2022年6月10日金曜日

鰻の値段 銀座・神田川



 稚魚の不漁をきっかけにしたウナギの価格高騰が話題になってから随分経つ。いまやウナギは高級外食の代表格になってしまった。

 

安さをウリにする店もあるがたいていは脂びちゃびちゃでドロッとしたタレの味だけで誤魔化している怪しい鰻重を出してくる。

 

昔ながらのちゃんとした専門店に限れば安くてウマい店は絶滅状態だろう。私が知っている某店では鰻重を価格別に5段階ほど揃えているのだが、15年ほど前には確か5500円ぐらいだった最上位の鰻重が今では9900円である。笑うしかない値段である。

 

1万円クラスは別格としてもはや特上になると5千円ぐらいは普通になってしまった。若者だったら手が届かない値段だ。この調子だとウナギを愛する若者も絶滅しちゃう気がする。

 

私がウナギをやたらと食べるようになったのは30代の頃だからもう20年以上前だ。あの当時、今の価格だったら頻繁には食べられなかっただろう。今は食も細くなったから特上ではなく真ん中ランクぐらいの鰻重で満足できる。コスパの点では加齢も悪くない。

 

さて、今日のウナギ話は私が時々訪ねる銀座の外れの鰻屋さんのことだ。汐留寄りというか築地市場駅の近くに構える「神田川」という店。なぜか至近距離にはこれまた鰻の名店「竹葉亭」の本店がある。

 

ビルの地下にある神田川は竹葉亭に比べると新しいイメージだが、創業は明治初期だとか。店内は適度にモダンで半個室風の小さな小上がりが複数あって使い勝手が良い。

 

この掘りごたつの小上がり席が私のお気に入りだ。しっぽりと過ごせる。ウナギ以外に酒のツマミが無いようなお高くとまった?ウナギ専門店が好きではない私にとって、それなりに一品料理が用意されているのも嬉しい。

 

私にとってウナギは夜の食べ物である。必然的に酒とセットだ。適度にツマミが用意されていないのは不親切だと思う。こちらは刺身や季節の一品料理もあるから欲張りな私も満足出来る。

 




肝心のウナギ系ツマミにしても、このお店は肝焼きだけでなくレバー焼きなど趣向を凝らした一品もある。定番のうざく、う巻きも文句の無い味だ。

 

白焼きの美味しさにもムホムホできる。これまで10回以上はこのブログでも語ってきたが、わさび醤油で食べる白焼きは冷酒のツマミとしてナンバー1である。私の頭の中のコンテストでは例年1位の座をキープしている。

 



白焼きを食べてから蒲焼き、すなわち鰻重に移行する流れが私の“鰻道”における作法であり鉄則だ。この両輪を味わうことで双方の美味しさが引き立つと確信している。

 

最後に鰻重が登場する頃にはひとしきりウマい肴でホロ酔い気分だ。そんなフヌけた気分を鰻重の香りと眺めが一気にリセットしてくれる。「これだよ、これ!」と常につぶやく。

 

冒頭で書いたウナギの価格高騰問題に関してもこのお店は良心的な方だと思う。鰻重は2種類。3千円を切っている価格の並と3500円程度の上である。中央区界隈、それも銀座の近くの高級感のある空間で上鰻重を3500円で提供してくれるのは有難い。

 


 

上鰻重の画像である。これが出てくる前にツマミや白焼きを食べるわけだからむしろ適正サイズと言ってもいい。味のほうも文句なし。真っ当な専門店ならではのタレに頼りすぎていない点も嬉しい。別容器でタレも出てくるからタレ愛好家でも安心だ。

 

2種類の鰻重の他にこの店の名物が「大丼」。ウナギの量としてはこれが一番多いらしい。価格も上鰻重よりも上だ。個人的にはウナギはお重で食べたい私はこちらは未体験。5年前だったら量の多い方を選んだはずだからやはり加齢も悪くはない。

 



いずれにせよ、白焼きも鰻重もあのフジャっととろける東京のウナギの神髄を感じることが出来る。総入れ歯だろうと歯が全部無くなったってきっと美味しく味わえる。

 

最近は関西風の蒸さないウナギを出す店も増えてきた。この2030年の間に随分と東京の食べ物は西にほうから駆逐されている。うどん、おでん、天ぷらあたりも東京風の黒色やモッサリ系がどんどん無くなっている。

 

ウナギに関しては断固として東京風を支持したい。蒸しこそ鰻重の命だと迷うことなく断言できる。まあ、あくまで個人的な好みだからあまりエラそうなことは言えない。

 

いや、どうしたって蒸してこそ鰻重である。やはり断固そう主張したい。

 

 

 

 

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