2014年1月31日金曜日

日本酒の道


寒い夜、飲み屋の暖簾を見かけると、条件反射で燗酒が恋しくなる。

「熱いの1本つけといて」。こんなセリフがスッと口から出るようになったのはいつの頃からだろう。オッサンの完成形である。

年を取ることの良さは世間一般で認識される「オッサン的行動」がさりげなく身に付くことである。

お燗をすすって、ゲフッとか唸っていられるのはオッサンの醍醐味である。女子供にゃあ無理な芸当だ。真似したところで絵にならない。

中年男に生まれてつくづく良かったと思う。生まれ変わっても中年男に生まれたい。

気のせいか、日本酒自体がオッサンのアイコンみたいになっていないだろうか。会社の飲み会などで黙々と日本酒を飲んでいる若者はいない。ワインやサワー、ナンチャラハイに比べて劣勢である。

そんなこと言って、私自身もハイボールや芋焼酎やシャンパンを飲む機会も多いから、日本酒ばかり飲んでいるわけではない。

でも、冬場はお燗酒のせいで、日本酒を愛でる機会がグンと増える。お燗酒で始めて、暖まってきたら冷酒に切り替えるパターンも多い。




日本酒に合うツマミをあれこれと並べて飲んでいると、燗酒から冷酒という二日酔いモードに突入してしまうわけだ。

画像は上から、あん肝、ウニとボタンエビ、そして極上のミソたっぷりの毛ガニである。

こんな面々はワインや焼酎ではなく、日本酒に合わせたい。とくにボタンエビや甘エビのねっとり感はスッキリした飲み口の冷酒に抜群に合う。

初めて日本酒をウマいと感じたのは、高校生の頃だった。毎年正月には自宅に剣菱樽酒がドカンと用意されていた。見た目が何とも素敵だったので、ズズズっと飲んでみたら芳醇な味わいに圧倒された。

樽の香りがほんのり漂い、飲み口も当時の自分の味覚とマッチしたのだろう。友人を呼んで樽酒パーティーをやって楽しく飲んでゲロを吐いていた。

大人になるにつれ、若者風ドリンクのほうがオシャレだと感じて、インチキみたいなカクテルをグビグビ飲んでゲロを吐いていた。

その後、社会人になって間もない頃、国の研究機関である醸造試験所に出入りするようになって日本酒について少し学んだ。そこの所長さんに酒にまつわる連載エッセイを頼んだ関係でちょこちょこ訪ねて行ったわけだ。

まだ、パソコンも今のように普及していない頃だ。所長さんの原稿の文字が判別不能な達筆?だったので、担当編集者として必死に解読しているうちに知識が備わった感じだった。

ついでに様々な日本酒をやたらと飲まされた。醸造試験所の所長や技官ともなると酒が強いオッサンばかりだ。調子に乗って付き合うとヘロヘロになる。帰宅するといつもゲロを吐いていた。あの頃はあの頃で大変だった。

ゲロまみれになって色々なことを学んだのだろう。

なんだっけ?ゲロ話ではなく日本酒の話だった。

そんなこんなで、一時期は少しばかりウンチクに左右されて飲み屋でもこだわったふりをしていた。

やれ酒米は何だ、磨き割合はどうだ、日本酒度はいくつだ、とか、いっぱしの「通」みたいな顔をしていた。今とはまるで別人である。今は楽しく酔えれば何でも良い。すっかり自由?である。

少しばかり顔なじみの店では、お酒の銘柄も産地も何も聞かずに「口開け間もないヤツをくれ」で終わりである。

どんなに希少銘柄でもいつ開栓したかで味わいは変わる。開けて間もない酒なら間違いない。それで充分である。

どんな有名銘柄、希少銘柄だろうと、だいぶ前に開栓したような一升瓶の底の方に残った出がらし?を出されたらウマいはずもない。

ましてや燗酒だったら銘柄など関係ない。熱くするかぬるくするかだけである。

自宅でも、日本酒に合うつまみが揃ったら燗酒、冷酒どちらも楽しむ。「口開け間もない酒」こそ最高だと確信している私のお気に入りが八海山の180㎖瓶である。


180㎖といえば1合カッキリである。一般的な四合瓶だと自宅で一人で開けるには躊躇することもあるが、このサイズだったらアッという間に飲みきれるから便利だ。

吟醸酒なので冷酒用である。小さいし、冷蔵庫にたくさん詰め込んでも邪魔にならない。

スッキリしてウマいからクイクイ飲めてしまう。結局、調子に乗って4本ぐらい開けちゃうこともある。

だったら4合瓶を買っておけ!と叱られそうだが、やはり、4合瓶より気軽に開けられる点が嬉しい。オススメです。

夜の街で日本酒を頼むときは、ついつい魚や珍味系をつまみにすることが多い。肉方面だと焼酎が定番である。

でも、先週このブログで書いた「吉田類先生」の教え?もあり、先日、通りすがりに入ってみた下町のモツ焼き屋では、とことん日本酒だけで過ごした。


特別寒い夜だったし、店も薄ら寒かったので燗酒で通してみた。食べていたのはモツ煮の他は徹頭徹尾、モツ焼きだけである。

「肉系は焼酎」という私の思い込みをあざ笑うかのように、カシラ、レバ、ハツ、シロといった連中がカラシ味噌をベトっと身にまといながら私を攻める。

お燗酒で流し込む。ウマい。うっとりである。ホッピーとかサワー、焼酎こそモツの相棒と思っていたが、安い燗酒こそ相性抜群かもしれない。

ぐいぐい飲んで、わしわし食べた。

オッサンの究極の完成形は、たとえどんなツマミが来ようとも日本酒をグビグビ楽しむ姿なのかもしれない。


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