2014年5月26日月曜日
串モノの謎
モノの値段。実に悩ましい問題だ。安ければ正義という考え方もある反面、安すぎたら敬遠したくなる心理も働く。
今のニッポンはハンバーガーが100円で食べられる。牛丼も250円程度で食べられる。
そうなると、不思議なもので800円とか1000円の値付けのハンバーガーや1800円ぐらいの牛肉弁当に妙に惹かれる。
「高いからきっとウマいんじゃないか」。そんな心理である。すべてではないが高い方が確かにウマいことは多い。
ビールもどきが百花繚乱なのに、王道のビールである「プレミアムモルツ」は10年以上、対前年比で売れ行きを伸ばしているらしい。
安さだけを追求した発泡酒あたりに辟易とした人々が、多少高くてもマトモなモノを求めているのだろう。
もちろん、窮々な財政状態で暮らす人にとっては安さこそ正義である。それはそれで当然だろう。安価な均一料金居酒屋などは、運営企業の経営努力の賜であり、ほんの20年前には有り得なかった業態だと思う。
私自身、ウン十年前の若い頃には、安い店をせっせと探したが、現在のように「破格なのに小綺麗な店」なんて世の中に存在しなかった。
あの頃、アノ手の店があれば毎日通っていたと思う。
そして現在の私は、いっぱしの中高年だからイッチョマエに高い店にも出入りする。一人暮らしになったこともあって、エンゲル係数は、ギリシャのインフレ率みたいに急上昇している。
高いからウマい、ウマから高いのかは分からないが、相場より高い店をめぐれば、いろいろなことを感じてしまう。
滋味溢れる極めて真っ当な日本料理は、どうしたって安い値付けでは成り立たない。至極上等な寿司なんかも同じだ。
肉、魚、野菜。いずれも価格差に開きがあればあるほど同じモノとは思えないほど味わいが違うことがある。
良いモノをなるべく安く提供してもらいたいのは当然だが、どうしたって限界はある。真っ当なモノが極端に安い場合、どこかに無理が生じる。
昨今、「俺のフレンチ」とか「俺の~」を冠にしたレストランが凄い勢いで増えている。大人気らしい。
でも、聞くところによると立ち食いの席も多いのだとか。
客の回転率を考えて営業時間も独特らしい。何より客単価を落とすことに工夫が凝らされているらしい。安くて当然だ。
いっぱしの中高年紳士ぶっている私としては、立ったまま食事をするなど言語道断である。若造時代でもそんなことはしない。
軽く一杯立ち飲みで、とか、急いでる時に駅で立ち食いソバ、いうノリなら分かる。そうではなくキチンとした食事を立ったままでという発想はない。
立ったまま食べるのなら、ファミレスで座って食事したほうがマトモだし、そっちの方が健全だと思う。
なんだかまとまりもなくウジウジ書き進んでしまった。
軌道修正。
串モノの値段の話だった。焼鳥とかモツ焼きとか、あの手の串モノの値段ほどよく分からないものはない。
この世界に関しては「安いからマズいだろう」、「高いからウマいだろう」が意外と当てはまらない。
さすがに1本60円とかのアンビリーバボー!な値付けの焼鳥だと、ウマイマズイを論評する以前である。
でも、1本150円ぐらい出せばジューシーかつウマ味たっぷりの焼鳥にありつける。繁華街では難しいが、私鉄沿線の街場の人気焼鳥店などにそんな素晴らしい店は多い。こういう店は雑誌にも出てこないし、ネット上に評判が溢れているわけでもない。
銀座、六本木あたりでワインなんかも豊富に揃えちゃう小綺麗な店になると、途端に焼鳥が1本500円とかの値付けになる。
もちろんウマいのは確かだが、目ンタマひんむくぐらい美味しくないと許せない気がする。フツーに美味しい程度だと腑に落ちない。
まあ、テナント料、人件費、内装など造作のコストを思えば、私鉄沿線のシュールな焼鳥屋より高くて当然である。
でも、その価格差が5倍以上ともなると、ビックリするほどウマくないと正直イヤである。
今まで随分とそうした路線の焼鳥屋を覗いてきた。それなりに美味しい店ばかりだったが、目ンタマひんむくほど感激した店はほとんど無い。
中途半端な?街で、1本200円ぐらいの中途半端な?値付けで40代ぐらいの大将が黙々と串を焼いてるような店にこそ、ウナりたくなるような店があると思う。都内某所にいくつか心当たりはある。
さて先日初めて行ってみた高い焼鳥屋の話。有楽町に近い側の銀座にある「Toriya」という店。
希少部位だと1本700円オーバーである。ナンジャラホイである。平均しても500円クラスだ。この街ならではの価格設定だろう。
雰囲気は妙にムーディーだ。間接照明が暗すぎるほどで、シワが気になる女性や薄毛が気になる男性には居心地が良い店だろう。
肝心の焼鳥は、界隈の高級焼鳥屋に比べて負けてないレベル。かなり美味しいほうだと思う。タレの味がくどかったが、塩焼きの串はかなりウマかった。
一品料理もそこそこあるが、ワインに合わせるような雰囲気のものが中心。「焼鳥には焼酎か日本酒だ」と決めている人にはオススメできない。
ワインがあまり好きではない私としては、当然のような顔して焼酎をグビグビ飲んでいたのだが、出てくる料理がどうも焼酎に合わない。しかたなくグラスのワインをせっせか飲むハメになった。
ワインリストも豊富だし、グラスワインも結構選べる仕組みだから、そっち好きな人には居心地の良い店なんだと思う。
で、結論としては、1本500円以上の焼鳥もTPOに応じて肯定するしかない。
ちょっとムーディーで落ち着いた店に行きたい。でも食べるモノはカジュアルな焼鳥でいい、などという場面はオトナの男には案外多い。
そういう時には、私鉄沿線の街場の焼鳥屋との価格差が、オトナの男のワガママを実現するためのコストとして跳ね返ってくるわけである。
痛し痒しだが、モノの値段には、そのモノだけの価値ではなく、付加価値という厄介なモノが付いてくる。
その付加価値の部分にこそ「面白み」や「趣」があるわけだから、一見、ヘンテコに感じる値段も納得して受け入れねばなるまい。
ああ、めんどくさい・・・。
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