2010年11月17日水曜日

上海ガニ

カニの季節だ。11月頭から解禁になる日本海のズワイを最高峰に全国各地でカニをむさぼり食う人が大量発生中だ。

今が旬ではないカニでもこれからの季節は王様のように扱われる。カニ食い人の分布は聞くところによると関東より関西方面だという。そういえば、関西人はしょっちゅう「カニ食うてまんねん」とか言っているイメージがある。

「かに道楽」みたいなカニのテーマパーク的レストランも東京エリアは少ないように思う。不思議だ。東京人特有のスカした感じがカニ食いと相容れないのだろうか。

両手を使ってテーブルの上も散らかし放題で、ほじったり、かじったり、すすってみたりするカニ退治は「食う」という作業の集大成のようで楽しいと思う。

実は石川県・橋立まで解禁になったばかりのズワイを一人コッソリ食べに行こうと画策していたのだが、家族からの同行要請が殺到して断念。

あんなウマくて高いものをどうして小学生の分まで面倒見なきゃならないのか、冗談ではない。仕方なくデパ地下で毛ガニを買って振る舞う。

日本海のズワイは断念して12月のどこかで函館に行くことにした。なぜか冬の北海道には行きたがらない寒がりの家族のおかげで、心おきなくドッサリと毛ガニでも食べうことにする。


さて、東京でよく見かけるこの時期のカニといえば上海ガニだろう。無茶な価格の高級品として崇めたてている店もあるが、もともとそういう存在ではない。良心的な値段で提供する店でワシワシ食べればいいカニだ。

ミシュラン組の「富麗華」など中国飯店系の高級店で白手袋のボーイさんにアツアツのカニをうやうやしくさばかれながら味わうのもシビれる時間だが、酒のつまみという点では何かが違う。もっとガサツに食べたい時のほうが多い。

中華系のカニならではの食べ方が紹興酒漬けだろう。酔っぱらいガニと呼ばれる食べ方だ。

ヤツの名誉のために書いておくが、ヤツは決して酔っぱらってなんかいない。死んでいるだけだ。「紹興酒につけ込まれた死体をチューチュー吸う」というのが正しい表現だ。

そう書くとロクでもないが、寿司だって「絞めてから数時間後の旨味が・・」などと言う場合、死体の熟成を味わうようなものだ。

食い道楽などといっても「おいしい死体」を求めるという意味ではゾンビと同じだ。

なんか話がそれた。上海ガニに戻ろう。

友人が経営する溜池山王にある「美食菜舘」でチューチューしてきた。旧友がブログ上で上海ガニをPRしていた某日、ちょうど夕方に赤坂にいるスケジュールだったので所用終了後さっそく訪ねた。

紹興酒漬けを2杯注文。冒頭の画像がそれだが、カニ達が私に指名されたことを喜んでいるように見える。

お燗してもらった紹興酒と一緒に味わう。普段呑まない紹興酒が何とも言えない魔法の水に変身する。紹興酒漬けを紹興酒で味わうのだからマズいはずはない。


ミソがたっぷりだ。どう表現すればいいのだろう。何かに似てる味といえばいいのだが、思い浮かばない。ボキャブラリーの乏しさを実感する。トロリン・ジュワン・ジュジュジュ・ズーって感じのたまらない味覚が脳を直撃する。

カニは身体を冷やす食べ物の筆頭だ。中華料理店でもショウガ汁を一緒に出す店もあるが、この日は、しこたま熱い紹興酒で温まる。

それでも何か身体を温める食材を摂取しようと「辛い麻婆豆腐」を注文。これがまた本当に辛くてさあ大変。何かの復讐かと思うぐらい辛い。

でもウマいのでワシワシ食べる。辛いから紹興酒が進む。グビグビ呑む。酔う。満腹中枢が麻痺する。チャーハンを追加する。ペロペロ食べる。あとで後悔する。太る。

そんな感じの時間だった。

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