2022年7月1日金曜日

居酒屋と冷や奴

 

外食中心の生活は健康に悪いというのが定説だ。まあ基本的にはそうなのだろうが、家メシだって濃い味付けで好きなモノばかり食べていれば身体に悪い。

 


 

外食イコール悪、みたいな考えはちょっと行き過ぎだろう。梅キュウに冷や奴、枝豆に冷やしトマトあたりで済ませれば充分ヘルシーである。

 

居酒屋で夕飯を済ますことは多い。居酒屋メシの良さは気取りがないことだろう。ウンチクも不要で旬なども気にしないで「普通にウマい」ものを食べていれば済む。まさに居酒屋サマサマである。


一説によると居酒屋は平安時代には存在していたらしい。鎌倉時代後半には商人階級にも利用されるようになり江戸時代に本格的に発展したそうだ。いわばニッポンの歴史そのものである。

 

いい歳したオジサマとして生きていると、やれ寿司の食い方がどうだ、ウナギのこだわりがあーだのと余計なことが頭に浮かぶのだが、居酒屋メシはそんな邪念抜きにホゲホゲ出来るのが嬉しい。

 


 

時々訪ねる安酒場の串焼きである。なかなか見た目が素敵だ。これはこれで“映え”である。ケチャップが載っているのは赤いウインナーのベーコン巻きだ。こういうモノばかり食べていたら不健康だが、ミニトマトベーコン巻きも食べているから大丈夫だ。何が大丈夫だかよく分からない・・・。

 

ベーコン自体があまりヘルシーではない。というか不健康である。とはいえ単にミニトマトの串焼きだったら食べたくない。やはり不健康に走るのが人の道だろう。

 

これからの季節は梅干しサワーが欲しくなる季節だ。汗をかいた後の塩分補給は大事だ。梅干しサワーもおかわりのたびにジョッキは替えずに梅干しを追加投入するのが正しい。クエン酸をしっかり摂取して夏バテに備える。塩分過多だという指摘は聞き流す方が賢明だ。

 


 

居酒屋メニューで定番なのがポテサラである。炭水化物だから太りそうでついつい避けるのだが、マカロニサラダだと悩まず注文する。論理破綻である。

 

でも気のせいか最近はマカロニサラダを出す店が減ってきたような気がする。ひょっとして小麦の値上げが原因なんだろうか。だったら早く戦争は終わりにしてほしいものだ。

 


 

料亭や懐石料理の店ではお目にかかれないのがクジラベーコンだ。今ではすっかり希少な存在だが、あくまで居酒屋で味わうのが基本である。これまたどこの店にもあるわけではない。通りすがりに入った店でメニューにあれば迷わず注文してしまう。

 

なんとも表現しきれないあの脂っぽさが魅力だ。食感も独特だし、いわばオヤジ好みである。女子供には内緒にしておきたい一品だ。女子供の皆さんごめんなさい。

 



 数ある居酒屋メニューの中で全国のどこの店でも置いてあるのが冷や奴である。超定番モノである。それこそわざわざ外食で食べるべきか悩んでしまう存在だ。

 

ここ最近なぜか私は冷や奴を必ずと言っていいほど注文する。昔は見向きもしなかったのだが今やすっかり大ファンだ。

 

「マズいはずがないから」という消極的な理由もあるのだがそれだけではない。純粋にサッパリするし、薬味との組み合わせが何とも魅力的に思えて黙々と食べるようになった。

 


 

居酒屋で調子にのって飲んでいるとジャンクというかガッツリした味のつまみを頼みがちだ。ハムカツとかナンコツから揚げとかナンチャラのマヨあえとか背徳系の面々である。

 

最初の一口はウマくてもそのうちクドさが際だったりすると冷や奴の出番である。火消し役である。何を食べていたとしても冷や奴が解決してくれる。実に頼もしい。

 

冷や奴はついつい枝豆みたいな感覚で最初にオーダーしてしまいがちだが、ヤツの活躍の場を考えると中盤に頼むか、シメに頼むのが正しいと思う。

 

先日、適当に入った居酒屋で珍しくマズいものをいくつも食べてしまい敗北感に包まれていたのだが、シメに冷や奴を食べたら何とか気持ちが穏やかになった。

 

その店は客層も年配が多く料理の値段もやや高めでオジサマ的には居心地が良かったのだが、いろいろと期待外れだった。マグロの刺身は味がまるで無くて、焼き魚は変な甘ったるいタレが邪魔で、馬刺しは脂っぽさばかり目立っていた。

 

とっとと切り上げてラーメン屋にでも寄って口直ししようかと思ったのだが、それはそれでデブまっしぐらだから仕方なく店に居座った。どうにも口の中がマズかったからシメのつもりで冷や奴を頼んだ。

 


 

やたらと大袈裟に演出されて登場した冷や奴である。清涼感たっぷりでそれまでのマズさを洗い流してくれた。タダの醤油ではなく専用のタレが付いてきたのが良かった。

 

冷や奴は悪く言えば料理とは呼べないシロモノだが、それはそれで美味しい薬味をしっかり出してくれれば「外食でわざわざ」という点も気にならない。

 

つくづく豆腐を発明した先人に感謝したくなる。日本という国の水の良さが誰もが親しみを覚えるあの味を生んだのだろう。大袈裟だがこれぞニッポンの宝である。

 

ウマいマズいをアレコレ語る場面において「冷や奴」がテーマにのぼることはない。日本人に根付いたソウルフードだから論評の外側の存在だ。だからこそ時々その美味しさを痛感して誉めたくなる。


豆腐料理の代表が冷や奴だ。そもそも「ひややっこ」という謎めいた名称が素敵だ。音の感じも良い。小粋な響きが心地よい。この感覚は外国人には分からないと思う。

 

居酒屋はニッポンの文化遺産であり、居酒屋に必ず置いてある冷や奴も同じだ。心して味わいたい。なんだか妙に大袈裟な書きぶりになってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

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