明確な理由なんて無いのだが、「古くてしっとりと上質なもの」に惹かれる。「最先端で華やかでスタイリッシュ」となると、どうも敬遠したくなる。
アマノジャクで、江戸っ子ぶりたい気分がそう思わせるのだろう。ついでに言えば、ハヤリの店にいそいそ出かけたり、行列に並んだりするのが小っ恥ずかしい。
カッチョイイ店を全然知らないから、若い女性をデートに誘おうにも、寿司だウナギだ焼鳥だって感じで、決して潤んだ瞳で見つめられるような雰囲気にはならない。
おまけに洋モノより和食ばかり好むから、奮発したところで、フグだのクエだの、ちっともロマンチックではない。
そんな私でも時には洋食にそそられる。数少ない「洋モノ食い」の機会は「ホテルメシ」を選ぶことが多い。価格面では感心しないが、味もサービスにも安心感がある。
ホテルメシと言っても、やはりスタイリッシュ系は避けてしまう。外資系より日本の老舗ホテルを選ぶ。オネーサマがたが「わーい、ここ来てみたかったんですう~」と喜ぶようなホテルには行かない。
リッツカールトンだ、ペニンシュラだ、コンラッドだと言われても、帝国ホテルやホテルオークラあたりを選んでしまう。
外資系ホテルも魅力的なんだろうが、ドメスティックな極東の山猿である私としては、あの手の新興勢力はハロウィンとかバレンタインデーみたいに思える。
よく分からない例えでスイマセン。
なんか居心地が悪い、しっくりこないという意味合いだ。もっと分かりやすく言えば、「恵方巻を喜んで頬ばる関東人」みたいなイメージだ。意味不明でスイマセン。
個人的に背を向けたくなるだけで、何の恨みもヘチマもない。ダサいとか遅れてると言われようが仕方がない。
東京に進出して日が浅い外資系に比べ、日本の老舗ホテルには味わいがある。「ずっとその場所で刻まれてきた物語」みたいな掴み所のない要素なのだが、子どもの頃「ホテル」の非日常感に漠然と憧れた私にとっては大事な部分だ。
なんか大袈裟になってしまった。
帝国ホテルを例に挙げると、名物料理にシャリアピンステーキとか海老と舌平目のグラタンがある。
シャリアピンさんという歌手のことはちっとも知らないが、歯痛に悩むそのオジサンのために作ったというエピソードが良い。グラタンはエリザベス女王が食べたメニューだとか。女王のファンでも何でもないが、そんなウンチクが興味をそそる。
で、本題に入る。
ここまで書いたことは前振りだ。年とともに話がくどくなってしまったようで、最近は前振りがどうも長くなってしまう。
いかんいかん。
今日の本題は「ジャイアント馬場がいた場所」だ。
先日、「ザ・キャピトルホテル」に行ってきた。一昨年全面的に新装となった旧キャピトル東急ホテルだ。場所は永田町。日枝神社の裏。新しい道が出来て、スムーズに行けるようになったが、少し奥まった感じが東京の隠れ家という感じで良い。
ちょっとダルビッシュ、いや、スノビッシュに変身しすぎた感じもあるが、個人的な懐かしさのせいで、つい贔屓目に見てしまう。
その昔、日本初の外資系ホテルとして鳴り物入りでオープンした東京ヒルトンが前身だ。かのビートルズが泊まったホテルだ。その後は、マイケルジャクソンも猿と一緒に泊まったことで知られる。
私自身の思い出としては、若かりし頃、祖父がここの鉄板焼きレストランに連れて行ってくれたことを思い出す。
大学生の頃には、ここのカフェレストランによく出かけた。食事というより喫茶店代わりに利用した。
当時、頻繁に見かけたのがジャイアント馬場だ。あれだけ大きいと馬場さんがいることはすぐ分かる。
あくまでイメージだが、「いつもジャイアント馬場がいる店」というイメージだった。甘いモノをニコニコ食べていた印象がある。
馬場さんが陣取っていたのはカフェレストラン「オリガミ」だ。気軽な食事も出来る穴場だったが、ホテル新装後も名称は残され、メニューもいくつも受け継がれている。
名物のパーコー麺、昔ながらのナポリタン、3枚目は和風ピラフだ。画像で見たところで何の変哲もないが、それぞれ正しくウマい。
あえて表現するならば東京料理だろう。昭和の東京の洋食そのもの。変に奇をてらったメニューに進化しちゃうより、この手の「昔ながら」が大事にされているのが嬉しい。
メニューを見ても「受け継がれた味」という注釈つきでカテゴライズされており、ちょっとした老舗の矜持が感じられる。
薄めの衣で揚げてある豚肉がドーンと載ったパーコー麺は、麺、スープともにシンプルだが、飽きのこない味で、別皿で大量に用意される薬味の加え加減で味に変化を付けられる。豚肉の量も大満足。スープの中でもベチャベチャしない締まった肉質がバッチグーだった。
なぜかシャンパンと一緒に味わったのだが、このパーコーの部分はなかなか上質なツマミにもなった。書いてるだけでまた食べたくなってきた。
新装オープンしてもう1年以上が経つ。もっと早く来るべきだと後悔したほど。東京の老舗のくせに近代的にカッチョ良い感じに変貌したこのホテル。私のアマノジャク心理にズバッっと刺さった。
今は亡き祖父に連れて行かれた頃の雰囲気は残っていないが、同じ場所で、ここから先、私自身の新しい思い出を作りたいものだ。
こういう嬉しい経験をすると、ちょっとオーバーだが、老舗国産ホテル贔屓がますます強まりそうな気がする。
この5月には、皇居横のパレスホテルも新装オープンする。こちらもキャピトルホテルと同じで、ミーちゃんハーちゃんとは無縁なオッサン系ホテルだ。アマノジャッキーとしては、そういう落ち着いた穴場感みたいな雰囲気に惹かれる。
正しいオッサンとして使ってみようと思う。
2012年3月2日金曜日
ジャイアント馬場がいた場所
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿