2009年6月15日月曜日

民と官

 その昔、根拠もなく聞かされた話に次のようなものがある。
「アメリカの納税意識は高い。建国の精神が背景にあるから国民の納税姿勢が旺盛で、日本よりも脱税を恥ずべきことと認識している」というもの。

一応、もっともに聞こえる話だが、実際はそんな綺麗事は眉ツバで脱税や節税に必死になる人はゴマンといる。世界中、国民性を問わずそうそう真面目な話はない。

アメリカ社会の特徴でもある旺盛な寄付意識だって、しょせん寄付することで大きな節税効果が得られることが背景にある。

以前、アメリカの税務行政や会計事務所事情を視察する機会があった。遊んでばかりいたような旅だったが、それでも興味深い話は結構聞くことが出来た。

ある晩、あちらの国税庁にあたるIRSの税務調査官を長年勤めた人物と懇談する機会があった。印象的だったのは「こんなに世間に脱税が多いとは役人時代は思わなかった」という話。

民間人がいかに役人に対して本音で接していなかったかを退職してから痛感したらしい。それが現実だろう。

どこの国だって同じだ。「民」と「官」の間にはそれぞれが考えているより遙かに高い壁が存在する。

7月になると例年、多くの税務職員が税理士として第二の人生を始める。一応、民間人としてスタートするわけだ。

「官」の体質だった人が「民」の感覚に急転換できないのは確かだが、それでも徐々にこなれてくる例をいくつも見てきた。

国税OBということで、「OB税理士」と称される彼らだが、いい意味で官と民の橋渡しになってもらうことを期待したい。

とはいえ、実際には、税の世界のハレンチトラブルに一部のOB税理士が暗躍していることも事実だ。

税務署に顔が効く、国税局に子飼いがいる等々の甘言で脇の甘い企業経営者らを餌食にする。その手の怪しい話は税金関係の新聞を発行していると頻繁に耳にする。

もちろん、OB税理士に怪しげな期待をよせる懲りない面々が多いから、つまらない罠にひっかかる。困った話。

もみ消すとか、手心とかいうヤバい系の次元ではなく、着地点を見出すという点でOB税理士の力量が有効活用される場面は実際に多い。役所の思考や行政の段取りに絡む微妙なさじ加減に通じていればこその能力だろう。

この辺の微妙な機微に触れる話は、世の中に出回っている税金解説本では扱っていない。税金の解説誌でも触れないテーマになっている。

報道系の路線を明確にしているわが社の専門新聞や税理士業界の経営情報紙では、この手の話題を掲載することが多い。

税務関係の怪しい事件が起きるとテレビや大新聞の記者が、なんだかんだとわが社の記者連中に接触してくることがある。もちろん、簡単に貴重な情報を出せるものではないが、興味深い情報が別な角度から入ってくることもあってムゲにもできない。

税金関連の媒体は数多く存在するが、単なる解説や広報に終始しているものが大半。ナマのレア情報が必要ならわが社の2媒体はオススメです。

0 件のコメント: