2023年11月24日金曜日

親の心


親の心、子知らず…。最近そんな言葉がしょっちゅう頭をよぎる。私の母親は80代も半ばを過ぎ何とか元気に暮らしているが、さすがに衰えは着実に進行している。

 

その一方、娘はどんどん大人になっており、昔とは違った心配ごとも増えてきた。親になってみて22年が過ぎたが、今になって自分の母親が子供時代の私をどんなふうに心配していたのか何となく理解できるようになってきた。

 

先日、娘が一週間ほどの海外旅行に出かけた。友達と二人での旅だ。当然、私はノータッチである。せいぜい安宿は避けろといった当り前の忠告をしたぐらいである。

 

一週間の旅行中、やはり親としては娘が心配になる。今の時代はLINEという便利な文明の利器があるからマメに連絡は取るようにしたが、親バカパパである私は四六時中ヤキモキした気持ちだった。

 

と同時に若い頃、海外旅行ばかりしていた自分のことを思い出し、母親がこんな感じで私のことを心配していたのかと気づいて複雑な気持ちになった。

 

私の場合、主に水中写真撮影のために秘境みたいな場所にも出かけた。おまけにたいてい一人旅だった。今、私の娘が水中写真マニアになってそんな場所に出かけると言い出したら私は卒倒してしまうだろう。

 

マラリアの予防薬を飲んでパプアニューギニアに行ったり、ミクロネシアの奥にサメを撮影しに行ったり、戦時中の沈没船を撮影したり、そんな旅を年に複数回は続けていた。

 

秘境っぽい場所に行くと聞いただけで、怪しい部族に襲われるんじゃないか不安になるのが私の母親世代の感覚だ。東南アジアの奥地と聞いただけで謎の生物に襲われるんじゃないかと不安になったりもしたようだ。

 

カリブ海を回ってくると聞けば、もう海賊はいないのかと心配し、エジプトの紅海で潜ってくると聞けばテロリストに攻撃されやしないかと気が気ではなかったらしい。

 

当時はメールもLINEも無い時代である。出発してしまえば連絡は簡単にはとれない。国際電話はあったがやたらと高価だったから身近ではなかった。つまり帰ってくるまで黙って心配するしかなかったわけだ。

 

息子は聞いたこともない僻地まで出かけて毎日毎日海の中に潜っている。連絡もない。そんな状態で無事の帰国を祈っていたわけだからそりゃあそりゃあ心配だったと思う。この歳になってようやく理解できるようになった。さすがに申しわけなかったと感じる。

 


 

この画像は小学生の頃の娘とグアムに行った時に撮影した。まだまだ無邪気だったこの時から10年ちょっとしか経っていない。私にとって10年なんて昨日みたいな感覚だから今になっても旅先での様子が心配になってしまう。

 

今回、旅行中の娘とのLINEのやり取りを見直してみたら毎日2回ぐらいは連絡を取り合っていた。かなり過保護かつ過剰な心配ぶりである。

 

その内容が滑稽とも言えるレベルだ。寒くしていないか、薄着はダメだ、酒を飲みすぎるな、裏通りには行くな等々、当り前のことを羅列していた。

 

私が言われる側だったら実にウザい。若い頃は私も親の注意がウザくて仕方なかったが、今になってそっち側陣営の気持ちがよーく分かる。まあ、今になってようやく分かるようでは鈍感すぎるのかもしれない。

 

娘と2人での同居暮らしを始めてから1年半が経った。さっさと一人暮らしに戻りたがると思っていたのだが、まったくそんな気配がない。

 

大学を卒業したら自立したがるだろうと予想していたのだが、結局は大学院に行くことになり、おまけに今の住まいから乗り換え無しで20分程度の距離の大学院に合格したので、当り前のように今の住まいに定住するみたいだ。

 

年頃の娘である。毛嫌いされていないだけで幸せに感じないといけないのかもしれないが、過保護な自分の言動を思うたびに娘との同居はかえって娘をスポイルしている気がしてそれはそれで心配になる。

 

まあ、自立する日がくれば、いやでも誰もが何でもこなすようになるのだろうが、何かと心配は尽きない。キリがないのだが…。

 

ついでに言えば年老いてきた母親を心配する機会も昔より増えてきた。昨年暮れに転倒したことをきっかけにXデーを想定するところまでいったのだが、その後なんとか復調し、今ではすっかり調子に乗って動いている。

 

次にまた大転倒でもしたらいよいよ危ないのだが、喉元過ぎたらナンチャラで平気で脚立に乗って高い所の操作をすることもあるらしい。自覚の足りない行動に腹が立つことも増えた。

 

まあ、私が若い頃に心配をかけたことに比べれば仕方ないレベルなのかもしれない。「因果は巡る」。まさしくそういうことなんだと思う。

 

 

 

 

 

 

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