なんだか魔術の呪文みたいなタイトルだが、少し遅めの夏休みでクロアチアを旅してきた。気ままな一人旅である。
ヨーロッパまで出かけると、つい観光に精を出して疲れることが多いので、今回はリゾートに陣取ってノンビリしてきた。
行きは羽田発ウィーン経由でドブロブニクに入って4日ほど過ごした。その後はドブロブニクからポーランドのワルシャワに飛んで2日間ふらふらして、ミュンヘン経由で羽田に戻るスケジュールだった。
もちろん、すべての行程が貯まりまくったマイルのおかげで無料航空券利用である。とくに買物するあてもなかったから案外お金のかからない旅になった。
ドブロブニクは、クロアチアを代表する観光都市。「紅の豚」「魔女の宅急便」などの舞台になった場所だとか。大昔の城壁に囲まれた独特の雰囲気に溢れた海辺の街である。
事前に調べたら夏のオンシーズンは鬼のように混んでいるという話だったので、ドブロブニクから20キロほど離れたツァブタット「CAVTAT」という小さな港町を滞在先に選んだ。
ドブロブニクのメインエリアである旧市街からはタクシーボートが頻繁に行き来している。ノロい船で40分ほどの距離だ。
案の定、ドブロブニク旧市街は異様な人混みだったから、ちょっと離れたエリアを選んで正解だった。
ツァブタットの港町もレストランはたくさんあって、見るべき観光名所はないもののボケッと過ごすには快適だった。つい最近はボンジョビも来たぐらいだから、極端にマイナーというわけではないらしい。
泊まったのは「ホテルクロアチア」という大型リゾートホテル。部屋のベランダからアドリア海が一望できて気持ちよかった。ツァブタットの中心街までは歩いて5分ぐらいの距離にある。
部屋も綺麗だったし、朝食ビュッフェもそれなりの品数だったし、中国の団体もいなかったし、プールも気持ちよかった。ルームサービスで頼んだパスタは昭和の給食で出てきたソフト麺みたいにフニャフニャだったが、スタッフの人当たりはいいし、清掃係のオバチャンはわざわざチップの御礼を言ってくるし、全般的に快適な宿だった。
よく歩き、よく食べ、よく本を読んだ4日間だった。池波正太郎の時代小説に集中して、ふと我に返ったら目の前にアドリア海が広がっているというヘンテコな時間を楽しんだ。
大げさに言えば、退屈を楽しんだ時間だった。一人旅ならではの醍醐味だろう。好きなときに寝て、好きなときに食べて、時には自転車を借りてあてもなくプラプラした。ホテルから離れて地元の海水浴場でグダグダ本を読んだりした時間も、アウェー感に浸れて悪くなかった。
小さな子どもと父親がプールでじゃれている姿を見れば、我が身の昔を思って感慨にふけり、イカスミリゾットを食べれば、30年前これを初めて食べた時に一緒だった素敵な女性を懐かしく思い出す。
どうもこの歳になると「振り返り」の場面が増えてくる。それもまた楽しみではある。
夕陽を眺めれば、これまで訪ねた数々の南国リゾートを思い出し、ピスタチオアイスを頬張れば、いつだったかの新婚旅行を懐かしく感じた。
自分探しをするような小僧ではないが、一人で異国の地で非日常感に浸ると、何となく自分と向き合えて悪くない。旅の効用だと思う。まあ、何だかんだ言って、要するにパスタばかり食べて葉巻をふかしてばかりいる時間を過ごせたから良いリフレッシュになった。
クロアチアはアドリア海を挟んでイタリアの対岸に位置する。トリュフやオリーブ、ワインなども名産で、海側だからシーフード系の料理もイタリア料理と同じような雰囲気だった。マズいものにはほぼ当たらなかったのがラッキーである。
マグロのスパゲティーを頼んだときに謎にキュウリがいっぱい入っていたのが呆れるほどマズかったぐらいで、あとは満足できた。美味しかった食べ物を並べてみる。
マグロのスパゲティーを頼んだときに謎にキュウリがいっぱい入っていたのが呆れるほどマズかったぐらいで、あとは満足できた。美味しかった食べ物を並べてみる。
上から順にマグロのタルタルのアボガドソースあえ、マグロステーキ、白身魚のリゾット、タコサラダ、アンコウのカルパッチョ、ムール貝のワイン蒸し、トリュフのパスタである。
米や麺が出てくればそれだけで満足する私にとって、イタリアンに近いこちらの食べ物は文句なし。
食後は通りすがりのカフェでカプチーノアイスにダブルのエスプレッソに砂糖をぶりぶり入れて、プカプカと葉巻をくゆらす。誰にも気兼ねせず好き勝手に過ごせたから、まさに天国にいるみたいな気分だった。
そういえばスイカがウマかったのも印象的だった。ホテルの朝食ビュッフェで食べただけだが、毎朝ガシガシとかじりついた。
市場で見かけたスイカの姿はやけにヘンテコで大味そうな風情だったが、身の赤色も濃厚で味も充分に甘く、自宅で毎朝スイカジュースを飲んでいる私にとって予想外の嬉しい味覚だった。
5年前、イタリアのジェノバを旅した際、街中に泊まってしまい、近郊のリゾートに滞在しなかったことを大いに後悔したことがある。
それ以来、いつかはヨーロッパのリゾートで、ただただノンビリしてみたいという願望があった。今回、それが実現できたので嬉しい時間だった。
次回はワルシャワについてあれこれと書きます。
次回はワルシャワについてあれこれと書きます。
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