2023年6月5日月曜日

行列とトンカツの話

 

飲食店に行列する気持ちってどんな感じだろう。一組、二組程度ならともかく、お腹が空いているのに1020人の列に並ぶ心理がよく分からない。

 

飢餓感が煽られることでお目当てのモノがより美味しく感じるM的な志向だとしたら凄い。私にはマネできない。

 

行列に並ぶことは当然ながら立たされたままである。それだけで私には無理だ。意味なく立たされるのは高校生の頃までに充分経験した。

 

百歩譲ってそこじゃなきゃありつけないモノなら理解できる。でも、少し前のタピオカだったり昔の原宿のクレープだったり、イマドキのラーメンにしても5分も歩けば他の店で似たようなモノが食べられる。にもかかわらず大行列を受け入れるのが不思議だ。

 

そういえば30年前に一世を風靡した西麻布のアイスクリーム「ホブソンズ」は今もどっこい営業しているそうだ。当時のあの大行列はサクラを使った演出だったことが話題になったからとっくに閉店していると思い込んでいた。逆に今なら行ってみたい。

 

サクラの行列などという話を若い頃に知ってしまったから私は今も行列に妙な抵抗感があるのだろう。いや、単に体力、もしくは忍耐力がなさ過ぎるのが原因だと思う。

 



 ラーメン以外で最近よく目につくのが「閉じないカツ丼」を目当てにした行列だ。焼きカツ丼とも呼ばれ大層なブームになっている。画像は人気店「丸七」のホームページから拝借した。人気が定着するかどうかは分からないが、ブームはブーム、あくまで一過性だからいずれ落ち着くはずだ。

 

先日、いつも行列が絶えないそんなトンカツ屋さんに入ってみた。16時半頃だったのでまだ行列は出来ていなかった。日々大行列になる店のトンカツなら私だって食べたい。一時期は都内各地の名店にわざわざ通ったトンカツ好きの血が騒いだわけだ。

 

店の名前は日本橋の「一(はじめ)」。つい最近近くに2号店も出した人気店だ。皆さん、閉じないカツ丼を嬉しそうにかっこんでいる。幸せそうで良い眺めだ。私は閉じないカツ丼に興味がないので普通にトンカツ定食を食べることにする。

 


 

結構な値段のトンカツがラインナップされている。「高値のトンカツ」に妙に惹かれるのが昔から私の悪いクセだ。この日もメニューの中で一番エバっていた4千円近い値付けの一品を注文する。

 

宮崎のブランド豚・あじ豚の特上厚切りリブロースである。350グラムという表示にたじろいだが見て見ぬふりをする。本当は最上ヒレ肉、いわゆるシャトーブリアンの部位を使ったトンカツが食べたかったのだが、ナゼかメニューでは焼きカツ丼専用になっていたので断念。

 

肉厚だからか結構待たされた後に待望のリブローストンカツがやってきた。思ったほどデカくないので一安心。衣具合も良さそうだ。香りにウットリしながら食べ始めた。

 



感想としてはごく普通の厚切りトンカツだった。トンカツ特有の旨味をさほど感じない。普段の大行列を横目に見ていたせいで期待が大きくなり過ぎたのか。もう少し軽めに揚がっていたら印象も違ったのだがちょっと拍子抜け。

 

やはり周りの人がこぞって食べていた焼きカツ丼を頼むのが正解だったのかもしれない。悔しいから近いうちにシャトーブリアンの焼きカツ丼にトライしようと固く決意した。「閉じないカツ丼なんて気味悪いな」と気取っていた私の矜恃?はいとも簡単に崩れそうである。

 

カツ丼といえば蕎麦つゆ味がムンムン香る卵で閉じちゃったあのスタイルこそ基本だと思う。乱雑に散らかったタマネギのアクセント、卵の火加減が場所によって違うシッチャカメッチャカな組み合わせによって成立している。

 

だいたい衣のサクサク感を求める人はカツ丼を選ばない。具材達がカオスのように渾然一体となって汁だらけになったご飯をかっこむ所にこそ正義?がある。

 

と、そんな保守的な物言いで新参者である焼きカツ丼を認めていない頑固ジジイみたいな私だが、食べたことがないからそんなことを言えるわけで一度食べたらトリコになる可能性もある。

 

その時は平気で手のひら返しをしようと思う。

 

 

 

 

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