平日なのに休みを取って伊香保温泉に行ってきた。高速も宿も当たり前にガラガラだった。いずれリタイアするとこんな日常に身を置くことになるのかと思うと悲しいような嬉しいような気分になった。
伊香保は「にごり湯」としては都心から一番近い温泉かもしれない。実家が杉並区にあった関係で若い頃は高速の中でも関越が一番便利だったから群馬の温泉には頻繁に出かけた。
伊香保が一番近い。高速出口からも遠くないから日帰りで行ったこともある。「黄金の湯」とはいうものの「茶色い湯」が伊香保の特徴だ。
今回泊った宿は「楓と樹」という名の昨年オープンしたイマドキの温泉宿だ。部屋ににごり湯の半露天風呂が付いていることを条件に選んだ。
この宿は一泊朝食付きのスタイルで、夕飯に旅館メシを楽しむことはできない。その代わりに館内に焼肉レストランがある。希望者はそこで焼肉ディナーにすれば宿から出ずに完結する。
こういうパターンも大いにアリだと思う。高級旅館の料理は品数も多く食べきれないこともある。当然、苦手な食べ物も出てくる。2時間ぐらいじっくり味わうあのスタイルも日本文化として世界に誇れる素晴らしさだが、時にはどっぷり温泉だけを堪能してメシは気軽に焼肉で済ますのも悪くない。
和モダン風のイマドキの旅館だけに屋上にラウンジ的なテラスがあって生ビールやドリンク類が飲み放題なのもよかった。伊香保の一番高い場所に建っているせいで眺めも良い。テラス最前席の足元は温泉が流れていて今の季節なら「頭寒足熱」を楽しめる。
伊香保の湯はにごり湯とは別に無色透明の温泉も湧いている。旅館内の貸切風呂を利用したらそっちの湯に案内されたので、結果的に2種類のお湯を満喫することが出来た。
貸切風呂も脱衣スペースにかなりゆとりがあって浴槽も4,5人でも入れそうなサイズで快適だった。もともとこの宿には大浴場が設置されていないから、部屋の温泉と貸切風呂をうまく組み合わせればヨソの人に合わずに温泉三昧が楽しめる。
館内の焼き肉レストランはコースしか用意されていなかったのが残念だったが、2種類あるコースのうち安いほうでも充分のボリュームだった。肉も上質だったし種類も多かったのでコースが苦手な私でも普通に楽しめた。
チェックインや出発前の精算なども機械でやらされるし、出迎えもお見送りも無く、朝食はチョロっとした和定食がポンと出されただけだった。いわば旅館というよりビジネスホテル的なシンプルなサービスが特徴だった。
日本旅館の慇懃な、というか大げさな感じが好きな人には物足りないかもしれない。その分、客室温泉が付いた広い部屋の割には高級旅館のそれより安上がりだ。若い世代向けにはシンプルで好まれるような気がする。
温泉はさておき、想定外にハッピーだったのが桜だ。渋川あたりでは散っていた桜が伊香保に向けて標高が上がっていくうちに一変、ばっちり満開のタイミングだった。
東京の桜が終わってから10日後ぐらいが盛りみたいだ。来年以降のために覚えておきたい。伊香保近くの水沢観音に向かう道は桜街道と呼べるほど満開の桜だらけだった。まさに圧巻。
近隣の公園やお寺のほか、水沢観音も桜だらけという表現がぴったりなほどで、まだまだ4,5日は充分に花見を堪能できそうな感じだった。今週後半でもまだ楽しめそうな感じだった。
水沢観音には以前、紅葉真っ盛りの頃に行ったことがある。その時もなかなかの風情だったが、桜の季節だと近隣も含めて飽きるほどの桜を眺められるから毎年でも訪ねたいと思った。
気ままな平日の一泊旅。ちょっとその気になれば簡単に実行できる。でも多くの人がなんとなく「ちょっとその気に」という思考に至らないのが現実だ。もったいないことだと思う。
若者ならいざ知らず、中高年にとってはそういう時間をマメに作ることは案外大事だと思う。老人になって動けなくなってからでは手遅れだから元気なうちにそんな時間を多めに持ちたいものだ。
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