2014年5月21日水曜日

散歩


気持ちの良い季節だから散歩に励んでいる。足腰を鍛えないと、いろいろと厄介なので、「楽しみ半分、努力半分」といった感覚でテッテケ歩いている。

家の近所を歩き回ることが多いが、さすがに見慣れた景色ばかりで飽きる。そんなときは、クルマを飛ばして馴染みのない場所まで行って、その周辺を歩く。

不思議とシャレオツ?な街には足が向かない。散歩するには下町が一番である。「吉田類」(http://fugoh-kisya.blogspot.jp/2014/01/blog-post_24.html)が出没しそうな街だと妙にしっくりくる。

先日、谷中周辺をぶらぶら歩いてみた。「谷根千」などと言われて独特な人気を誇る街の一つだ。根津、千駄木は最近も歩いているので、この日は谷中を選んだ。


谷中は「ひぐらしの里」と名乗っている。私が死ぬほど好きな音色はセミのヒグラシの合唱である。そのヒグラシのことだろうか。だとしたら大変なことだ。引っ越し先の候補にしなければならない。

でも、命名の理由はどうやら近隣の駅名が「日暮里」だからのようだ。ちょっとビミョーである。

さて、シュールな路地をぶらぶら歩くと時間が経つのも忘れる。実にドンくさい感じで素敵である。

昭和が色濃く残っている。東京っぽい匂いに満ちあふれている。古めかしい家並みを眺めながらボケっと佇むとしっぽりとした気分になる。

東京っぽい街といえば、六本木や銀座、青山あたりを連想するが、それとは別次元の地に足の着いた東京の景色である。

浅草がスカイツリー特需で妙に騒々しい観光地になっているので、「谷根千」周辺がジワジワ人気を集めるのも納得である。



下町を歩くと、都や区が設置しているその場所の由緒書き看板を頻繁に見かける。江戸時代にどっかの誰かさんがそこでどうこうしたとかが書かれている。

不思議とアノ手の看板の文章には悪文が多い。誰が書いているのだろう。すっと頭に入るような軽快な文章で作成すべきなのに大半がダメダメである。謎である。

地味な寺の入口にぽつんと置かれたそんな由緒書きを見ると必ず熟読したくなる。数百年前のエラい人の墓があるとか何とか書いてある。

聞いたことのない偉人も多いが、知る人ぞ知るエラい人なんだろう。

もちろん、山岡鉄舟クラスの有名人の墓だとか赤穂浪士ゆかりの寺だとか、思わず見入ってしまう場所もポツポツあるから面白い。東京散歩、江戸散歩の醍醐味である。

こうした下町情緒をウリにする街では、表通りに出ると、ちょっとわざとらしいインチキ名産品?を売る店が結構ある。週末は行列が出来ている。さも由緒正しそうなお菓子とか揚げ物を並べている。

きっと開業5年程度なんだろうなあ、とヒネクレ根性で冷やかしながら時々試食してムダにカロリー摂取。まあ、この種の店が街に活気をもたらすのだから頑張って欲しい。

そういえば、「東京バナナ」とかいう東京名物があるらしいが、あんなもの東京人はちっとも知らない。いつの間にか昔からの定番商品みたいになっている。平成に入ってからの商品だろうか。

アノ手の商品は、それこそ“名乗ったもん勝ち”といったところなんだろう。

別な日、上野広小路に出かけて、周辺をブラブラしてみた。これまたディープな街である。


谷根千あたりが、ある意味、江戸情緒を強く意識してそれを武器にした演出で成り立っているのに対し、上野界隈の雰囲気は、好き勝手なガチャガチャぶりが特徴だ。

オシャレに決めようとか、江戸路線を意識しようとか、そういう思惑とか狙いとかとは無縁の異次元空間である。

銀座で飲んで六本木に流れるとか、渋谷で遊んで青山に流れるとか、都会の繁華街にありがちな「微妙な連携関係、横の繋がり」とは異質だ。あくまで「完結型」なのが上野界隈だと思う。

ある意味、独立国のような雰囲気。さほど広くないエリアに大衆飲食店、高級飲食店、風俗街、ショッピングエリア、ホテル街がそれなりの秩序を保ちながら凝縮されている。

水商売のプロから聞いたことがあるのだが、上野の客や上野のお水関係者は、上野という世界だけで完結している人が多いとか。浅草と多少の絡みはあるものの、あくまで上野という宇宙?の中ですべてが成立しているらしい。

独特な「濃さ」が上野の面白さだろう。そんな目で街を眺めながらアテもなく散歩するのは何だか楽しい。

さてさて、散歩と一口に言っても、一人での散歩なのか、誰かと一緒の散歩なのかで様子は変わる。

ヘンテコな街をテキトーに歩く散歩だから、ヘンテコな眺めが目に入った時には、一緒になって笑いあえる人が横にいるのも悪くない。

その一方、どうでもいい?偉人の記念碑や歌碑なんかをマジマジ眺めて悦に入る時は、それに興味の無い人が横にいるとチョット面倒である。

暑いの寒いの日射しがキツイの足が痛いのなんの言われ始めると迷惑だが、こっちがバテた時に叱咤激励されるのは有り難い。

ちょっと疲れた時に、情緒のある甘味処でクリーム白玉ぜんざいを食べたいわ~と甘えられるのは嬉しいが、胸焼けしそうなメンチカツを列に並んででも食べたいと鼻息荒く要求してくる人には殺意を覚える。

なかなか難しいところだ。

まあ、一人でも二人でも、TPOに応じて散歩を楽しめるような達人を目指そうと思う。

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