2024年2月9日金曜日

時間稼ぎ


あれだけ日本中を騒がせたわりにはちっとも話題にならなくなったのがジャニーズ問題だ。ヨソの国は知らないが日本人の熱しやすく冷めやすい特徴を表していると思う。

 

あれ以来、記者会見が開かれるという話は聞こえてこないし、もろもろのカギを握る存在とされた元副社長についても結局一度も公の場に出ることはなく、その点を追及する芸能メディアも皆無という状況。

 

大晦日の紅白こそジャニーズ外しが行われたものの、その後は元通り元ジャニーズの人気者たちがテレビで大活躍している。良し悪しをウンヌンする前に「時間」の持つ力を改めて思い知らされる。

 

「時が薬」という言葉もある。もう立ち直れないと思えるほどの哀しみに遭遇しても時間の経過とともに悲しみは癒えていく。時間がもたらす効能だろう。

 

失意のどん底にある哀しみさえ解消する力があるわけだから、世間を賑わす話題など時の経過によってアッという間に忘れ去られる。だからそれを逆手に取った戦略も珍しくない。ジャニーズ騒動もその一つだろう。

 

一定のケジメに見える行動を取った後はダンマリを決め込む。放っておいても世間の関心は薄れていく。その間に世の中には新たな話題が次々に出てくる。気づけば大騒動だっていつのまにか沈静化する。

 

時間を無駄にする、浪費するという意味なのに「時間稼ぎ」という言い方をする。それだけトクをする展開になることを意味する。浪費しているはずなのに稼げちゃうという理屈だ。

 

ジャニーズ騒動に限らず、あれほど騒ぎになった森友問題にしても国家は一種の時間稼ぎを戦略にした。自殺した元財務局職員の遺族が起こした裁判に対して「認諾」という実にケッタイな方法でダンマリを決め込んだ。

 

すなわち「法廷で争いません、いっさい何も語りません」という話。これでは裁判の場で新たな事実や証言が出るはずもなくそれを望んでいた遺族にとっては一種のゼロ回答である。そんな禁じ手みたいな策を堂々とやってのけたわけだからタチの悪い話だと思う。

 

政治資金パーティーをめぐる自民党の裏金問題もいつのまにか論点がすり替えられてもはや迷走状態だ。派閥政治がどうしたこうしたという議論に移ってしまい、純粋に政治資金規正法違反という罪状は二の次になってしまった。

 

話をそらすのも一種の時間稼ぎみたいなものだ。老獪なやり口といえる。派閥解消というインパクトのほうに政治メディアは飛びつく。肝心な政治資金のインチキ処理は小さな話かのように扱いが変化していく。派閥解消なんて過去にも宣言したくせに程なくホゴにされたテキトーな話でしかない。

 

パーティー券収入のキックバックを原資とした、いわばアングラマネーを好き勝手に使っていた議員があれほど大勢いるのに誰も罰せられないのは異常だ。

 

電帳法やインボイスなど国民に対する税制上の締め付けは年々厳しくなっているのに、政治家は政治資金名目で無税マネーが保証されている。実にヒドい話だろう。これから始まる確定申告で国民のボイコット運動が起きないのが不思議なぐらいだ。

 

今回の裏金問題も結局は自民党の派閥の会計責任者が罪に問われただけでホトボリを冷まそうという姿勢が見え見えだ。あとは時間稼ぎとでも考えているのだろう。あまりに国民をバカにした話である。こうなったらかつての金丸事件のような国税の活躍に期待したいところだ。

 

30年前、時の権力者だった金丸自民党副総裁が東京佐川急便から5億円の闇献金を受けていたことが発覚。スッタモンダはしたものの結局は簡易裁判所による罰金20万円という略式命令で集結してしまい国民の怒りは爆発、霞が関の検察庁の看板にはペンキがぶちまけられる事態になった。

 

その後、しっかり動いていた国税によって闇献金以外にも様々な悪事が見つかり最終的に30億円を超える所得隠しが摘発されることになった。

 

政治資金規正法という罪状では追い込みきれなかった悪事が脱税という切り口で暴かれたわけだ。今回も規模はともかく議員センセイ達の所業は脱税という観点で罰せられる必要がある。

 

この問題以外にも議員一人あたり毎月100万円が支給されるいわゆる文通費に関しても直近の法律改正で名称だけが変更され、使途非公開、領収書不要という問題点は改善されていない。

 

他にも企業・団体献金の廃止の見返りとして制度化された政党交付金にしても、前提条件だった企業・団体献金は事実上継続しているため二重取りになっているのが実態。制度創設から30年で1兆円近い血税が政党に交付されている。まさに国民は騙し討ちにされた格好だ。

 

いずれも時折、識者や野党が思い出したかのように批判の声を上げるが、四の五の議論しているフリが続き、結局そんな時間稼ぎのせいで国民の関心が薄れていくという悪循環が続いている。

 

時間稼ぎすることでそのテーマに飽きてしまう大衆心理を突いたやり口だ。肝心なのは「飽きない執着心」。それに尽きる。当たり前のような結論だが、その当たり前が難しいからワルはのさばり続ける。

 

今日は堅い話に終止してしまった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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