば、アナゴ感が確実に変わる。おまけに使い込まれた備前焼の器で供され、徳利、ぐい飲みも備前焼で堪能すれば、この世の天国極まるって感じだ。備前市伊部周辺にある心寿司、山本旅館あたりはガイドブックにも登場する有名店だが、間違いない味が堪能できる。

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