2009年6月30日火曜日

銀座 奈可久

禁煙は楽しい。最近の率直な感覚だ。訪ねる店が禁煙かどうかを気にしないで済む。くだらないことのようだが今までの私には大きな問題だった。

何かを我慢することって案外やっかいだ。わずか2時間程度、タバコを我慢することぐらい何でもないのだが、“我慢している自分”にイラだつ。

タバコが吸えないイライラではなく、我慢させられているという事実が気に入らない。筋金入りのワガママみたいだ。

だから、禁煙がほぼ成功している今、全席禁煙の店に行ってもイライラしないことが妙に楽しい。人格が丸くなった気がする。

逆にまわりのお客さんがスパスパ状態だったら、それはそれでOK。「もっと副流煙ちょうだい」って感じでクンクンしている。

禁煙のおかげで新店開拓への意欲がやたらと高まってしまった。暇さえあれば喫煙OKな店、全席禁煙の店を問わずアチコチ覗いてしまう。

銀座8丁目にある「鮨 奈可久」を訪ねたのもそんな気分でぶらぶらしていたある日のこと。

もともと6丁目、数寄屋通りの裏にあったのは知っていたが行ったことがなかった。六本木の「奈可久」、さかのぼれば「奈可田」がルーツなのだろう。

10年以上前、六本木の奈可久には何度か通った。いわゆる仕事をした肴や握りが実に美味しくて、変な言い方だが私にとって「ちゃんとした店」という印象が強い。

その後、六本木に行く頻度が減るとともにすっかり行く機会もなくなってしまった。

さて銀座の奈可久だ。8丁目の雑居ビルの6階に凛とした佇まい。ちょっと緊張感はあるものの、お店の人は丁寧かつ親切で、すぐに居心地の良い空間に変わった。

ツマミを多めにおまかせで楽しむことにする。途中途中で目についたもの、思いついたものも注文する。

高くつく頼み方だが、初訪問の際にちょこちょこ頼むより、多めに注文したほうがその店の価格帯を知るうえで参考になる。

白魚、カツオ、マコガレイと続く。
薬味の複雑な使い方、つけだれのバランスのよい味にニコニコしてしまう。

マコガレイは今まで食べたなかでも最高だった。ごく浅く昆布締めになっていて、ホントにほんのりと、分からないぐらいに昆布の香りをまとっている。旨味が絶妙に引き出されている感じで抜群。ノックアウトされた感じ。

アオリイカ、赤貝の刺身も味が濃厚でまったく文句なし。カスゴの刺身も締め加減がまさにいい塩梅。素直に旨い。

酒肴のハイライト的に出てきたのが蒸しアワビと煮たこ。江戸前の代表的な仕事を施してある。煮たこの味が個人的には濃すぎる感じだったが、昔からの味付けで酒のアテだと考えれば、あれはあれで正しいのだろう。

酒がグングン進んじゃったせいもあって、アナゴもつまみでもらう。いやはや官能的にふっくらと繊細な味わい。バンザイ。

なまこの酢の物も食べた。鮭の塩焼きも出てきた。さすがに結構お腹にたまってきた。握りは3~4貫ぐらいしか無理かと思ったが、結局バクバクと食べてしまった。

こはだ、アオヤギ、イカ、ヅケまぐろ、中トロ、ヒラメ昆布締め、ウニ、海老、マコガレイ。

覚えているだけで9貫も食べている。シャリがしっかり固めで嬉しい。ガッツリとしたシャリが好きな私はこの手のシャリにぶつかるといくらでも食べられそうな気分になる。

どれひとつ取っても不満なものが無かったのだから凄いと思う。やっぱり「ちゃんとした店」だ。“東京の正統な高級寿司”という単純明快な表現が的確だろう。

肝心のお値段はさすがに安くはない。かといって、場所と内容を考えるとビックリするような値段でもない。

やっぱり寿司は東京に限る。またしてもそんな真理を痛感する。

0 件のコメント: