スーツを着ている時は革靴を履くが、この世界にもあれこれと掟のようなものがある。
誰が決めたかは知らないが、スーツにローファーやスリッポンはダメというのが決まりだ。石田純一なら別だが、確かに普通のスーツを普通の人が着る分にはヒモ靴かモンクストラップが定番である。
靴の色にもいろいろと厄介なルール?みたいなものがある。そんなものに縛られ過ぎるのもカッチョ悪いが、一定の法則として知っておいたほうがいい。
ベルトの色に合わせる。まあ、これは理にかなっている。とくに茶系の靴が好みならベルトだけ黒いとバランスが悪い。
スーツのボタンの色に合わせる。なんだか神経質野郎みたいなルールだが、伊達男の世界ではそんな言い伝え?がある。正直、どうでもいい話だと思う。個人的にはそんなことを考えて靴を選ぶことはない。
さて、紳士靴の究極といえば黒だ。その反面、究極の無難ともいえる。就職面接のために初めて買う靴もオシャレ番長みたいなオジサマが履いているジョンロブも定番の色は黒である。
実は靴が大好きな私が苦手なのが黒い靴だ。苦手といっても嫌いという意味ではない。綺麗に磨いた黒靴を履くと気持ちもシュッとするのだが、なんとなく楽しくない。
小学校の頃、制服に合わせて靴も指定の黒の革靴を履かされた。靴下も黒限定である。幼い頃からそんなコンサバちゃんだったから黒の革靴にどことなく抵抗感があるのかもしれない。
とはいえ、王道の黒である。こだわりのありそうな黒靴を履きこなしている紳士を見ると自分も見習おうと思う。でも、いざ黒靴を履いていると得体の知れないアマノジャク精神が邪魔をする。
面白みがない。無難すぎる。そんな感覚に陥る。そもそも靴の色を面白いとか面白くないなどと考えていることがバカみたいだが、そうはいっても、その日1日の私の動きはすべて靴が支えている。気分の良い靴を選びたい。
出かける前にシューズクローゼットを開くと、愛する靴達がいっせいにアピールしてくる。「オレを選べ」「今日はボクが最高だ」等々、私を悩ませる。
スーツ用に私が持っている靴の7割方は焦茶系である。残りはバーガンディー(ワインレッド)と黒。奇抜なのは苦手なので紺や緑系統までは手が出ない。
黒い靴は最下段に入れてある。目線の近くにあるのはお気にいりの焦茶系ばかり。必然的に「履いてくれ~!」とアピールしてくる。で、ほとんどが茶系の靴を履く。スーツの色に合わせて茶色の濃淡は考えるが、黒の出番は少ない。
グレー系のスーツばかり着ているなら茶系が定番だから仕方がないが、紺系のスーツだったらビシっと黒い靴でキメるのも悪くないのに、ついつい茶系を選んでしまう。
執着心が強いB型の特徴だろうか。ホントのオシャレなら先入観抜きにいろいろ取っ替えひっかえするのだろうが、たいていはいくつかのお気に入りの茶系ばかり選んでしまう。
色の選択にはさまざまな心理や意味合いが潜んでいるらしい。靴という一部分のパーツだけで色彩心理うんぬんを考えるのもどうかと思うが、黒を避けてしまう何らかの理由があるのだろうか。
まあ、当たり前のように黒い靴を履くことに抵抗があるのだろう。「オレだって足下には気を遣ってるんだぜ」的なイジらしいアピールみたいな感覚だ。ある意味、自意識過剰である。
10年ぐらい前までは着るモノや身につけるモノにこだわっているのは男としてカッチョ悪いと思い込んでいた。
10代、20代の頃はオシャレにも関心があったが、渋い大人を目指したくなった頃に必死に着るモノにこだわっていた自分がイヤになった。
少しばかり無頼な雰囲気に憧れていたから、あえて無頓着な雰囲気を醸し出そうとしていたわけだ。でも、そんな考えは若いうちにしか通用しない。いい歳したオジサマがダラけた格好をしていると単にモッサイだけである。
実際に、意識して世の中を眺めてみると、それ相応の御仁はキチっとした装いで靴もキリっと履きこなしている。汚いヨレヨレ靴を履いている人は「それなり」である。
なんだか話が逸れてしまった。靴の色の話だ。
なんだかんだ言って黒い靴をキッチリ履きこなすのは紳士の嗜みかもしれない。
なんとなく黒を避けちゃうような色気づいた感覚では「素敵なダンディー・ジェントルマン」(なんだそれ?)への道は遠い。
っていうか、いつから私は「素敵なダンディー・ジェントルマン」を目指すようになってしまったのだろう。
なんだか迷走している。
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