2024年7月12日金曜日

相変わらずのウナギ


コンビニ飯や菓子パンを食べなくなって2週間がたった。別に健康になった自覚はない。そんなにすぐに影響が出るはずもないが気持ちは別だ。「きっと身体が喜んでいる」と思い込んでご機嫌である。

 

そのせいか、ウナギを食べる機会が今まで以上に増えている。大谷翔平の月間ホームラン数を基準に毎月ウナギを食べる回数をカウントし始めている。6月は夕飯に10回もウナギを食べたのに翔平さんは12本もホームランを打ったから完敗である。

 

さて、先月だったか、関西風の蒸さないいわゆる直焼きの鰻重の人気店に出かけた話を書いた。結局私は関東風しか認めない偏狭な人間であることを痛感したが、自宅近くにやたらと評判の良い鰻屋さんがあることを知り、これまた関西風の直焼きウナギ専門店なのに懲りずに出かけてみた。

 

小伝馬町近くにある「躻」と書いて「うつけ」と読ませるカフェみたいな店だ。風情や渋さはまるで無い。この時点で古典的人間である私の気持ちは沈む。そしてオーダーはQRコードを読み取ってやれとの話を聞いて一層沈む。

 




まずはうざくや肝焼きで一献やりながらひと息。初めて行った鰻屋さんでは最上の鰻重を頼んでみるのが私の中のオキテだが、こちらの最上位はその名も「マウンテン」なる怪しげなネーミングの一品。出てきてビックリ、なかなかコメまでたどり着けないほどウナギが山盛りだった。

 

テンコ盛りにウナギが乗っかっていると不思議なもので有難みを感じない。実に贅沢な話である。せっせと上の方に乗ったウナギを大口あけて食べ進める。はやくコメにたどり着きたい一心で味わっているヒマもないほどがっつく。


 



で、ちょっと落ち着いて肝心の鰻重の味を私なりに吟味したのだが、かなり美味しい。カフェっぽい内装、QRコードでの注文と続いてイライラしていたのに美味しく感じたわけだからかなりのものだろう。

 

先月食べた関西風直焼きウナギは日比谷の「うな富士」という大人気店のものだったが、個人的にはこちらの店のほうが断然しっくりきた。「うな富士」で気になった“焦げ感”が気にならずウナギそのものの旨さが伝わってくる。

 

もちろん、蒸す行程をいれた関東風の方が好きなのは変わらないが、直焼きでもこの店の鰻重なら素直に喜んで食べたくなるレベルだった。QRコード方式じゃなかったら再訪すると思う。

 

別な日、市ヶ谷の愛人宅を訪ねた後に寄ってみたのが「阿づ満や」。愛人宅に足を運ぶたびに気になっていた店だが、この日が初訪問だ。

 

ちなみに「愛人宅」というくだりは単なる私の見栄だ。そんな書き方をしてみたくなっただけです。ごめんなさい。

 

さてこちらのお店は創業から200年以上の歴史を持つ老舗だそうだ。変に敷居が高い感じではなく初訪問でも居心地の良い空間だった。高齢の元気なお女将さんがチャキチャキ取り仕切っていて常連のオジイサンがいい感じに酔っていた。

 




こういう雰囲気の店は素直に好きだ。妙に落ち着く。ビールから冷酒に移行して相変わらずうざくや肝の煮たやつを肴にこっちもホロ酔いモード。

 

気づけばお女将さんと常連のオジイサンとのやり取りに割って入ってしばし歓談。オジイサンからはナゼだか「智恵子抄」の完全版だという箱入りの本をもらうし、お女将さんからは小粋なポストカードをもらう。何だか妙に楽しい時間だった。

 



肝心の鰻重もさすが東京の老舗である。ふんわりととろけそうな仕上がりで文句なし。近所にあったら頻繁に通いたくると思う。ウナギ以外のツマミ類もそこそこあったし、本格鰻重をシメに出来る小料理屋さん的に使わせてもらうのもアリだと感じた。

 

話は変わる。

 

少し前に牛丼の吉野家の鰻重が数年前の悪印象を覆す味に進化していたことを書いた。たまたまだったのかと思ってその後も何度か食べたがやはりそれなりに美味しい。

 

というわけで吉野家のライバルである「すき家」「松屋」もきっと昔よりはマトモな鰻重を提供しているのだろうと実際に食べてみた。

 

すき家は酔ったついでに店舗に入って食べた。タレが甘すぎた印象はあったがウナギ自体はやはり数年前の「牛丼系ウナギ」より数段マトモになっていた。

 



 松屋もしかり。ウーバーで頼んだのだが、ちゃんと美味しい。どこも高値傾向が当たり前になった鰻専門店もヘタな仕事をしていたら牛丼チェーンに客を取られるのは間違いないと思う。

 

ウナギ2枚載せにしたところで2千円台だ。牛丼に比べれば富豪価格だが、中途半端な鰻専門店で高い値段を取られるならこちらで充分かもしれない。

 

何年か前に牛丼屋の鰻丼のマズさを実感した際に、子どもたちがみんなウナギ嫌いになってしまう危険を感じた。そうなったら将来的に鰻文化が廃れてしまう。真面目にそんな心配をしたのだが「牛丼系ウナギ」が奮闘してくれれば結果的に鰻文化の未来も明るいはずだ。

 

なんだか上から目線みたいな書きぶりになってしまった。世界遺産である日本料理の中でも特筆すべき存在が鰻重だと思っている私としては、専門店のウナギだけではなく、すべての鰻食の水準を高く維持して欲しいと切に願っている。

 

 

 

 

 

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