2009年7月1日水曜日

俳優K 無所属の時間

中年生活を過ごしていると、頑張ってる旧友とか、活躍している同級生とかの話を聞くと素直に嬉しくなる。

小学校から高校まで同じ学校に通った男に俳優のK君がいる。性格俳優というジャンルになるのだろうか、演技力や存在感で定評のある売れっ子だ。

小、中、高12年間の同窓時代、K君と同じクラスになったことはなかったように思う。小学校の聖歌隊で一緒だった記憶があるが、親しく付き合った記憶はない。

私の場合、聖歌隊は態度不良で途中でクビになったし、日本一の難関大学に合格するようなK君とは必然的にあまり接点がなかった。

先日、K君の人物像を特集したテレビ番組を見た。子育てや仕事のエピソードとか小学校時代の思い出話も披露され、結構面白く見させてもらった。

ドラマや映画と違い、素の状態で話している姿を見れば、自然と“人となり”が見て取れる。競争の厳しい世界で今の地位を築くまでには相当の苦労や葛藤があったことは容易に想像がつく。

画面に映るK君からは、20年以上あの世界で生き抜いてきたプロとしての迫力とそれを支えたであろう豊かな人間性が感じられた。誉めすぎか・・・。

何より感心したのは大学の話や親の話が一切番組で話題にならなかったこと。

K君はもともと両親ともに有名人。とはいえ、彼だけは本名で活動しているし、もはや、二世タレントという範疇で彼を語る人はいない。

世代によっては、高名な両親よりK君のほうが遙かに知名度は上かも知れない。実際、二世とか世襲というイメージで取り上げられたのはデビュー直後ぐらいだったように思う。

大学の件も、確かに「俳優K」にとっては別段前面に押し出す話ではないのだろう。潔い話だ。高学歴をウリにクイズ番組ではしゃぐタレントとは一線を画しているみたいだ。

普通だったら、スーパー学歴を自慢するだろうし、七光りだって最大限アピールすると思う。そういう武器に頼らないで「K個人」で勝負している点は率直に凄いと思う。

K君を見ていて一冊の本を思い出した。「無所属の時間で生きる」という城山三郎さんの随筆だ。

戦後最大の経済人といわれた石坂泰三元経団連会長が、忙しいスケジュールの合間でも空白の1日を設定するよう工夫していたことに由来する話だ。

何にも属していない環境に自分を置くことで、自らを甦らせ成長させる。城山さんが主張したいのはそういうこと。

日本のすべてのビジネスマン、特に中高年男性にとって非常に含蓄のあるテーマだと思う。

会社の看板や、出身大学なんかにしがみついて生きている人は結構多い。仕方のないことかも知れないが、ハタから見ていて格好良いものではない。定年退職後に一気に濡れ落ち葉になってしまう人達の典型的パターンだ。

「一個人」という雑誌がある。ああいうタイトルの雑誌が存在すること自体、多くの人が「一個人」になれないでいる証であり、その克服が男社会の課題なんだと思う。

私自身、意識して無所属の時間に身を置こうとのたうち回っているが、なかなか難しい。思ったようにいかずにイライラする原因にもなっている。

なんか話がそれてしまった。

独立自営の最たるジャンルで着々とポジションを切り拓いてきたK君。まさに無所属で頑張ってきたのだろう。彼の活躍は同級生にとって大きな励みになっている気がする。

3 件のコメント:

Tommy さんのコメント...

こちらには恐る恐るお初のコメントをさせていただきます。「もうすぐフリーター」のTommyでございます。

元同級生の活躍、というのも去ることながら、以前に富豪記者さんがおっしゃっていた「この歳になって」出会ったという点も大きいのではないでしょうか。
「一人」もそうですが、要は「コイツは覚悟してるな」というのが、響く人には響くんだと思います。

私もK君とは特別仲が良かったわけじゃなし、10年くらい前まではもうちょっと彼を斜に見ていたような気もします…
歳を重ねるのも、悪くないですね。

富豪記者 さんのコメント...

「この歳になって」って確かに大きいです。

ようやく見えてきたこと、気づかされることがいっぱいありますね。

手遅れなこともありますが。。。

若い時に想像していた“中年”と、実際の中年生活は随分違うようですが、今更あの世界の狭い若者時代には戻りたくないものです。

それにしても、「この歳になって」フリーターになるなんてシビれます。

Kobe さんのコメント...

Kさんは本職の俳優業は当然のことながら、ボクシングフリークとしても有名ですよね。

WOWOWでのビッグマッチではよくゲスト出演されていて、元ボクサー出身の解説者とは全く違った視点でコメントが、ボクシングファンからかなりの共感を得ているようです。

佐瀬稔、山際淳司亡き後、『感情的ボクシング論』をKさんが引き継いでくれないかなあと、ボクシングファンの1人として密かにKさんに期待しています。