世代的に「アリス」を聞いて育ったと言っても過言ではない。「冬の稲妻」「涙の誓い」「ジョニーの子守唄」「チャンピオン」「今はもうだれも」あたりは同世代男子にとって誰もが身近に感じる楽曲だ。
谷村新司さんが亡くなったことは結構ショックだった。74歳ともなれば不思議なことではないのだろうが、同世代の歌手の面々はバリバリ元気に歌っている。“エース”である谷村新司がこの世から消えちゃったことがピンと来ない。
「いい日旅立ち」「昴」といった国民的楽曲の生みの親でもある。ファンだったかどうかに関係なく一定の年代以上の人たちからは絶対的支持を集めた傑物だった。ロックバンドを従えたら格好良くシャウトする一方、オーケストラをバックにしっとり聴かせても一級品。
ロック調、クラシック調だけでなく、かつてエロッぽい演出で話題になった女優とのデュエット「忘れていいの」などはムード歌謡そのものだったし、まさにノンジャンルの人だったと思う。
アリスをよく聴くようになったのはご多分に漏れず「冬の稲妻」の頃からだ。問答無用にカッチョよかった。「かぐや姫」的なちょっと陰気な感じでもなく「オフコース」「チューリップ」とも違うワイルドな曲の雰囲気に魅せられた。
フォークからニューミュージックに流行が移っていく中で、内省的過ぎず、ナヨナヨし過ぎず、硬派になり過ぎず、丁度いい頃合いのノリで若い世代のハートを掴んだ。
私も中学生時代にはアリスの楽曲をあれこれ聞きこんだ。印象的だったのが「帰らざる日々」だ。歌詞が実にドラマチックで歌い出しはやたらと重い。ところが途中からリズム感は大幅に変わり、どこかシャンソンを思い起こさせるような展開になっていく。
https://youtu.be/TtF2trMjYbc?si=Gjyb1ydHIodAP7Xg
それまで聴いてきた邦楽とはまったく違う雰囲気に引き込まれた。「冬の稲妻」みたいな勢いのある曲ばかり目立っていたが、この曲のような変化球?も見事だった。
私が好きな曲の一つが「22歳」である。どことなく「帰らざる日々」を思い起こさせるメロディー進行で歌詞の世界観もなかなか素敵だ。ちなみにふた昔ぐらい前までの22才って今の22才よりだいぶ老けていたのだと感じる。
https://youtu.be/FYLX_Y1ynXQ?si=cIblHam8pyJQlWMW
音楽活動の凄さとは別に我々世代が谷村新司に抱くイメージは「下ネタ」である。ウン十年前、ラジオの深夜放送ではビニ本のうんちくなどの下ネタを連発していた。単純に面白かった。
中学生ぐらいだった私は下ネタに興味津々だったが、まだまだ青春期の入口だったから、大人のくせに明るく爽やかに下ネタを連発する谷村新司の潔い感じを心から尊敬した。
下ネタはコッソリ、ヒソヒソと語るものだと思いこんでいた思春期の私にとってはある意味衝撃的だった。その後オトナになって年柄年中、あらゆる場所でワイ談を連発するようになった私だが、原点は谷村新司が「明るく爽やかにスケベを語る」という道を開いてくれたことに尽きる。
もちろん、当時から鶴光さんみたいな芸人や山城新伍あたりのオッサンが下ネタに励むことはあったが、カッチョ良かった「アリス」の大半の楽曲を作っている谷村新司が躊躇なく下ネタを炸裂させていたことはインパクトがあった。ワイ談、下ネタ業界としても彼の功績は讃えるべきだと思う。
このブログも15年以上続けているが、亡くなった著名人を追悼するような話は少ししか書いていない。自分の“教科書”だった側面がある人だと何か書きたくなるのだが、なかなかそんな人はいないものだ。
過去に書いたのは高倉健と田村正和ぐらいでその他はちょっと思い出せない。ハマショーにハマってそっちの“信者”だった私は谷村新司のファンだったわけではないが、それをさておいても彼がいなくなってしまったことは妙に切なく哀しい。
高倉健
https://fugoh-kisya.blogspot.com/2014/11/blog-post_26.html
田村正和
https://fugoh-kisya.blogspot.com/2021/05/blog-post_26.html
我がオヤジバンドは過去10回ほど人様の前でライブを開催しているが、「今はもうだれも」をオープニングでやったこともあるし「冬の稲妻」もしっかりカバーした。「チャンピオン」に至っては3回ほど演目にした。私が50の手習いでギターを買った時もアリスの楽曲を当然のように練習曲にした。なんだかんだ言ってとくに意識することもないほど「身近な存在」だったわけだ。
合掌
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