2009年7月10日金曜日

銀座 クラブ 黒服

銀座でいま一番不可思議なのが、タクシーの乗場規制だろう。夜10時を過ぎると指定乗場以外ではタクシーを拾えない。

バブルの名残りにしてはあまりにトンチンカン。人出も少ない、タクシー利用者も激減。それでもタクシー渋滞華やかし頃と同じルールがまかり通っている。

日付が変わりそうな時間になっても、指定乗場に長蛇の列が出来るようなことはない。それなのに好き勝手な場所でタクシーを拾えない。実にマヌケな光景だ。

逆に10時前などは、空車がよりどりみどり。3ナンバー車など室内が広い車種を選ぼうなどというワガママもごくごく簡単。ほんの1~2分キョロキョロすれば好みの車種が見つかる。

タクシーの状況と景気動向は切っても切れない関係だが、やはり不景気はかなり深刻。
ネオン街へのダメージも相当なもの。

夜のクラブ活動をしていても威勢の良い話は聞かれない。繁盛店はそれなりに賑わっているが、以前より客の入りが読みにくくなっているようだ。

客の流れが変わってきたとはいえ、繁盛店は繁盛店としての地位が変わらないところが凄いと思う。

「今日なんかガラガラですよ」というセリフをよく聞く。とはいえ、同じ「ガラガラ」でも本当に客がいないパターンとギュウギュウ詰めじゃない程度に空いているパターンとでは全然違う。

勝ち組クラブでは、当然後者のパターン。素人目には充分賑わっているように見えても、所々に空きがあるという感じ。それでも繁盛店からすればガラガラという認識だ。

6丁目の「M」しかり、8丁目の「G」しかり。充分混雑しているように見えて、よくよく聞いてみると、早い時間が全然ダメとか遅い時間の客の退きが早いとか結構シビアなようだ。

ところで、勝ち組とか繁盛店として定評のあるクラブは他の店と何が違うのだろうか。
そんなに真面目に通うわけでもない私だ。核心は分かるはずもないが、いつも気になっているテーマだ。

綺麗な女性の存在だろうか、価格だろうか、店の大きさや装飾だろうか。どれも欠かせない要素だ。でも銀座あたりでいっぱしの店をやっていれば、そのぐらいの要素はそこそこちゃんとしている。

では何がポイントになるのだろうか。大きな要素が黒服の存在だろう。彼らのレベルが店のレベルを左右しているのは間違いない。

夜の蝶が主役のクラブだ。バーテンでもなければ接客をするわけでもない黒服は、いわばディレクターとかプロデューサーだ。

彼らの出来次第で主役が活躍できるかどうか決まると言ってもいいだろう。割と重要なポジションだ。私もデレデレと鼻の下を伸ばすだけではなく、たまに黒服達の動きを眺める。結構面白い。

同じ男衆でも大きく分けて2種類に分類される。女性陣から信頼されている黒服と小馬鹿にされている黒服だ。

その違いは彼らの動きを見ていれば一目瞭然。信頼されている黒服は視線の広さと動き回る範囲がダメ男君とは格段に違う。

決定的な違いは記憶力だろう。記憶力というか、集中して注意力を保っているかどうかだ。

客の顔や名前を頭にインプットすることは彼らにとって重要なことだが、この部分で差が付く。

この部分がキチンと出来ている黒服は「仕事」をしている。客の顔も覚えずに漫然と過ごしている黒服は「作業」をしているだけ。どんな分野のビジネスでもこの違いは大きい。

思えば6丁目の「M」に通うようになったのも黒服氏の大層な記憶力。そんなに足繁く通っていた客でもないのだが、ある時期まったく行かなくなって4~5年ほどブランクが開いた。その後、ひょんなことから訪ねた際に感心させられた。

予約もせず、ふらっと店に入っていった私をベテランの黒服氏はしっかり覚えてくれていた。「お久しぶりです」のひと言も大げさでなく、ごくあっさりとさりげない。以前同様に席に案内された。

ブランクはあっという間に感じなくなり、ごく自然に何年も前と同じような気分で楽しく酔っぱらった。プロの仕事を見せつけられた。

8丁目「G」も有名な人気店。最近初めて覗いたのだが、やはり黒服氏の注意力がプロの仕事を感じさせる。

とある日の夕方、店のそばの道で黒服氏に挨拶された。まだ何度も通っているわけでもない客に店の外で気付いて愛想を振りまく。なかなか出来ないことだ思う。

「後で顔出します!」。単純な私はそう言っちゃうし、実際に行ってしまう。そんなものだと思う。

以前、8丁目に新しくクラブを出店したてのの男性経営者と夕暮れの道ですれ違った。ほんの半月ほど前に彼の店で結構な時間無駄話を交わしたのだが、目があった彼はこちらに気付かない。素通り。さすがにビミョーな印象が残った。それ以来その店には顔を出していない。そんなものだと思う。

銀座の街もキャバクラの客引きが増殖して新宿みたいな感じが漂うこともある。夜の蝶ならぬ夜のカラスと揶揄される男どもが増えているわけだが、プロの黒服と呼べる面々は数えるほどだろう。

どうせならプロの仕切っている店でグダグダと呑んでいたい。

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