2012年3月19日月曜日

昭和の味 維新號 東京會舘

「食べログ」のヤラセ問題が話題になったが、とかく、ネットの世界を中心に世の中に溢れる食べ物ネタは、ウマいのマズいの、辛いの甘いの等々、個人の主観が遠慮無しに書き殴られている。

考えてみれば、あまり品の良い話ではない。
それを鵜呑みにする方も問題だろう。味覚なんて人それぞれだし、一度ちょこっと行っただけの店を悪し様に書くのは暴力的な話ではある。

私もご多分に漏れず、どこがウマい、あそこは抜群などと好き勝手に書いているが、基本的に店の悪口は書かないように注意している。

小難しい料理論を語る気はさらさら無く、ただ、そこで感じた楽しい気分、嬉しかった記憶をつらつら書くぐらいに留めるように気をつけようと思う。

だから、「エロティックな味わい」だの、「官能的な味」だの、意味不明な表現になってしまう。

精進料理が大好きだと真顔で語る人がいる。そういう人にビッグマックはウマいと説得しても意味がないし、アフリカの人達にナマコの酢の物を食べさせたって拷問でしかない。

そんな話を書いているクセに今日も食べ物の話を書く。

今日のテーマは「昭和の味」。実に抽象的な表現だが、私の好みはこの言葉に集約されているように思えてきた。

ジャンルを問わず、古典的、保守的なメニューに惹かれるようだ。ラーメンを例にとっても、昔からあるオーソドックスなラーメンが結局ウマいと思う。

つけ麺がすっかりポピュラーになって、専門店も増えたが、あれこそ平成の味だろう。昭和の頃は「つけ麺大王」ぐらいしかなかったし、それもキワモノ的な位置付けだった。

古典的オヤジ?としては、つけ麺のぬるい温度が苦手だ。熱くてフーフーしながら食べるからこそラーメンだと思う。頭が固いのだろうか。

きっと、何事もマイルド指向が進んでしまった「一億総猫舌化」が、つけ麺ブームの根底にあるのだろう。

先日、中華料理界の老舗である「維新號」で昭和の味を堪能した。赤坂が旗艦店らしいが、母校のつながりで知り合った4代目が常駐している銀座新館に行ってみた。


中華料理にこだわりがあるわけではないが、結構いろんな店を食べ歩いた中で、維新號の味は、正しい「昭和の味」を思い出す感じだった。

王道的というか、奇をてらったメニューはなく、「昭和の大人達がハレの日に食べていた中華」という雰囲気。

かつて幅を効かせていたヌーベルシノワ的な路線と違い、子どもの頃、家族で出かけた御馳走としての中華料理だ。

中華料理好きだった祖父が、その昔、好んで食べていたような味だ。伝わりにくくてスイマセン。

でも、食べ物ひとつで、そんな郷愁に浸れたわけだから実に嬉しい時間だった。



フカヒレの姿煮に悶絶した。

「なんじゃこりゃあ」と「太陽にほえろ」で松田優作演じるジーパン刑事が殉職する時に発したセリフが頭をよぎる。なんじゃこりゃあ!なウマさだった。正しくコッテリで味に深みがあってクラクラした。

海鮮焼きそばも、変にあっさりしていないところが良い。最初の画像の北京ダックもジュンワリジューシー?で大満足。麻婆豆腐やエビの炒めものも「正しい中華油」の効用のせいだろうか、後を引くウマさだった。

クドすぎることなく力強いウマ味。分かったようで分かんない言い回しで恐縮だが、「今日はどうしても中華を食べたい」という気分を確実に満足させてくれる店だと思う。


メニューには無い「天津飯」をわがままオーダーしてみた。これがまたウッシシの味。タマゴのふんわり感が老舗の洋食店もビックリのフンワリふわふわ。フガフガ言いながらペロペロ食べてしまった。

ちなみに、こちらの4代目、まだ30代独身。スマートでイケメン。きっと女性のファンが多いんだろうなあ。チクショー。。。


さて、次なる「昭和の味」は丸の内・東京會舘。維新號の北京ダックと同じく、テーブルでのワゴンサービスで出てきたのは、名物のローストビーフだ。

他にもコロッケとかピラフとか、その手の昭和メニューも注文したかったので、ローストビーフを1枚か2枚か選べる仕組みは有難い。


ベチャついた感じではなく、適度に締まった肉の質感が素直にウマい。

子どもの頃、「肉のご馳走と言えばステーキ」だと信じて疑わなかった。固い肉の塊でも狂喜して食べていた。そんな昭和の少年が初めてローストビーフを知った時の驚きったらなかった。

なまめかしい。まさにそんな感じ。はかなげに口の中で消えていく肉。アゴの筋肉ばかり鍛えられたステーキとは全然違う食感にたじろいだ。

この日のローストビーフは、そんな懐かしい感覚を思い出させてくれた。



でんでん虫も昭和の頃と同じく、正しく油っぽい。ガーリックバター風味の汁をパンにジョワっと浸してシャンパンをグビグビ。幸せだ。

タンシチューもこれまた、まさしく「昭和の東京の外食」そのものだった。皿までベロベロ舐めたくなった。

ヘタに垢抜けていたり、聞いたことのない食材で聞いたことのない料理名のメニューを見せられても嬉しくないが、この手のレストランにはそういう心配もない。

メニューを眺めて、つい「全部ください」と言いたくなる。オシャレとか最先端とは無縁なストレートな分かりやすさが「昭和の味」の魅力だろう。

知らない味、未知な味への好奇心が無くなってしまったわけではないが、どうにも慣れ親しんだ味わいに吸い寄せられてしまう。

これも加齢だろうか。だとしたらそれも加齢の悪くない効用のひとつかもしれない。

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