2013年9月27日金曜日

串銀座 卵の誘惑


「串銀座」という焼き鳥屋さんがある。文字通りに銀座にある。凄いネーミングだ。
銀座にあるソバ屋さんが「蕎麦銀座」、北京ダック専門店が「ダック銀座」と名付けるだろうか。なかなか思い切った命名ぶりだ。

結構な高級路線で、上質な鶏肉がアレコレ用意してある。レバ刺しもあるから私にとっては有り難い店。

日本酒の品揃えが凄いことで定評がある店だが、私の場合、レバ刺しだの焼鳥に合うのは焼酎だと思うので、訪ねる時は芋ロックをグビグビ飲んでいる。

「上質な鳥料理と豊富な日本酒」。この店を訪ねる客の目当ては間違いなくそれだが、私の目当ては別にある。


「温泉卵」である。「日本一のこだわり温泉卵」なる仰々しい名前でメニューに華々しく載っている。

実にエロティックな味わいだ。温泉宿で出てくる生に近い状態の温泉卵も好きだが、この店の場合、もう少し火が通っている。

黄身が流れ出て行ってしまう切なさとも無縁だし、適度に固形な感じが酒のアテにもってこいだ。白身の固まり具合とダシ汁との絡み合いもバッチリ。官能的で興奮する。

なんでも普通の卵に比べてコレステロールは20分の1で、ビタミンEは50倍だという触れ込みだ。随分大きく出たものだ。

本当だろうか。いや、そんなはずはあるまい。事実だったら予算に糸目をかけずに個人的に仕入れて毎日ワンサカ食べてみたい。

卵は1日2個までなら健康に問題ないと聞いたことがある。それが本当なら、この卵は1日40個食べてもOKという話になる。

1日3回、この卵を5~6個使った生卵かけご飯をドンブリ飯で食べても、通常の卵を1日1個食べただけのコレステロール摂取量だという理屈だ。事実ならソク実行したい。

さすがにそんなはずはないと思っていた方が安全だろう。

私自身、この店に行くとありきたりのツマミや前菜など注文しないで、温泉卵だけ何個も頼んで酒を飲みたい衝動にかられる。

でも、勇気がないから実現していない。せいぜい、シメに「温玉乗せそぼろ飯」を注文するぐらいで我慢している。


コレステロールだ尿酸値だといった、成人ならではの指標を気にし始めると「卵問題」は人生にとって悩ましい問題になる。

摂り過ぎは禁物!と言われると、なんかモヤモヤする。「半沢直樹」の最終回を見たときと同様のモヤモヤだ。

ラーメンの麺にだって、パンにだって、アイスクリームにだって、ハンバーグにだって、その他、気付かないものにも卵はやたらと投入されている。

それらをすべてカウントしたら毎日それなりに卵を食べていることになる。実に悩ましい。

とはいえ、近年では、「卵の摂り過ぎ」がさほど身体に害はないという研究結果が定着しているのも一面の事実である。

1日、1個や2個程度なら、コレステロール値に影響はなく、逆に脳の活性化、ボケ防止、抗酸化作用、風邪予防などの利益の方が大きいという説だ。

地獄に仏みたいな話?だ。

そうは言っても「卵いっぱい食ってもヘッチャラだぜ説」は、健康体の人に対する指針だと思った方がいいらしい。

日頃からコレステロール値が高い人なんんかは、そんなヤンチャなことを鵜呑みにしない方が無難みたいだ。

まあ、このへんの解釈?は私自身の判断なので、「大量卵無害説」を信奉する人は信じる道を突き進んでいただきたい。そして、1年ぐらい経ったらその結果をコソッと教えて欲しい。

卵ファンにとって厄介なのは、イクラとかタラコ、カラスミなどの「数え切れないほどの卵の粒々集合体」についてである。

「イクラの一粒一粒が鶏卵一粒と同じようなコレステロール値である」というオッソロシイ話を聞かされることがある。

それってことは、タラコをパクッと食った日にゃあ、生卵数百個を一気に食らったような話になっちまう。

トレーニング中に生卵を大量にジョッキで飲み干したロッキーも真っ青なトンデモナイ話である。

さすがにそんなことはないらしい。そりゃそうだ。朝飯にタラコ、昼飯に子持ちのカレイの煮付けなんか食って、夜に子持ち昆布をツマミに一杯やって、腹の膨らんだ鮎の塩焼きを食べたりしたら、即死してしまう。

まあ、用心に越したことはないが、過剰に意識するのも馬鹿馬鹿しい。結局は、日頃食べている他のものとのバランスと適度に身体を動かす健康な日常さえ維持していれば良いという結論にしよう。


今の時期、気の利いたお寿司屋さんに顔を出すと、この季節ならではの「生イクラ」が私に挨拶しに来てくれる。

礼節を重んじる私としては、生イクラさん達一人一人にまんべんなく愛を注ぐ。一粒も残すことなくニコニコと食べさせてもらう。週に何度もそんなことをしている。

秋真っ盛りである。

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