2017年12月15日金曜日

焼鳥の奥深さ 蒼天


焼鳥は日本人のソウルフードの一つ。国民食と言っても大げさではない。

商店街で売っている1本70円のものから、高級店でうやうやしく出される1本700円ぐらいのものまで百花繚乱である。

もちろん、私も焼鳥が大好きだ。「今日は焼鳥じゃなきゃ絶対イヤだ」という日も結構ある。



馴染みの焼鳥屋さんもあるのだが、その店に行くと串モノではなく、一品料理ばかり食べてしまう。

豊島区の要町近くに位置する某店のササミチーズフライが私の大好物である。勝手に日本一だと信じている。

レバーの刺身を軽く炙ってポン酢で味わう一品も必ず頼む。あとは胸肉のキムチ和えなんかでお腹がいっぱいになっちゃうから、串モノをちっとも食べずに帰ることもある。

焼鳥好きを自称するにはちゃんと串モノを食べないとダメである。

ということで、久しぶりに別格の焼鳥を食べに行ってきた。4~5年前に何度か通った名店があったのだが、ナゼか忘れていた。ふと思いだして慌てて行ってみた。

やはり別格だった。抜群にウマい店なのに存在を忘れていたことが不思議だ。3年前まで住んでいた家の近くだったので引っ越しとともに頭から消えてしまっていた。

店の名前は「蒼天」。山手線の大塚駅と丸ノ内線の新大塚駅の間の住宅街にポツンとたたずむ店だ。

いつのまにか例のミシュラン本にも載ったらしい。あれだけウマければそれも当然だろう。

数年ぶりに行ったせいで、オーダーの仕方がちょっと変わっていたが、まあ大勢に影響はない。




つくね、ナンコツ、レバーである。卵黄を添えて混ぜ合わせて食べるイマドキのつくねも好きだが、この店ではそのものの味で勝負している潔さが感じられた。

ホロホロ鶏のモモ肉や手羽先もジューシーかつ旨味たっぷりで抜群だった。

酒の品揃えも良く、焼酎に関してはあらかじめ割水したものをお燗にしてもらえる。なかなかニクい。メニューには載っていないが、各部位の刺身や燻製もある。

黙々と食べたい人も酒浸りになりたい人にも良い店だと思う。


こちらは温玉そぼろ丼である。味の無い冷たいそぼろを漫然とご飯に乗せただけのダメな店が多いなか、こちらはそぼろの味付け、タレの味わい、温玉の加減が絶妙。全体を混ぜ合わせて食べると実に幸せな気分になれる。

この日は他にも白レバのパテやキンカンの燻製を食べた。全部ウマかった。野菜嫌いの私がネギまで美味しく感じたから本物だ。

職場から自宅に向かう通り道のような場所にあるから頻繁に通いたいが、一人しっぽりという雰囲気ではないのが玉にキズ。

それにしても、焼鳥は、平たく言っちゃえば鶏肉をただ焼くだけである。なのに店によって美味しさが極端に変わる。実に奥が深い。

素材の差、下処理の差、焼き加減の差、塩加減の差、他にも事細かな「差」の積み重ねがまるで別モノのような違いを生み出すわけだ。

食べる側の意識はファストフード感覚に近い。少なくとも、かしこまって高級フレンチに出かける時のような勢い込んだ感じはない。

神経を研ぎ澄まして徹底的に味を追求しようと焼鳥屋のノレンをくぐる人はいないだろう。今の時代はラーメン屋のほうが、そんなノリで訪ねる人が多いのではなかろうか。

あくまでフランクでお気楽な存在が焼鳥だ。グルメ論評のワクの外でこっそりとウマい世界を堪能させてもらいたい。

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