2013年7月3日水曜日

常連さん

飲食店に入って、常連さん達が我が物顔でギャアスカ飲み食いしているのを見るとゲンナリする。

あの独特な空気感はたまらない。くるりと背中を向けて帰りたくなる。実際にそうしたことも数知れない。

とかいいながら、自分だって常連顔して通う店はいくつかある。なるべくギャアスカオヤジにならないように自戒しているが、酔ってしまえば分かったものではない。

どこかの店の常連になるということは、緊張せず、気兼ねなくノンビリ過ごせるから客にとっては有り難い。

その店がどんな一品を得意とするのか、時期によって何を用意してあるのか、おまけにメニューにないものまでアレンジしてもらうことも可能だ。

店のほうも一見さんより、ちょこちょこ来る客のほうが御しやすい。御しやすいというか、その客の好みが分かれば、より良いものを提供できるわけだから、ウマいものを提供する気持ちがあれば一石二鳥の関係である。

いまの時代、初めた来た客がランチメニューを一回食べたぐらいで、インターネットにマズいの高いのと批判を書き込んじゃうから飲食店も大変だ。

そうはいっても、常連ヅラされて、ビール一本で粘られちゃうのも困りものだから難しいものである。

ある時、個人経営の寿司屋の店主から開業時の苦労話を聞いた。店主が目指したのは、街場の出前中心の寿司屋ではなく、やや高級志向で本格的な店。寿司好きが集まる店にしたいと思っていたが、開店早々、近所のヒマなおっさん達が寄り合い所のように集まってきたそうだ。

イカの刺身とビンビールだけで長っ尻。地域の先輩であることをカサにきてエラそうに過ごす迷惑ぶりだったらしい。

この手のおっさん達の多くが、近隣の他の店から鼻つまみモノ扱いされていた面々だったとか。ヨソの店に出入りできなくなったから新店を狙って集まってきたらしい。

開店間もないし、お客さんは喉から手が出るほど欲しかった店主だが、さすがに我慢できず、「随分と闘っちゃいました」とか。

その後、奮闘努力の果てに「イカ刺し長っ尻オヤジ達」の駆逐に成功して、開店3年目ぐらいから店を軌道に乗せられたそうだ。

この話を聞いたのはもう10年以上前だ。それ以来、顔見知りになった店では、なるべくたくさん注文するようになった私だ。

でも、最近、食べられる量が減ってきたから、近いうちに「イカ刺し長っ尻オヤジ」に変貌を遂げるかもしれない。

ダラダラと書いてしまったが、今日これを書き始めたのは、常連ヅラしていたお陰で、嬉しく美味しいものが食えたからだ。

このブログでもよく書いている高田馬場・鮨源での話。

ちょこちょこ出かける函館ではマイカ(スルメイカ)のハラワタを生で食って喜んでいる私だが、東京では生のマイカはさほど珍重されない。

ヘタすれば塩辛作りのためだけに使われちゃったりする。でも、あのゴロ(ハラワタ)のナマは珍味好きにとって至宝である。

そんな話ばかりしてたら、ある時、「生きたマイカ、入れときましたよ」と天使のようなささやき。


まだ小ぶりのワタだったが、あの味である。クリーミーでセクシーなイカゴロである。ウヒョウヒョ言いながら食べさせてもらった。


6月の中旬にはシンコも食べた。ちょこちょこ顔を出していると、貴重な一品が登場した直後に味わえる。これから夏本番に向かって、新イカとかイクラのナマとか、そのあたりの「サマースペシャル」も出てくる。アンテナを張って、真っ先に食べさせてもらおうと思う。



そしてスペシャルな毛ガニちゃんである。オレンジ色の物体がクセモノである。実はこれ、毛ガニの内子だ。本当は食べる機会が無い部分である。

メスの毛ガニは資源保護の観点で全面禁漁である。捕っちゃっても海に帰すのが決まり。だから毛ガニ好きな私も内子や外子は食べたことはない。

で、この写真のメス毛ガニだ。正体は密漁モノみたいなものだ。店の名誉のために言うと、店がわざわざ密漁船を仕掛けたわけではない。当たり前か。

以前からロシア船が捕っちゃったメスの毛ガニが国内に流通することがあるらしく、その一部が回り回って入ってきたらしい。

以前からカニの内子だ外子だと知ったかぶって騒いでいた私のために内子がワンサカ入っていそうな個体を用意してくれた。

ミソもたっぷりで、内子とミソと身を混ぜ合わせて食べれば冷酒の肴として極上だ。

クイクイ飲んでしまった。

こればかりは、一見の店では体験できない。10年以上、雨の日も風の日も雪の日も揺れた日も通っていたせいで、得がたいものが食べられるわけだ。実に有り難い。

ここ数年、飲み屋さん、食べ物屋さんに関して、新規開拓の努力を怠っている自分の加齢?ぶりを反省していた。

新しい世界に挑んでいくような新店開拓も大人の遊びとして欠かせない。ある意味、大人の修行みたいなものだ。

でも、通い慣れた店に更に通うことで、時系列かつ体系的に?新しい経験が出来るのも確かだ。

ぶっちゃけた話、家で夕飯を摂ることが滅多にない暮らしだ。せっかくそんな境遇にあるのだから、馴染みの店での長っ尻と、大人の修行としての新店開拓をうまい具合にミックスして浮世を渡っていくことにしよう。

0 件のコメント: